第2話 「過去」
野球・ソフトボールとは少し離れますが、夏菅瑞稀の過去のお話です。
キャプテン『10』〜過去〜
俺は、喜んでしまった。またボールを投げられる事に。
ただ、ただ!もう、なんて表現していいか分からない。
それほど嬉しかったのだ。
1度は別れの来た野球。だけど少し違う。けどまた出逢えたことに。
それから、俺は毎日のようにソフトボール部を見に行った。
PCでソフトボールについて調べてみたり。
帰りに本屋に行き、どんな競技なのか。
野球とどこが違うのか。そんな内容の本も買った。
そう、そうしている間に本入部の紙が配られた。
親のサインが必要らしいけど、親には話していない。
ソフトボールのこと。
きっと反対される。だって、小6で野球をやめろといわれた。
だから、野球部のない・野球と縁のない女子校に入れたのだ。
でも、野球ではない。
「母さん。明日から本入部だからサインちょうだい。」
母さんは夕飯を作っていた。
「あら?何部に入るの?」
息をこくりと飲み込んだ。
「ソ、ソフトボール部。」
何か睨まれた気がした。
「どんな競技なの?」
怖い・・・。でも、やっぱりあの快感からは離れられない。
ボールを投げる。アウトにする。協力して試合に勝つこと、その快感だけは!
「ボールを投げて、ボールを取る競技。」
母さんがまた睨み、何かを取り出す。
「この本・・・ね。ソフトボールって。野球と変わらないじゃない。許す訳ないでしょう!」
逃げ出したかった。この場から。
好きなものを好きと言いたい。
他の人にもわかってもらいたいのに・・・。
何でダメなんだよ。
勇気を振り絞った。
「サイン。ちょうだいよ。まだ続けていたい。野球じゃないけど。
大好きだから。野球が。ソフトボール。やってみたいんだ。」
手が飛んでくる。
パシン
空間に音が伝わる。
母さんが口を開いた。
「野球やるんなら、出て行きなさい。」
痛かった。頬が熱い。
「早く出て行きなさい!」
俺は、学校に必要なもの・着替え・グローブ・金を持って家を飛び出す。
不思議と涙も出ない。
しかも、俺の本当の親ではないんだ。
俺の本当の親はもう死んじゃった。
俺が2歳のときに戦争で攻められてね。
その時俺はアメリカのフレイム城にいたんだ。
女のくせに王子様なんだって。一応。
そんで、皆が寝てるときに進入してきた奴らに殺されてった。
俺が薄っすら目を明けると、少し光った。
それで見えたのは赤。真っ赤な血の海。
その後少し離れたところにあった軍の基地が爆発したよ。
光ったのは閃光だったんだ。
涙もでなかった。うん、怖すぎたんだ。
2歳だもんな。目の前が血で埋め尽くされてたからね。
怖かった。今でも夜は怖い。眠れない。
あれから熟睡した事なんて無いんじゃないかな?
うたた寝なら友達が手を握ってくれたから出来たけど。
今は無理さ。
寝るとまた誰かが殺されるんじゃないか。
また、俺一人になってしまうのではないかってね。
さて、これからどうしよう。
懲りずにまた読んで下さいね。
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