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悪口を言われたので友情を壊してやりました

作者: 徒然草
掲載日:2026/05/31

 性格の悪い婚約者に悪口を言われて令嬢が、令嬢なりに報復するお話です。


「あーあ、何でミリーナみたいな地味で大人しい女が俺の婚約者になっちまったんだよ。」


 サイラス・バルド子爵令息はうんざりとした顔で不満を吐き出した。


「おいおい、別にブスな訳じゃないし良いじゃねぇかよ。」


「そうだぜ。同じ家柄なんだし、良いじゃねぇかよ。」


 サイラスの友人であるエリク・ルーストン子爵令息、ガラダス・デイラ子爵令息はサイラスの愚痴に同意はしないが同情するかのように、面白可笑しそうにニヤけながら話を聞く。


「おいおい、俺みたいな格好良い男に、ミリーナなんかが相応しい訳ないだろう? あーあ、もっと俺に相応しい女は居るっていうのに、なんで親父はミリーナとの縁談を結んだんだか。」


 貴族学園の校舎の裏庭で、3人は普通の声の大きさで話している。周りには誰もいないと思って3人は油断しているのかもしれない。


「…。」


 だが、話に夢中になっている3人が気が付かない場所に、聞き耳を立てている存在が1人居た。


「…クソったれ。」


 握り拳に力を入れ、掠れるような小声を漏らしたのはサイラスの婚約者、悪口を言われている張本人であるミリーナ・アラサラス子爵令嬢だ。ミリーナの殺気の籠った眼差しはサイラスだけでなく、エリクとガラダスにも同じく向けられている。

 

 サイラスとミリーナが婚約者になったのは1週間前。サイラスがミリーナに不満を持っている事は顔合わせの瞬間からミリーナは気が付いていた。けれど、それはミリーナだって同じだった。父であるアラサラス子爵が、両家がどんな思惑で結んだかは知らないが、成績も性格も悪い事故物件のようなサイラスとの婚約なんて悪夢としか思えない…。


 だが貴族として生まれた以上、自分の意思だけでは決められない。社交場で礼儀正しく振る舞う為に笑顔を張り付け、貞淑にミリーナは過ごして来た。


「巫山戯んなよ、あのクソ共…。」


 ミリーナは口が悪く、性格も中々に過激である事をずっと隠して来たのに、3人の悪口を聞かされて取り繕う事が出来なくなってしまった。


 ミリーナへの不満を言葉にするのはサイラスだけだが、エリクとガラダスもミリーナの事を小馬鹿にしているのは雰囲気で伝わってきた。サイラス同様、この2人の評判も悪く、似た者同士仲良くつるんでいた。ミリーナが赦せないのはサイラスだけではなく、エリクとガラダスもだ。


「…悪口を言われた事をお父様に話せば婚約解消してくれるでしょうね。」


 ミリーナが強くお願いをすれば、アラサラス子爵はミリーナとサイラスの婚約を解消するように動いてくれるだろう。しかし公の場ではなく、3人という少人数同士で悪口を言われた程度。しかも聞いたのがミリーナだけではサイラス達はしらばっくれて何のお咎めもないかもしれない。


「絶対ダメ、クソ等には報いを受けさせないと気がすまないわ!!」


 サイラス達を苦しめてやりたいミリーナは、必死に考えを巡らす。だが、元々評判が宜しくないサイラスの悪評を広めたところでダメージが与えられるとは思えない。エリクとガラダスも同じでミリーナが何かを言っても気にもとめないだろう。


「…本当に何で、私とあのクソ野郎を婚約者にしたのよ。成績も評判も悪い男と娘を結婚させようとするだなんて…しかも、家格が上な訳でもないのに。」


 ミリーナの殺意は父親に向いていく。母親はミリーナが物心ついた頃に亡くなっており、現在は父と兄、そしてミリーナの3人家族だ。父は悪い人ではないが何処か頼りなく、帳簿を見ては眉を顰める事が多かった。金銭面の問題でミリーナをサイラスと結ばせようとしているのかもしれないが…。


「…って、今はクズ共の事を考えないと。」

 

