第二十五話
(伊佐)もう少しです あ、見えてきました
伊佐が先導し家元一行は山の中腹にある崖にたどりついた
崖からは先が見えないほど長い一本のロープがかかっていた
伊佐は何やらかちゃかちゃと金具をつけると
家元たちのベルトに取り付けがっちりと固定した
(伊佐)よし これでダイジョブです
後はこのまま崖から飛び降りれば一気に里までたどりつけます
金具によりロープとベルトを固定している先には
滑車がついていて
おそらくこのまま身を投げ出せば
ロープウェイやスキーのリフトのように下山できる
そういうことなんだろう
だが当然だがリフトのような機械はついてないので
重力だけで落下する感じである
伊佐は手を軽く振ると飛び降りていった
慣れたものである ロープに多少左右に揺られはするものの
ウマくバランスを取りながら器用に降りていった
にゃー吉もその後に続く
にゃー吉なんか綱渡りもできそうなほどバランスがよく横揺れすらしない
正直彼らの身体能力や技術は底知れない
とてもじゃないがウマく降りれる自信が無かった
おまけに家元は高所恐怖症である
(家元)だ、だいじょぶだ
し、下さえ見なければダイジョブ
あんなに勢いよくいかなくてもゆ、ゆっくりいけば
意を決して家元はダイブする
(家元)うわあああああ
家元が乗るとロープが物凄く沈んだ
そういえば狂獣武器をもってきてる
もしかしたらそんなに重い重量に耐えれるようにできてないのでは?
バツン
嫌な鈍い音と共にロープ?か何かが切れた
家元たちはそのまま真っ逆さまに谷に転落していった、、、
(家元)うわあああああああ
またゾーンだろうか?死を覚悟した場合に時間がゆっくり流れる
イタチの時と同じような超集中状態に家元は陥っていた
落下速度の原因は狂獣武器だ
まず背中にかついでいた狂獣武器を投げ捨てる
物凄い速度でハンマーは落ちて行った
少し速度は落ちたがまだ死ぬレベルだろう
がけ下は樹海になっていて
たくさんの木々が密集していた
家元はがむしゃらに木にしがみつく
ばきばきばきばき
とばっちりを食った樹木は家元の体重を支え切れずに枝と言う枝が次々折れていく
一本じゃ足らないと見るや
家元は両手で隣の木の枝をつかみ
両足でも隣の枝に足をかけていく
ばきばき、、みし ばきばきばき
ずどーん
家元は地面に腹ばいになって激突した
(家元)いったた
しこたま顔面を地面にうちつけたので鼻がじんじんする
とっさに柔道の受け身をとったので多少マシだが
鼻骨は折れたかもしれない 鼻血が止まらない
だが防具をつけてる部分はなんともない
岩イノシシの素材は衝撃を吸収する素材で作られているのかもしれない
だが首や関節の一部はむちうちのようになってて
とにかくちょっと動かすだけで痛い
だがあの高さから落ちてこの程度で済んだのは
防具のおかげだろう
(家元)あった
とっさに投げ落とした狂獣武器だが無事だった
物凄い頑丈な武器である
狂獣武器を背中にしょいなおすとまわりを見渡した
まわりは樹木で生い茂る樹海である
どこを見ても木しかない
正直目印も無ければ方向もわからない
伊佐たちを見つけないとこのままでは遭難してしまう
(家元)伊佐どの~ にゃー吉さーん
家元は大声で叫ぶがいっこうに返事はない
先に降りていった彼らはもう里についたのか?
それとも一緒に落っこちてしまったのか
それも正直わからない
(家元)なんてこった、、、
家元は意気消沈しひざをつく
そんな時にあかねのセリフを思い出す
(あかね)おじさんは素人なんだよ 死んじゃうかもしれないじゃん!!
(家元)ははっそうだよな
あかねの言うことがもっともだと納得してしまう家元
ちょっと筋力があるからと増長していたのは事実かもしれない
伊佐と、はぐれただけであっという間に死に直面するほどの脆弱なサバイバル能力
一人になったらどこにも行けない 場所もわからない
薬になる草もわからなければ食べれる木の実もわからない
マッチすらないので火もおこせない
仮に獣を狩猟したとしても焼くこともできない
もっともっと出発前に学ぶことが沢山あった
現代人としてテクノロジーに依存している生活
それが家元個人の脆弱さをつつみ隠していたことを
今更気づくことになった
(家元)姫様の言うとうりだった
あの子の方がよっぽど真理を見ていたのかもしれない
伊佐たちの無事を祈ってここで座して待つべきなのか
もしくは抗うべきか
通常は遭難した場合は(そこから動かない)のが現代でのセオリーだが
現代のように救助は期待できないだろう
(家元)座して死するは武士にあらず
最後まであらがってやる
家元は意を決して絶望にあらがってみようと立ち上がった
第二十六話につづく




