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壱
4組の教室はしんとしている。
無理もないだろう。全員が初対面に近い。
4月―入学式を終え、これからHRだ。
葦矢高校は私立。この教室にいる生徒は、どこかの公立と併願で受けて落ちたか、専願か、推薦か。
こんなことを考えながら時間を潰すしかない。
「ハーイみんな!入学式お疲れ様!」
ガラリ、と教室のドアが開くと同時に、明るい声が聞こえた。黒に近い茶髪が視界に入る。
「今日からみんなは葦矢高校の生徒です!わからないことがあったら遠慮なく聞いてね!」
俺たちの担任の教師…名前は雨宮照子、だったか。苗字と名前が正反対の先生だ。
「では改めて出席を取ります!赤城要くん…」
出席を取る時間は好きじゃない。俺は自分の名前が…
「次、桑原壬加くん!」
「…はい」
あまり…いや、凄く気に入らない。