 今はサイラス達の事の方が先だと気持ちを切り替えたミリーナは、再びサイラス達を苦しめる方法を考え続ける。サイラス()を…。


「……あぁ、そうしましょうか。」


 ミリーナは思い浮かんだ方法に、ニヤリッと意地悪な笑みを浮かべた。




◆◇◆



「おい、何だよ話って?」


 翌日、ミリーナはサイラスを学園の裏庭に、サイラス達がミリーナの悪口を言っていた場所に呼び出した。


「すみません、人目のある場所で話す内容ではありませんので。」


 ミリーナは本性を隠し、今までと同じ普通の態度でサイラスと向き合った。


「…ごめんなさい。私が婚約者である事にサイラス様は不満があったのですよね。」


「…は?」


 ミリーナの謝罪に、サイラスは目を丸くした。


「私達の婚約は両家で結ばれたモノであって、私達の意思ではありません。でも、サイラス様が私の事をとても不満に思っていた事を知って、申し訳ないと思ったのです。」


 私の方が不満で堪らないけどな、とミリーナは内心で吐き捨てながらもしおらしく顔を伏せる。


「…ふ、ふん! 分かれば良いんだよ!」


 サイラスは何処か嬉しそうに威張る。何故ミリーナがサイラスの想いを知ったのか疑問に思っている様子は見られない。この男は本当にクズで、頭も悪すぎるとミリーナは改めて思った。


 だから、馬鹿なサイラスにも分かるようにミリーナは伝えてあげるのだ。


「“何でミリーナみたいな地味で頭の固い女が俺の婚約者になっちまったんだよ”…とサイラス様は言ったのですよね? そんな風に思わせて本当にごめんなさい。婚約解消して貰うように、父にお願いしますね。」 


 サイラスの言った言葉を覚えていたミリーナが同じ言葉で、そして誰かに聞いたかのように話すとサイラスは驚いた顔をした。


「はっ、…え?」


「“俺みたいな格好良い男に、ミリーナなんかが相応しい訳ないだろう? あーあ、もっと俺に相応しい女は居るっていうのに、なんで親父はミリーナとの縁談を結んだんだか”…とも言ったそうですね。えぇ、本当にそうですよね。サイラス様が素敵な令嬢と結ばれる事を心からお祈りしております。」


 嘘だけどな、と思いながらもミリーナは健気な令嬢を意識して演技する。


「ちょ、ちょっと待てっ!!?」


 流石のサイラスも、昨日自分が言った発言くらいは覚えていたらしい。


「だ、誰がミリーナにその事を教えたんだっ!?」


 焦った様子のサイラスに、ミリーナは内心笑みを浮かべる。


「えっ、あ…その…失礼します!」


「なっ、おいっ、待て!!」


 ミリーナが視線を態とらしくサイラスから外し、サイラスに追いつかれる前に校舎に向かって走り去った。



◆◇◆




「誰がミリーナに昨日の事を言ったんだよ!! 何でそんな事をしたんだっ?!」


「な、いきなりどうしたんだよサイラス!?」


「な、何怒ってんだよ?!」


 翌日、学校に着いて早々、サイラスは怒りながらエリクとガラダスを空き教室に呼び出して問い詰めた。エリクとガラダスは理由が分からず困惑したままサイラスを見返す事しか出来ない。


「お前等のどっちかが、ミリーナに悪口の事を言ったんだろう?! 普通本人に言うかよっ?!」


「はぁ? …いや、俺じゃねぇよ!」


「お、俺も違う! そんな事をする訳ねぇだろう!!」


「嘘を吐くな! あの場には俺達以外いなかっただろう?! 俺の言った言葉をそのまま言えるのはお前らしか居ないっ!!」


 サイラスに睨まれたエリクとガラダスは必死に弁明する。だが、サイラスの怒りは静まらない。


「別にミリーナに悪口を言った事を知られたって構わねぇよ! けどよ、秘密を漏らされたみたいで気分が悪いんだよっ!! 本人に話すなんて馬鹿なんじゃねぇかっ!?」


「なっ、だから、知らないって…!」


「あの、お話し中、すみません。」


 突然聞こえた声に3人は一瞬固まった。声がした方向へ振り向くと、そこにはミリーナが居た。


「ミリーナ…。」


「ごめんなさい、もうすぐ授業が始まるのに3人が何処かに行かれる姿を見たので気になってしまって…。昨日の事ですよね?」


「っ…。」


 ミリーナが気不味そうな表情でサイラスを見ると、サイラスは何も言わないが険しい表情のままミリーナを見た。エリクとガラダスは困惑したままミリーナとサイラスを交互に見ている。ミリーナは内心で3人の姿を満足そうに眺めながら、表面は心配そうな顔でエリクを見た。


