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学園大戦ヴァルキリーズ(現行シリーズ)  作者: 名無しの東北県人
学園大戦ヴァルキリーズ バリカドイ
10/23

◆1983年11月19日

 希望なき時代。

 相変わらず勝者を妬み敗者を笑うことでしか自分自身を守れぬ救い難い人々は、アルカという小世界を舞台にして行われる、美しき人造人間同士の娯楽化された限定戦争——所謂『学園大戦ヴァルキリーズ』——だけを唯一の癒しとしていた。

 狼の世。まさに羊の皮を被った、狼達の世である。


                  ◆


『第二次世界大戦は、人類史に類を見ない未曽有の悲劇をもたらしました』

 設定上、用意だけはされている学園大戦ヴァルキリー(注1)の世界観がラジオから流れる中、バタフライ・キャットはバリカドイの基地(ソ連フロントの某所)に降り立つ。

 肌を露出している箇所が多ければ多い程、弾は当たりにくくなる。

 学園大戦ヴァルキリーズでの設定に基づくこの台詞で人気を得ていた——今は次代が現在進行形の人気キャラだが——バタフライ・キャットは、イルジオンのコードネームを用いるようになってからも、褐色の肢体をマイクロビキニだけで覆い、頭に猫耳めいた飾りを付けている。右の首筋にはその他大勢と同じ、個体識別用のバーコードが刻まれていた。

『この過ちを二度と繰り返してはなりません』

 ここまで運んでくれたUH‐1輸送ヘリがアル(注2)のソ連フロン(注3)に去っていく一方、F‐14戦闘機とF‐4戦闘機が、共に錆びた残骸の山と化している光景を目の当たりにしてバタフライ・キャットは絶句する。これがあのバリカドイとは思えなかったのだ。

『だからこそ戦後世界を力強く統治する立場となった我々グレン&グレンダ社は、今後一切、人々が争わずに済む方法を考案しました』

 バリカドイ——ロシア語で『バリケード』を意味する言葉だ——は、対マーレブランケ用の精鋭部隊として、グレン&グレンダ社から特別な扱いを受けてきたサーク(注4)。しかし九月二十二日(ダークホーム)に発生したビッグ・マザーの実権再掌握後それは打ち切られ、戦闘機や戦車等のパーツ供給は停止、多数の支援要員も一人残らず退去してしまった。その結果バタフライ・キャットが目撃した通り、素晴らしき米国製兵器も今や鉄屑同然の有様である。

『武器は君の目と同じだ。細心の注意を払おう!』

 ただ、基地のあちこちに書かれたスローガンとは程遠いが、飛行可能と思しき戦闘機の勇姿も僅かばかり見受けられた。恐らくは共食い整備を行って、全体の一割から二割を辛くも維持しているのだろう。

「あの時よりはマシか……」

 差し当たりバタフライ・キャットは、この基地を守るヴァルキリ(注5)達の様子を見て、忌々しい今年の九月(アウェイクニング)、東南アジアの某所にあるとされる国、アゴネシアの孤立地帯(ケッセル)で戦った時よりはいいと考えていた。G3自動小銃を手にした彼女らはあそこにいたバ(注6)のように老人宜しく痩せ細ってはいないし、頬も酷く窪ませていない。体中から、耐え難い悪臭を放ってもいなかった。つまり、人肉を食らう野獣に等しき存在ではない。

 そうだ、あの時とは違う。

 当時バタフライ・キャットがアゴネシア北西部に存在する省都、スペイン語で『白い土地』を意味するティエラ・ブランカへ赴いたのは、フリーランスの傭兵GRO(注7)としてグレン&グレンダ社からの緊急依頼に応じたもの。しかし今回はソ連フロントの軍事支援団(MAF)たる、キャロライン兵団(傭兵部隊)の一員という形。現在彼女は強大な戦力を即時展開可能な能力によって、学園大戦における『個人事業主』の最も優秀かつ悪名高い見本となったキャロライン・ダークホームの部下なのだ。

「ここか」

 バタフライ・キャットはその後司令部らしき建物に足を踏み入れたが、全ての扉が開きっ放しで、書類も隙間風で散乱している。また、延々鳴り続ける電話に対応する者もいない。

「指揮官と話したい。案内してくれるな?」

 だからバタフライ・キャットは外に出て、問うた。戦うためだけにモスクワの古ぼけたトラクター工場で、脳内に制御用マイクロチップを埋め込まれた上での祝福されぬ生を受けた者の一人に。

