◆1984年2月15日
『行方不明。死亡した可能性大』
本日BFから届いた報告書を見た瞬間、修は「そうだろうな」と思わず呟いてしまった。こうなることは最初からわかっていたし、恐らくこれ以外の選択肢も最初から存在していなかった筈だ。
「兄さん……」
修は続いて、幾らか非合法的な方法——エーリヒ・シュヴァンクマイエルとの個人的な繋がり——で手に入れた兄の手紙を読み始めた。送られないままBFで回収されたこれは、あちこち血や泥で酷く汚れている。紙本来の白などほとんど残っていない有様だ。
だが、そこには何もなかった。
人生に対する絶望!
死に対する憤慨!
弟に対する八つ当たり!
ただそれだけが書き殴られていた。
「そうかい」
これもまた修にとっては予想通りだ。最後の最後で愚兄が正気を取り戻すとか「苦しませて悪かった」と心から謝罪してくれるとか、そういうものは最初から何一つ期待していない。血の繋がった家族だからこそ、期待したら馬鹿を見ると確信していたのだ。
「親を泣かせた時点でな、テメェは人でなしだ」
だから修は手紙を丸めてゴミ箱に放り込むと、自分なりの方法で兄と決別した。
自分達の人生を守るために。
終劇