「…ごめんなさい、ルーストン子爵令息。」


「…え?」


 ミリーナの突然の謝罪に、エリクは目を丸くした。


「え、あの…何の話、ですか?」


「ごめんなさい、失礼します。」


 エリクの質問を無視してミリーナは頭を下げると、サイラスの時と同じようにそのまま走り去った。


「な…何なんだよ。」


 急に話し掛けて来たと思ったら、エリクには全く身に覚えのない、訳が分からない謝罪をして走り去ってしまったミリーナの後ろ姿を呆然と見つめた。


「…そうか、お前か。」


「っ!?」


 サイラスの低い声にはっとしたエリクが振り向くと、サイラスはエリクを睨みつけていた…。




◆◇◆



「待ってくれ、アラサラス子爵令嬢!」


 授業後、人気の少ない廊下を態と歩いていたミリーナの後を追ってきたであろうエリクの声が、ミリーナの耳に届いた。


 あれから3人は、1時間目の授業には出席せず、2時間目からは出席してきた。しかしエリクはサイラスとガラダスから避けられ、1人で気不味そうに行動している。


 自分の元に早足で近付いてきたエリクの足音に、ミリーナはニヤリとした笑みを浮かべたが、エリクに顔を向けた時には瞬時に笑みを消した。


「ルーストン子爵令息…どうされたのですか? 何時も一緒に居る2人と一緒ではないのですか?」


 ミリーナは態と、エリクの神経を逆撫でする為の質問をした。


「っ、それは、貴女のせいで誤解されたんです!」


「…え?」


 ざまぁみろ、そう思いながらもミリーナは困惑した表情して声を出した。


「私のせいって、どういう意味ですか?」


「昨日、俺に謝罪しただろう!? あれはどういう意味ですか?!」


 エリク(お前)に疑いを向けさせる為に決まってるだろう? とミリーナは心の中で思いながら、焦りと怒りを含ませたエリクの言葉と態度を満足そうに見つめた。


「それはその…ルーストン子爵令息は悪口を言っていた訳では無いのに、申し訳無いなと思いまして…。」


「…はぁ?」


 ミリーナの言い方が曖昧で分からないのだろう。エリクが困惑と苛立ちを滲ませたような声を出した。


「ルーストン令息はサイラス様の悪口に相槌を打っていただけだと知っています。だから、その…昨日、険悪そうな雰囲気を見て、申し訳無かったなと思わず言葉にしてしまいました…。」


「…待ってくれ。つまりどういう事だ?」


 嫌な予感が過った様子のエリクは顔色を悪くさせる。ミリーナの思惑通りの反応をしたエリクに、ミリーナはトドメを刺すかのように口を開いた。


「ですから、サイラス様が私の悪口を言ってルーストン令息が聞いていたとデイラ子爵令息から…あっ。」


 ミリーナは口に手を当てて言ってしまった…という態度をとった。ミリーナの口から出たガラダスの名前に、エリクはショックを受けたように固まった。


「ガラダスが…あいつがサイラスと俺が悪口を言っていると言ったのか。」


「…ご、ごめんなさい。」


 違います。私が直接聞いてただけですよ、とミリーナ内心で返事をした。エリクのショックを受けた顔は最高だと思いながら、ミリーナは俯いたまま早歩きでその場を去る。明日が来るのがとても待ち遠しかった。




