とある少女から見た政治事情
今川遥の朝は早い。
セットした目覚まし時計よりも早く起きると、さっさと身支度を整え朝食の席に着く。
テレビを付けると朝のニュースが映し出された。
ニュースの内容は、今審議されている新法案についてだ。
テレビに流れる映像は、国会の様子に切り替わりそこでは議員たちがまるで応援合戦のように怒鳴りあいをしている。
いつからだろう、議論というものがこんな形になったのは。
議員は、その主張を大きな声で叫び他の声を消し去る能力を持つものが求められるようになった。
ニュース番組も都合の良いほうしか擁護してなくて、今のこれも新法案を潰そうと、否定派の意見しか映していない。
ごちそうさまをして、今日もいつも通り家を出た。
iPodでお気に入りの曲を聴きながら学校へ向かう。
通学の途中、駅近くになって、なんだかだんだん騒々しくなってきた。
その正体は、新法案のデモ隊だった。
デモ隊たちは、新法案はんたーい、とそれだけをただオウムのように繰り返しているだけだ。
うるさいことこの上ない。
イヤホンしているにもかかわらず、叫び声が耳に突き刺さる。
やかましいことこの上ない。
見ないふりしてさっさと改札へ向かおう。
そしたらデモ隊の一人が進行方向に立ちふさがってきた。
なんか署名運動をしているらしい。
だれが、反対とだけしか言わないそんなもんに、署名なんかするか。
邪魔だ、とデモの人を突き飛ばし改札へ入って行った。
学校に着くと、時事ネタ好きな友人たちと一緒に駄弁った。
皆の意見は、見事にニュースで言っていることと真逆だ。
そこがおかしくて、私は笑った。
反対するなら、叫ぶんじゃなくて、意見を求めて応援する党の人たちと協議したりして後方支援に回れよ.
皆の意見はおおむねこんな感じだ。
デモ行進の様子を撮った動画を見て、暇なやつらだな。と指差してまた笑う。
そんな雑談してたら、いつの間にか授業の時間
遠くのほうで、デモ隊の叫び声が響いていた。
学校が終わり帰り道
駅前のデモ隊は、まだやっていた。
他に、することないのか。その労力をもっと別なところに生かせよ。
よく見れば、どっか有名な音楽家の人が混じっていた。
なんで、お前がいるんだよ。お門違いだろ。引っ込んどけよ。
私の口からそんな声が出かかったが、やっぱりデモ隊の叫び声にかき消される。
迷惑極まりない。警察呼べたらとっとと呼びたい。近所迷惑だ。
家に帰り、テレビをつけて新法案について進展があったのか確かめる。
ニュースでは相変わらず、怒鳴りあいの様子だけが映し出されている。
新法案の説明もこれが通ると、起こりえるデメリットばかり強調するように説明するばかりで、なぜ必要なのかさっぱり説明されていない。
いつから政治とはこうなってしまったのだろうか。
平和ボケのせいなのかな。
外国が虎視眈々と利潤を奪おうと牙を研いでいるのに、政治家たちは何もしようとしない。しようとしても足を引っ張るばかり。
私の目にはそう見えた。
この話は、もちろん機密保護法案について取り巻いている環境のこと。
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