見ろよ……! スポーツの名門・豪海大附属高校の連中だぜ……!
街中で談笑する二人の男。
「……でさぁ。それであいつ怒っちゃって。もうマジ切れ」
「マジ? そりゃヤバかったな」
そのうちの一人が気づく。
「……ッ!」
「どうした?」
「見ろよ……! あいつら、スポーツの名門・豪海大附属高校の連中だぜ……!」
二人の視線の先には、五人の男子高校生が歩いている。
「豪海大附属……テレビでもよく耳にするな」
「まさかこんなところで目にするとは……」
「もし知ってるなら、あいつら一人一人について教えてくれないか?」
「ああ、いいだろう……」
頼まれた男は、一番先頭の生徒に目をやる。
「まずあいつが黒ヶ崎蓮牙。高校三年生だ」
「すげえ目つきだな……ホントに高校生かよ?」
黒ヶ崎蓮牙は黒髪で、まるで刃物のような鋭い目つきをしていた。
その眼光だけで人をひれ伏させてしまうような圧倒的な迫力である。身長も高く、すらりとした体型をしている。
豪海大附属高校の男子制服は青の学ランなのだが、第一ボタンまできっちり締め、姿勢正しく歩行する姿はまさに王者の風格。後光が差しているかのような錯覚すら抱く。
「五人の中のリーダーで、生まれながらの“絶対王者”。圧倒的な支配力でいかなるフィールドをも支配すると言われている」
「見ているだけで冷や汗が噴き出しちまったぜ……」
情報通である男の解説は続く。
「続いて……後ろのでっかいのが大王島十郎、同じく高校三年」
「ホントにでかいな……」
大王島十郎は身長195センチ体重100キロ、見た目通り人並み外れた怪力の持ち主である。
頭は角刈り、肩幅は広く、体じゅうのどこも太くぶ厚くできている。
「なんでも背筋は200キロ以上あり、ベンチプレスは250キロを持ち上げるらしい」
「ゴリラかなんかかよ……」
「溝に嵌まった軽トラックを、一人で持ち上げて救ったなんて逸話もあるくらいだ」
「あいつならそれぐらいできるだろうなぁ……」
話題が大王島の右隣にいる生徒に移る。
やや髪は長く、大王島ほどではないが長身で、細身でもある。
「ひょろっとしてるあいつは……?」
「“怪鳥”山ノ上隼人! 高校三年生だ」
「怪鳥ときたか……」
「その異名通り、凄まじい瞬発力の持ち主だ。子供の頃から大人用のバスケゴールでダンクができて、走り幅跳びをすれば砂場を軽々飛び越えちまったらしい。極めつけは、奴独特の跳躍法で、地面を軽く踏むような踏み込みで、まるで宙に浮くかのようなジャンプをする。山ノ上にはなにか重力を軽減する体質があるのでは、と真面目に主張する物理学者もいるぐらいだ」
「そりゃ鳥扱いされるわ……」
二人の目線は四人目の生徒へ――
「なんかやけにちっこいのもいるな。俺より小さいぞ」
「あいつは広瀬瞬也、高校二年。“スピードエンペラー”の異名を持つ」
「……ってことは速いのか?」
「ああ、まだ体も出来上がってないだろうに、100メートル10秒ジャストで走れるとか」
「はっや……」
広瀬瞬也は黒髪で目はぱっちりしており、中学生と言われても違和感のない容姿をしている。
「足が速くてちっこくて可愛らしい。人気ありそうだな」
「その通りだ。実際バレンタインデーでは山ほどチョコを貰ったらしい」
「じゃあ、もう彼女とかいるんじゃないか?」
「あいにくそっちは奥手らしいぞ。足は速くても、色恋沙汰には鈍いようだ」
「微笑ましいオチまでついて……にくいねえ」
五人目。集団の中で少し離れたところを歩いている。
中肉中背だが、瞳孔の開いた、常軌を逸した眼をしている。
「明らかに目つきがヤバイのがいるんだが……」
「奴は沼田戮。高校二年生だ」
「なんていうか、殺気がすごいな」
「ああ、なにしろ“殺し屋”なんて呼ばれてるからな」
「おいおい、シャバにいていいのか?」
「まあ、あくまであだ名だからな。しかし、五人の中では最も危険な男とされる。身体能力こそ特筆すべきものを持たないが、誰もがブレーキをかける場面で、思い切りアクセルを踏める……そんな男さ」
「絶対敵に回したくないな……」
情報通の男は改めて、先頭を歩く黒ヶ崎に目を向ける。
「しかし、五人の中の一番はやっぱりあの黒ヶ崎だ。他の四人を完璧に統率してるんだからな」
「そんなにすごいのか?」
「他の四人は黒ヶ崎に絶対的な忠誠を誓っていて、その命令には絶対従うらしい。その様子は、まるで日本の武将と武士、西洋の王と騎士なんかにたとえられる」
「よほどのカリスマ性があるんだな……」
「いずれ、より大きな集団を支配することになるかもしれんな」
五人の解説を終えた男は、ここで生唾を飲み込む。
「しかし、あの五人の最もすごいところは……」
「すごいところは?」
「あいつら全員、帰宅部だってことだ……!」
黒ヶ崎は満面の笑みで他の四人に声をかける。
「よーし、今日は俺んちでゲームやろーぜ!」
おわり
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