◆◇◆





「ガラダス! お前がアラサラス子爵令嬢に言ったんだろう! しかも自分の事は話さずにいたんだよなぁ!!」


「はぁ?! 知らねぇよ、俺じゃなくてエリクがバラしたんだろうが!?」


「……。」


 翌日、またも授業前に3人は空き教室で集まった。エリクとガラダスの言い合う姿にサイラスは眉を顰める。


「サイラス! 昨日俺はアラサラス子爵令嬢から聞いたんだよ。全部ガラダスの仕業だったんだ!」


「で、出鱈目を言うな! そんな訳無いだろうが!!」


 エリクとガラダスはお互いに罪を擦り付け合う。いや、擦り付けられそうになるから反論し合う。


「っ…、あー、もう最悪だぁっ!! お前等は本当に最低だなぁ!!」


 サイラスは頭を掻きむしると2人を睨み付けた。


「もうどっちが犯人かなんてどうでも良い! 今すぐ俺に謝れよっ!!」


 エリクとガラダスはサイラスの言葉に愕然とした顔をした。しかし、エリクはすぐにサイラスを睨み返した。


「…はぁ? なんで俺は言ってないのに謝らなくちゃならねぇんだよ。」


「あ?」


 エリクの言葉に、サイラスは眉を顰めた。


「それに、最低野郎なのはお前の方だろう。アラサラス子爵令嬢に悪口を聞かれたって問題ないって言った癖に、何時までも引きずって嫌な態度取り続けやがってさ。」


「…なんだとぉっ!?」


 エリクがサイラスに失笑しながら言うと、サイラスは激昂した。


「…はは。アラサラス子爵令嬢に悪口暴露して、俺に罪を擦り付けるエリクなんかに言われたくないだろうぜ?」


 今度は2人の様子を見ていたガラダスが口を開いた。


「っ、だから! それはお前の方だろうがっ!!?」


 今度はエリクが激昂し、ガラダスを強く睨み付けた。


「でもまぁ、確かにねちねちしつこく気にして、自分が被害者みたいに苛立ってるサイラスもどうかと思うよなー。つーか、バラされたくないなら最初から言うなって話だよな。面倒くせぇよ、お前。」


「は、はぁっ!?」


 サイラスはガラダスを睨みつける。ガラダスもサイラスを睨み返しながらエリクの悪口を言う。エリクがガラダスの言葉に反論し、サイラスの悪口を言えばサイラスが憤る。こうして暫く3人の言い合いは続いた。


 3人の雰囲気は険悪だった。いや、そんな表現が生温いくらいのドス黒い空気が漂っていた。この光景をミリーナが見たなら、ガッツポーズをして喜んだかもしれない。しかし残念ながらとっくに授業は始まってしまっていた為、この光景を見る事は出来なかった…。



◇◆◇



「ふはははっ!! いい気味だわクズ共っ!」


 その後、サイラス、エリク、ガラダスの3人の友情はあっという間に崩壊した。3人がそれぞれ孤立した姿を見てミリーナは大笑いした。


 サイラスは性格も成績も評判も悪かったがエリクとガラダス、2人の友人がずっと傍に居た。だから、サイラスを孤立させてやる事が悪口を言われ、不快な気分にさせられた事への復讐になるとミリーナは考えたのだった。勿論、それはエリクとガラダスへの復讐にもなった。大した取り柄もなく評判も悪い彼等が、友人をなくして今後どう過ごしていくのかとても楽しみだ。


 ミリーナとサイラスの婚約解消も無事に成立した。今回の件はサイラスに非があるとされ、バルド子爵家から中々の額の慰謝料を支払われた。また、サイラスの態度に問題があると判断したバルド子爵はサイラスへの教育を徹底すると宣言したらしい。


「あーあ、本当にいい気味だわ! …でも、こんなに都合が良いのも変な話よね?」


 サイラス達の友情を崩壊させる為の計画が上手くいった事と婚約解消出来た事は良いとして、すんなりと慰謝料が支払われた事とサイラスの教育を徹底すると宣言した事について、ミリーナは心の何処かで引っかかった。


「サイラスのクズに問題がある事なんて分かりきっていたのに、どうしてもっと早く教育を見直さなかったのかしら? まぁ、あのクズを更生させるなんて中々難しいかったのかもしれないけれど…それなら何故今、やろうと思ったのか…。」