「えっ?」

 しかし問われた側は首を傾げ、

「貴方が新しい指揮官ではないのですか?」

 そう設定されているが故、ロシア語で返す。

『美少女同士が戦い、無残に殺されていく光景を見て喜ぶ変態がいる』

 どうも噛み合わぬ会話をした二人は、どちらも可憐な外見をしている。それはこの歪な事実に基づいて、倫理に反した殺人ゲームのマーケティング上、美しい容姿の方が、より効率良く()から金を集められるとグレン&グレンダ社の幹部がかつて考えたからに過ぎない。

「キャロラインめ……話が違うぞ」

 閑話休題、バタフライ・キャットは苦笑してから、ヴァルキリーに「わかった。行っていいぞ」と告げる。

『最早軍隊として有効な力はなく、あらゆる面において混乱が見られる』

 バタフライ・キャットがバリカドイに派遣されたのは、グレン&グレンダ社の理不尽な支援打ち切り後、こう評価されるまでに弱体化したこの組織を少しでも再建すべく、GROMや可憐だが皆同じ顔をしているヴァルキリー達を鍛えるためだ。勿論マーレブランケとの戦いに備えて……。

 マーレブランケ。

 ダンテ・アリギエーリの地獄篇に登場する黒い悪魔達の総称をその名に冠した武装勢力は、コキュートス襲撃や孤立地帯における恐るべき殲滅戦を経て、今や正式な軍事支援団(MAF)である。アルカ西部の米国フロントに所属し、ソ連フロントと同地の中間地点に広がるフリーダム・ランドを本拠地として、さも当然のように学園大戦ヴァルキリーズのシステムに組み込まれていた。

 悪名高きマリア・パステルナークに率いられ、ノエル・フォルテンマイヤーも傘下に加えているそんなマーレブランケが今年十月(イルジオン)タスクフォース600(執行猶予大隊)との戦いで全世界合計八十二万五千件のペイ・パー・ビュー(PPV)販売数を記録し、早くも絶対化しつつあったその立ち位置を更に強くしたことは、バリカドイに大いなる揺れを与えた。それは当然だ……何故ならこのサークルは元々、マリアがかつて率いていたタスクフォース・リ(注8)の横暴に対抗すべく結成されたのだから。

「マリアの魂に白いシャツを着せてやらねばならん」

 再び閑話休題、バタフライ・キャットは即使える兵器のリストをまず作るようヴァルキリーらに命じた。今回も苦労と前途多難は約束されているが、取り急ぎTHG‐51——ごく一部の特異体を除く全員が、これを失うや否や急激な老化を始める、脱走防止用の化学物質だ——の供給は止められていないから、定期的な注入を気にする必要はない。それだけでも大分違う!

「憎い奴は死んだと思うことも、顔を合わせた時悪霊だと思って目を逸らすのもやめた。憎い奴が一度くたばった後、地獄から今度は本物の悪霊になって戻ってきたら、その時はもう一度殺して追い返すしかないんだ」

 バタフライ・キャットは、去る十月一日(イルジオン)……ヴェーグセー・アールタルマトラニーターシュ・ヘリの牢獄で口にしたのとほぼ同じ恨み節を吐く。バリカドイの指揮官になるのは確かに話が違う。しかし一方で、これは今年九月と十月に続く復讐の好機であるとも彼女は感じていた。学園大戦ヴァルキリーズの不正規戦(場外乱闘)奴の先代(初代マリア)が自分の顧客を次々に叩き潰し、理不尽に食い扶持を奪われたことへの強い恨み。そして、その死後も人気ランキングや関連商品の売上等で常に自分を上回り続けた十五年間。一番見たくないものを嫌でも見せ付けられる度に燻ったどす黒い感情は、いつしかそう簡単には消せぬ憎悪と化している。

「キャロラインには悪いが、存分に利用させてもらうとする」

 確かに、キャロラインには恩義を感じている。彼女は十月六日(イルジオン)、戦場の片隅で燃え残った木に寄り掛かり、最期が訪れるのをただ待っていた自分を拾い上げてくれた。だから負傷しても、今はフレガータ総合病(注9)でフィリピン人看護婦から面倒を見てもらえる。あらゆる手段で辱めを受け、法的保護の外に蹴り出された状態で、生殺与奪の権さえ奪われたような奴が——だ。

