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隅の川(女子)工業高校! ものつくり残念女子話  作者: 日上東
第二章 二学期
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第41話 文化祭1日目その3

 そんな時、受付のおばさんから連絡が入った。どうやらケーブルテレビの取材が来たらしい。


「そうだった、アタシ、ケーブルテレビに取材申し込みしたんだ」


 巧は慌てて受付へと向かった。俺も後を追いかけると、受付に地元のケーブルテレビのクルーの人が、と言ってもたった3人だが、待っていた。どうやら今晩のニュースで放映してくれるらしい。


「そうです。2年前に廃校となった隅の川工業高校ですが、今年から復活したんです、しかも女子学生オンリーで。たった8人の学校ですが、日々技術の向上を目指し精進し、技術力では決して他の工業高校には負けないと自慢できます!」

「8人、しかも女子だけとは、珍しいね」

「はい、ココだけじゃないでしょうか」

「じゃあ、案内してもらえるかな?アナウンサーの彼女の質問に答える、という形で行くけど、いいかな?」」

「もちろん!」

「じゃあ、君も来て」

「えっ、私もですか?」

「そう、2人いたほうが、華やいだ雰囲気になっていいよ」


 巧だけでよかろうに、俺も同行し撮影に入る事になった。放映時間も限られているので、最も画になるだろう美留とセツ姉を取材対象にしてもらった。

 美留はフライス盤を見事に操り、1枚の薄板から、SUMIDA CTVという、そのケーブルテレビのロゴを掘り出す姿を画面に納め、セツ姉は、例の溶接姿からの長髪ファサァー、という画を撮ってもらった。リアル天使とお色気美女の作業着姿とのギャップも含め、アピール度は満点だろう。

 プロデューサーみたいな人もとても興味を持ってくれて、今度はまた別の番組でも取材させて欲しい、と満更お世辞でもなさそうな口ぶりだった。


「いやあ、しかし、みんな可愛い子たちばかりで、驚きだよ。それだけでも、一つ番組ができそうだよ。特にリーダーの君は、本当に可愛いね。いいよ、うん」

「いえ、リーダーは私じゃなくて・・・」

「そうだ!ウチの街案内系の番組で、「ウチの一押し!看板娘!」ってコーナーがあるから、是非出演して欲しいな!」

「だからあ、ソイツがリーダーじゃないの。アタシが・・・」

「さてと、帰って編集しなきゃ。今晩、楽しみにしてて。そうそう、忍ちゃんっていったよね、今度連絡するからね、じゃあ!」

「あ、ありがとうございました」


 TVクルーの人たちは、慌しく帰っていった。俺に名刺と、不機嫌になった巧を残して・・・。


 俺はそんな不機嫌な巧をなんとかなだめながら、円谷の所へも顔を出した。正直ここが一番心配だったのだが、案の定、1人の来場者もなく閑古鳥が鳴いていた。この怪しいアトラクションに乗ろうというツワモノはいなかったわけか・・・。


「お気遣いいただかなくても大丈夫ですよ。私はこのような事態には慣れていますので。それでも、レイコさんには乗っていただけました。ご一緒の男性にも乗っていただき、青白い顔をしながら、喜んでいただけました。それで十分です」


 いや、喜んでないだろう、それ!ていうか、なんで円谷はレイコさんの事知ってるんだ!?

「あれ?オマエ知らないんだっけ?直は元紅蓮拿威(くれない)のメンバーなんだぜ、といっても1ヶ月だけだったけど」

「えっーー!!嘘だろう!?」


 円谷は、生徒手帳に大事そうにしまわれた、一枚の写真を俺に見せてくれた。そこには、天パの頭をリーゼント風になでつけ、特攻服でウンコ座りという、まったく似合っていない姿で悦に入る円谷の姿があった。


「何これ?もしかして、お笑いのオーディションか何かか?」

「いえ、私はいたって本気です。当時、というより小学校の頃より私は、なぜか周りと馴染めない子供だったようで、気が付くと大抵1人でいるのが普通でした。それについては、学問をする環境としては申し分ありませんでしたので、むしろその状況を歓迎していたのです。ところが、周りはそうでは無かったらしく、私がテストで良い点をとったりすると、嫌がらせを受けるようになってました」

「おい、直、いいよ、昔の事なんてさ」

「いえ、下井さんに聞いてもらいたいのです。そんな私が、ある日、たまたまある公園に通りかかった時、特に私に辛くあたる同級生に見つかり、難癖をつけらたのです。その時、初めて作田さんにお会いしたのです。作田さんは、そんな私を助けてくれました。何せ、その時の作田さんは金髪に特攻服といういでたちで、私を友だちのように扱ってくれたものですから、それ以降、私を苛めようとする者は現れませんでした」

「そうそう!今度コイツにちょっかい出したら、テメーらの学校いって、暴れさせてもらうぞっ!って言っただけで、シュンだよ」


 ああ、確かに、それは怖いかもな・・・。


「それから、私は作田さんに弟子入りし、その日早速バイクの後席に乗せてもらい、町中走り回りました。私はバイクに、というか作田さんにすっかりハマッてしまったのです。なぜわざわざ大きな音が出るように?なぜ、運転し辛く?なぜ蛇行運転を?そもそも無免許なのでは?私のとって謎だらけだったのです。作田さんは、そんな私の質問にきちんと答えてくれました」

「まあ、結局、直はバイクの構造のほうに興味をもって勉強しだして、走りのほうは1ヶ月だけだったけど。今でも紅蓮拿威(くれない)は、バイクの改造する時、直にパーツの図面とか描いてもらってるんだ」

「あの1ヶ月は、私の人生の宝物です。それで、下井さん。下井さんたちは誤解されているようですが、作田さんは今申し上げた様に、誰にでも優しく大変心の美しい方だという、その事をわかってほしかったのです。ガサツでお金にうるさく杜撰で下品だとか、みなさんが思っているような人ではない、という事です」

「お、おい・・・。みんな、アタシの事、そんな風に思っているのか?」

「い、いや、お、思ってないって!で、でもありがとう、円谷。話してくれて、嬉しかった」


 焼きソバの屋台も、サンドイッチ類の販売も放っりぱなしだったので、慌てて中庭へと向かう俺に未理がカフェの窓から声を掛けてきた。


「しーくん、こっち手伝ってくれなぁい?忙しくてぇ、もう、疲れちゃったよぉ!」

「ダメよ、焼きソバのほうも、お客さん待ってるみたい。手が空いたら手伝いに行くから、もう少し頑張って頂戴!」

「えーーー」


 屋台の前では、何人かが、焼きソバ売らないの?といいながら、待っている。サンドイチも残り少なく完売も近い。

 今晩ケーブルテレビで放映するって事だけど、どれくらい影響あるんだろう?まあ、たいした事はないどろうとは思う。だって、俺、見た事ないし。しかし、万が一明日、今日より多くの人が来たら、未理はパンクしちゃうぞ。それは、ヤバイな。何とか考えないと。

 しかし、その不安は、俺が考える事なく解消する事となる。俺に手間のかからない、最良の方法で。

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