1話 変な主人
俺は少女に買われ奴隷市場から解放された。
この少女はいったいどんな思惑で俺を買ったかはわからないが、これからの主人は少女なので言われるがままついて行くと古い宿屋の前に着いた。
宿屋に泊まっているということはやはり冒険者だったようだ。パーティメンバーはいないようで本当に俺がパーティメンバー第一号らしい。
「今はこの街の一番安いこの宿に泊まってるの。」
「そうなんですか。ところで本当にお1人で旅を?」
「だから言ってるじゃない。あなたが第一号だってね。さ、部屋からお金をとったらルドルフの買い物するんだから何が必要か考えておいてね。あ、ルドルフも同じ部屋に荷物置いてきてね。」
「はい。ご主人様。」
「....ちょっとストップ!これからご主人様は禁句にするわ。私はあなたのスキルを見込んで奴隷じゃなくてメンバーとして受け入れたんだから!
私の名前はイトウ サキよ。詳しく自己紹介は後でするから今からはサキって呼んでね。呼ばなかったら魔法で痛い目に合わせるわよ?」
ふふふ、と笑って宿屋に入っていくサキ。
サキなんて名前聞いたことないな。きっとどこか遠くの国から来たんだろう。それにやはり魔法使いだったようだ。あんなデカイ魔石がついた杖の魔法ってどんな威力なんだろうか。
しかしそんなことよりも
「ご主人様は禁句かよ。面白い人だな。ははっ。」
思わず笑いが出た。あんな人いるんだな。
奴隷じゃなくてパーティメンバーとして俺を受け入れる、とんでもないことをサラッと言いやがった。
嬉しさとどこからか出てくる不安で複雑な気持ちだ。
でもあの目は嘘を言っているような目じゃなかったな。
それと、もしかして俺の女子力スキルってとんでもないスキルなのか?
そんな淡い期待を抱きつつサキの後を追い宿に入る。
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「さぁ、まず服から買いましょう?そんなボロじゃあ隣を歩く私が恥ずかしいしね。何か希望はある?」
「えっ?希望、ですか?」
「だ!か!ら!私とあなたはパーティなの!関係は対等!今からの買い物の代金だっていつか返して貰うんだからね!」
「そ、そうですか。なるべく動きやすいのでお願いします。」
「了解。衣服よりも大事なのが装備ね。ルドルフは何がいいかしら?」
装備か。正直なところ闘えないから持っていても意味はない気がするが護身用として持っておこう。
「扱い安いナイフがいいですね。あとあまり戦闘には期待しないでください。俺のステータス見ましたよね?」
「ええ、わかってるわ。護身用ってことよ、戦闘に関しては私がいれば大丈夫よ。....ここだけの話、西側で噂になってる小さな大魔道士って私のことなのよ?」
胸を張り自慢げに話すサキ、しかしオレはさっきまで檻の中にいたものだから外の世界のことなんて全く知らない。
でもこんなに自信たっぷりなのだから安心していいのかも知れない。
「すいません....さっきまで檻の中にいたもので全く知りません....」
「それもそうね。まぁ、いずれわかるわ!さ、早く行きましょうか!」
露骨に残念そうにする自称大魔道士。
歩き出したサキの後をついて街を見てまわる、このボレスポには2年間もいたがこうやって街中を歩くのは初めてだ。
コスタの街と同様にレンガ造りの家が所狭しと並んでいて、大通りは出店や商店で賑わっている。
大通りの先、街の中央部に目をやると一際大きな建物、というか城。
ボレスポの王族が住んでいる城。ボレスポ城だ。有名な巡礼処らしくコスタにいても名前は聞いたことがあった。
久しぶりに感じる人の活気と喧騒は今はとても心地よく感じる。
サキは決断力と行動力が強いらしい。値切り過ぎておじさんが困っていたしね。買い物も足早に済ませた。
「こんなもんね。あと、女子力と言ったらアレよね。」
「はぁ。」
もうどこに行くか決めている様でついてきてと、言わんばかりにズカズカと前に進んで行った。
いくつかのお店で彼女が買ったものは
針と糸
包丁、鍋、などの調理器具
簡易救急箱
「これもルドルフのね。あなたのスキルはこうゆうことなのよ。って言ってもわからないよね。まあこれもいずれわかるわ。」
「なるほど。ありがとうございます。」
「気にしないでいいわ。もう1人じゃない。仲間でしょ?」
「....そうですね。本当にありがとう。」
「さぁ、帰りましょう。まだ話すことがたくさんあるんだから!」
俺は本当にいい主人に買われたようだ。
彼女の笑顔と言葉が本当に俺を仲間として買ったことを改めて認識させてくれた。
まだ知らないことばかりだから宿に帰ったら遅めの自己紹介といこう。
転生者視点は色々書いてて飽きました。
ブクマ、評価のほうよろしくお願いしますm(*_ _)m