 しかしバタフライ・キャットを突き動かす最大の力は、やはりマリアに対する復讐心であった。それは強烈な呪詛となって、彼女をコントロールしていた。


 注1 第二次世界大戦後、世界を事実上支配するようになった多国籍企業であるグレン&グレンダ社が考案した娯楽戦争。

 注2 世界の最果てに存在する地。学園大戦ヴァルキリーズの舞台となる場所で世界各国を模したフロントが各地に存在している。

 注3 アルカ東部を拠点とするフロント。

 注4 アルカでは軍の部隊に相当するもの。

 注5 アルカにおける娯楽戦争の中心的役割を担う人造人間。マーケティングの都合上全員が十代の美少女の姿をしており、人格も疑似的なものである。

 注6 偶発的な事故等で自己意思を有するようになったヴァルキリー。

 注7 ヴァルキリーの中から極めて低い確率で誕生する少女達。各種ローブ及びエグゾスケルトン(強化外骨格)、フライトユニット等を用いた戦闘が可能。

 注8 初代マリア・パステルナークが率いていたソ連フロントの軍閥。

 注9 アルカ南部の中立地帯に存在する病院。


                  ◆


 マーレブランケの最高司令官(ヴェルホーヴヌイ)たるマリア・パステルナークは今、レーニン廟とジッグラ(注1)式の儀式的建造物が激しく交尾して生まれたような、奇妙極まりない空間にいた。そう——グレン&グレンダ社直轄区域にある、ネクロスペース(死の宇宙)に。

「マザーは……多忙か?」

 静かに口走ったマリアの顔は先代同様、一般的なヴァルキリーそのまま。長い紺髪と琥珀色の瞳、百七十五センチの長身を包み込む、左右に金の肩章が付いた改造制服や黒いタイツで覆われている両足、右首筋のバーコードも然り。しかし外見は一九六八年(暴力の王国)と全く変わらなくても、十五年前(暴力の王国)とは明らかに別人の雰囲気を纏っている。それもその筈……自らが作り出した復讐の女神に追われ、全世界に憎悪され、共存の叶わない敵に取り囲まれてもなお生きようとした先代の記憶(バグの成り上がり)を引き継いだ上で、新たな人格を持って再臨した二代目GROMこそ彼女なのだ。

「ごめんなさいね、今出るわ」

 グレン&グレンダ社の保安部隊員——ガスマスクを装面し、MP5短機関銃で武装している——に案内されてから七分十二秒後、腐敗臭が立ち込め、あちこち黒ずんだ血痕や、衣服の切れ端と混ざり合った肉の塊がこびり付いている空間がノエル・フォルテンマイヤーと全く同じ声によって震える。

「全くもう……忙しくて嫌になっちゃう」

 直後巨大昇降プラットフォームがせり上がり、椅子に座ったビッグ・マザーが姿を現す。胸元に菱形の鋭い切れ込みが入っているだけでなく、横部分も大きくカットされて豊満が左右に少なからず露出、スリットからは太腿どころか、足の付け根までも見えてしまいそうな黒いドレスを纏っているこの人物は、学園大戦ヴァルキリーズという殺人ゲームと、それに関わる諸々全てを創造したグレン&グレンダ社の頂点。九月に実権を再掌握した後、スイスにある本社ビルからこのネクロスペース(死の宇宙)に根城を移している。

「優秀過ぎるのも考えものね」

 眼鏡の奥にある双眸は、ノエルと同じ赤。爬虫類めいた縦スリットもまた然り。

 身長はノエルと同じ百八十センチ。胸元の豊かさもまた然り。

 髪の色もノエルと同じ金。しかしショートカットではなく、ポニーテール。

「こんなことなら、人の形をした豚さん(最高責任者)達を何匹か残しておくべきだったわ」

 だが言動からは、自分以外の大半を見下す傲慢な人格が滲み出ていた。彼女が対等に接するのは『娘』であるノエルとその他数名だけである。

「それで、私に何用でしょうか?」

 そんなビッグ・マザーから今回マリアが呼び出しを受けた理由は、直接会って話したいことがあるから……というものだった。

「ノエルちゃんは元気?」

 しかしビッグ・マザーは本題に入るどころか、赤ワイン——血液と言われても信じてしまいそうな色合いをしている——をグラスに注ぎ始めたので、マリアは強い不快感を覚えた。

「ええ。元気過ぎる位です」

 現在のマリアは北京農(注2)のサブラ・グリンゴール(注3)宜しく、システムの枠内に収まる気は毛頭ない。それどころか一度は死んだ自分を復活させる等、あたかも神であるかのように振る舞うビッグ・マザーを激しく嫌い、いずれは集められた栄光と称賛の全てを生ゴミのように投げ捨て、踏み躙ることで復讐してやろうと考えていた。現状はテラコッタ(焼き物)の兵隊として、自分に与えられた役割を逸脱する必要も理由もないだけだ。それにもう少しの間、二度目の人生をくれた人々にも夢を見せてやらねばならぬ……。

