2.騒がしい子
凛火は優しい。私はそう思う。
「亜希?」
「ん?なあに?」
「ぼーっとしてたみたいだから」
「なんでもないよ。ほら、さっさと作っちゃおうか。みんな待ってるし」
そう言って荷物を持ってくれた凛火の背中を押して台所に立つ。きれいに掃除されている台所はやっぱり凛火が掃除しているのであろう。ま、森覇と燦智が掃除なんてやるわけもないしね。
この家はオープンキッチンだからリビングの様子がよく見える。氷河は夜頼のところにいて嬉しそうに話しているし、燦智は響輝に勉強を教えてもらっている。ふと不貞腐れたような顔をしている燦智と目が合った。
「今日のご飯って何ー?」
「オムレツ。ジャガイモと卵が安かったからね」
「やった!」
「喜ぶのはいいけど、燦智くんは先に勉強ねー」
「えー、ちょっとくらいいいじゃんかー」
「だーめ。そしたらまあたサボるでしょ」
「ぶー」
響輝に言われてまためんどくさそうに勉強に戻る。・・・一応受験生なんだし、危機感持ったほうがいいんじゃないかな。私も人のこと言えないけど。
「いい加減学習しろよ…」
「あの燦智だしね。ところで森覇は?」
「あいつは部活。試合が近いんだとさ」
「へー、大変なんだね。何か作り置きしとこうかな」
「そうしてやってらあいつ喜ぶぞ。亜希の料理大好きだからな」
「ふふ、ありがとう」
この空気が心地いい。昔から一緒にいたというのもあるかもしれないけど、凛火とは馬が合う。たまにカップルだとか勘違いされたりするけど、そんな感情は私たちの間では持ち合わせて居なかった。昔から一緒にいる、大切な幼馴染。それは燦智も森覇も同じで変わらない。ちょっとだけ凛火が特別かもしれないけれど、やっぱり私たちの間での関係は十数年間ずっと変わっていなかった。
「んー、じゃあ森覇には適当に作っとくとして。凛火、スープは任せた」
「任された」
料理を始めたらお互いが無言になる。でもこの沈黙は不快ではなく気持ちいいものだ。リビングで四人がそれぞれのことをしながら騒いでいるのを聞きながら黙々と手を動かす。黙って作っていたら案外早くできるもので、あっという間に完成した。
「おいしそー!」
匂いを嗅ぎつけて燦智が反応し、ほかの面々もこちらを見る。私は凛火の方を見てから、みんなに完成したよーと声をかけた。
「燦智くんの宿題も終わったし、ご飯にしy「ただいまぁぁあああああ!!!!!!!!!!!!」
「森覇うっさい!!!!響輝の声遮らないでよ!!!!!!!」
「そんなことより飯!亜希が作ってくれたんだろ!?」
「何で知って…てか部活は?」
「気合で早く終わらせた!俺だけ仲間外れとかひどい!混ぜろよ!」
「森覇は相変わらずうるさいな…」
「ねー」
なんだかカオスなことになってきた。とりあえず森覇は落ち着こうか。うん。