 ミリーナとの婚約、慰謝料、婚約解消、サイラスの教育…。暫く考え込んだミリーナは、何かに気が付いたかのように目を見開いた。


「…あのダメ親父め。」


 ミリーナは仄暗い笑みを浮かべながら、父であるアラサラス子爵との夕食を待ち遠しく思うのであった。





◆◇◆



「本当に感謝致します、アラサラス子爵。」


 バルド子爵家に招かれていたミリーナの父、アラサラス子爵とバルド子爵は紅茶を飲みながら談笑していた。


「いえ、上手くいって良かったです。」


 アラサラス子爵は安心したような笑みを浮かべた。


 ミリーナとサイラスの婚約の目的は、サイラスの傍からエリクとガラダスという悪い交友関係を断ち切らせる事が目的だった。


 サイラスの性格と成績の悪さにはバルド子爵も手を焼いていた。しかし、何度叱責してもサイラスは態度を改めようとしなかった。成績が悪く、本人は自分の顔が良いと思っているようだが特別秀でていた訳ではない。そんな彼が父や周りに反抗していられたのは、友人の存在があったからだ。


 類は友を呼ぶという言葉の通り、サイラスにはエリクとガラダスという友人が常に居た。家族と友人の関係は別物だが、孤独ではないという状況にサイラスは悪い意味で自己肯定感が高く、調子に乗っていたのだろう。


 だから悪影響を与える友人を切り離し、1人になったサイラスになら教育を受けさせる事が出来るかもしれない。そう考えたバルド子爵だが、どうやって切り離せば良いのか分からなかった。当然、バルド子爵がサイラスにエリクとガラダスと縁を切れと言ったところで聞く筈がなかった。


「ミリーナ子爵令嬢には感謝しなくてはなりませんな。」 


 そんな時、縁があって声をかけてきたのがアラサラス子爵だった。アラサラス子爵はミリーナとサイラスを婚約者にすれば、サイラスの交友関係を断ち切れる筈だと言ったのだ。


 ミリーナ・アラサラス子爵令嬢は大人しく、目立たない令嬢だと思っていたバルド子爵は、サイラスの態度にミリーナが精神的に参ってしまうのではないかと心配した。普通の令嬢が交友関係を断ち切る計画を遂行できるのかという不安もあった。


「お任せください、ミリーナに任せれば上手くいきます。その代わり…資金を頂きたいのです。」


 アラサラス子爵は気不味そうな顔をした。バルド子爵は深く追求しなかったが、金銭面で何か問題がある様子だった。


「…良いでしょう。」


 バルド子爵としてはサイラスの交友関係を断ち切ってくれたら報酬を渡す事に問題はない。計画が成功したらサイラスとミリーナは婚約解消する事になるだろう。その際に慰謝料という形で報酬を渡す事に決めたのだった。


「また改めて、令嬢にもお礼を言わせて頂きたい。」


 サイラスは今まで見せた事がない沈んだ様子を見せた。心の拠り所を失っている今なら、バルド子爵の言う事を聞かざるを得ないだろう。一筋縄では行かないだろうが、子爵家の為にやれる事はやっていくしかない。


 この機会を与えてくれたミリーナに直接お礼を言いたいと思ったバルド子爵がにこやかに微笑みながらアラサラス子爵を見ると、アラサラス子爵は苦笑いをした。


「…実は、娘には今回の計画の事は言ってなかったんです。」

 

「…えっ?」


 アラサラス子爵の言葉にバルド子爵は目を丸くした。


「いや、その…あの娘なら言わなくても何とかなると思いまして。それに、金の為だけに婚約解消前提の婚約をしろだなんて言い辛くてですね…ははっ。」


「…それはつまり、何も知らない令嬢が自分の意思で全て企てたと言う事ですか?」


 信じられないと言わんばかりに目を見開いたバルド子爵に、アラサラス子爵は苦笑いを消して真面目な表情に切り替えた。


「…。」


「…。」


 2人の間に沈黙が訪れる。今夜、アラサラス子爵がミリーナから何を言われ、何をされるのか。それは誰にも分からないのだった…。

 


 悪口って本当に嫌だと思います。悪口を言って盛り上がる人達の絆を壊す話を書きたくなったのですが、ヒロインの性格は兎も角、父親が残念な駄目親父となってしまいました。破茶滅茶な話になってしまいましたが、呼んで下さった皆様に感謝致します。


 最後まで読んで下さり本当に有難うございました!

 何時も誤字報告して下さる皆様にも大変感謝しております!

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― 新着の感想 ―
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