「私もあやかりたいものですよ」

 承認欲求と嫉妬と孤独の三竦みで自壊した先代とは違って、言わば『役に立つ道具』として世に再臨したことを自覚している二代目は、記憶こそ引き継いではいるものの人格は別人のそれだ。それに、当面の目標であった『アルカにおける絶対的かつ不可侵な存在』——つまり小さな世界の頂(砂の玉座)も既に獲得している偽りの王でもあった。常に飢え、何かを求めていた初代とは何もかも違う。

「じゃあ本題に入るわ。貴方にいいことを教えてあげる……次の対戦カードはね、マーレブランケ対バリカドイよ」

 やがてワインを注ぎ終えたビッグ・マザーは、一人乾杯しながらこう告げた。

「勿論向こうには教えてない。始まりは明後日から……二日もあれば、貴方なら奇襲攻撃の準備は整えられるわよね?」

 あまりにも突拍子のない話だったのでマリアは一瞬固まってしまうが、すぐに「ほう……」と発言者を見据える。

「私がご息女(ノエル)の上官だから教える……という訳ではなさそうですね」

 マリアはビッグ・マザーが、いそいそと胸の谷間から這い出してきたトカゲと軽いキスを交わし、ざらついた鱗が肌を撫でる感触を楽しむ様子を見つつ眉間に皺を寄せる。

「私は学園大戦ヴァルキリーズを、何もかも自分の思い通りにしたいの。レアとサブラもとってもいい子だけど、マリアやノエル、エーリヒ達がいない学園大戦ヴァルキリーズなんて学園大戦ヴァルキリーズじゃないから」

 トカゲとの戯れを終えたビッグ・マザーはワインを一啜りしてから、これまたノエル同様肉感的な足を組み直す。

「思い通りっていうのは、前任者達の酷いやらかしで滅茶苦茶になってしまった部分を、ひとまず私の気に入った形に直すこと」

 続いてグラスを置いたその姿は驚くべきことに、半世紀以上も前の資料映像と一切変わらぬ若々しさを保っている。

「そして組織からの強大なバックアップと持ち前の戦力、加えて個人の戦闘力を以ってシステムを維持する役割は、マーレブランケ以外に存在しないの。だからこうやって教えているし、そのために貴方達を作った」

 ヴォズロジデニヤ(再生)作戦とアゴネシアでの諸々を仕組み、マリア及びエーリヒを蘇らせ、ノエルの凍結も解除したのは他ならぬビッグ・マザーだ。表向きマーレブランケは反動的貴族や右翼知識人からの大規模な支援によって誕生し、違法な武器の購入や麻薬ビジネスの成功が巨大化の原因と言われているが、その背後に彼女がいたのはまず間違いないだろう。

「ご冗談を」

 最後にビッグ・マザーが「でも貴方は私のこと、大嫌いみたいだけどね!」とウィンクしつつ付け加えたので、マリアは少しだけ表情を強張らせる。歪曲かつ奇妙な話だが、実を言うと両者は相手が脳内で何を考えているのか、かなり前の段階からお互い把握していた。いずれ袂を分かつ時が来るとは知りつつも、単にそれは今日ではないと思っているのだ。

「了解致しました。すぐに行動に移します」

 マリアが視線を左右に巡らせても、保安部隊が現れる様子はなかった。だから二人の間に、蟻の入り込む隙間すら存在せぬ密集陣形(ファランクス)も形成されない。

「ありがとうございます」

 そして、マリアは本心からの感謝を口にした。今回ビッグ・マザーが自分達に対して、何故こういう形で優位を保証してくれたのかは結局判然としなかったが、バリカドイを打倒すれば経歴により輝かしい箔が付くのは確かだ。それは復讐の時に捨てる栄光と称賛の価値をますます高めてくれるに違いない。つまり、より強力な形でノエルの母親(ビッグ・マザー)を傷付けてやることが可能となるのだ。

 強大は強大のままでいい。何故なら、それは正しいからだ。

 それだけでなくマリアは、遡ること十月五日(イルジオン)……ユライヤ・サンダーランドにこう言い放った通り、自分達と互角の勢力は不要であるとも考えている。最強の存在であることは色々とやりやすい。

「一つだけ……」

「あら? 何かしら?」

 結論が出た以上マリアは素早く退室したかったが、まだ一つだけ、どうしても言質を取っておかなければならないことがあった。

「作戦を円滑に進めるため、今回も化学兵器の使用を許可願います」

 角が立つのを避けるべく、マリアは可能な限り感情を押し殺して喋る。流石に毒ガスや生物兵器といった類の諸々について軽々しく喋ることはできない。

「サリンでもタブンでも、ご自由にどうぞ!」

「——ッ」

 そんなマリアに対してビッグ・マザーが送ったのは、再度のウィンクである。

 こいつ……本当に……!

 何の重みも思慮もない、軽過ぎる回答——この瞬間マリアは復讐の形を変えてやろうという誘惑に駆られてしまう。先代が飼っていたアルフとロルフのような大型犬を調教し、その鋭利な歯と強靭極まる顎で、いつの日かビッグ・マザーを滅茶苦茶に食い荒らしてやるのも悪くないと……。

「必要なものがあったらいつでも言ってね! 応援してるわ!」

「感謝します。それでは」

 けれども退室するマリアの動作からは、そういった感情を何一つ察することができない。内心、ビッグ・マザーは今自分がこう思っていることに気付いているだろうなと察している二代目は、やはりどこまでも落ち着いている。

 先代のような、狂気に限りなく近い熱など一切見受けられなかった。

 

 注1 古代メソポタミアの巨大聖塔。ジッグラトとは『高い所』を意味する。

 注2 イスラエルフロントが撤退した後も、米国フロント内に軍事支援団(MAF)として残っている軍閥。リーダーはレア・アンシェル。

 注3 北京農園所属のGROM。アルカでは最強クラスの存在。


                  ◆


「これが例の新型?」

 マーレブランケの総本山こと、フリーダム・ランドに建つ司令センター。その格納庫に足を踏み入れたエーリヒ・シュヴァンクマイエルは、早速視界に入ったT‐64中戦車を指差す。左目を眼帯で覆い、男子用のそれが公式には存在しないた(注1)女子用のセーラー服に身を包んでいる彼は、タスクフォース・リガ時代にはディアトロフ(注2)及びグリャーズヌイ特別(注3)の攻略戦を指揮した。まだ人間だった初代の死後、マリア・パステルナークと共に秘密バックアップから記憶と肉体を復元された現在も、マーレブランケにおいても引き続き前線指揮官(軍師)めいた役割を担っている。また、アルカをゲームや娯楽としてではなく、世界平和を実現するための場所と認識している変わり種でもあった。

「ええ。ソ連支社からの直送便です」

 その響きの直後に、あちこち油で汚れた作業着姿のヴァルキリーがハッチから這い出してくる。彼女の名は副官。タスクフォース・リガ時代からエーリヒ達の面倒を見続けている、実に食えない性格の持ち主だ。

「整備ありがとうね」

「お礼は現金(マネー)でお願いします」

 エーリヒの眼前まで歩み出た副官は、つい一昨日、チュグエフカ空軍基地発のC‐130輸送機に乗せられて届けられた新型戦車の解説を始める。

「百二十五ミリ滑腔砲に自動装填装置、複合装甲、更には対戦車ミサイルまでも運用可能……全くとんでもない戦車ですよ。我々のT‐55は、今回全部こいつに更新されました」

 続いて副官は、T‐64中戦車はソ連本国でも秘密兵器の扱いで、NATOとの最前線である東ドイツやハンガリー等に駐留する精鋭部隊だけに配備されていることと、当然海外には輸出されていないが、自分達が使えるのは一九八一年から配備の始まったB型であることをエーリヒに説明した。

「だけどバリカドイの戦車はパット(注4)やチーフテンなんでしょう?」

「そうらしいね」

 副官が言わんとするところを、青みがかった漆黒の髪と碧眼(右目)の所有者はすぐに理解した。アルカにおけるフロントとはあくまでも娯楽作品としての所属分けで、装備等が参考元の国々に準じているだけ。しかし軍事支援団(MAF)という形ではあるが、ソ連フロントの勢力(タスクフォース・リガ)から派生したマーレブランケが米国フロントに味方し、一方純粋なソ連フロントのサークルである筈のバリカドイがどういう訳か西側兵器で武装しているのは捻れ現象以外の何物でもない。それに自分達は、例えるならば南アフリカ軍やイスラエル軍の元兵士が、それぞれアンゴラ軍とパレスチナ人のために戦っているような状態なのだ。

「それに、高性能な新型が配備されるのはありがたい話ですが、理由を考えると薄ら寒くなりますよ」

「それは——」

「結納品ってことじゃない?」

 エーリヒが言い終える前に、そう口走る人物が彼を抱き締める。

「——ッ」

 自分の背中で撓む豊満の感触と、鼻腔を突く甘い香りで、エーリヒは一体誰が抱き付いてきたのか即悟る。

「にしし」

 テウルギスト(降霊術師)とも呼称されるマーレブランケ——いや、アルカ最強のGROMノエル・フォルテンマイヤーだ。

「或いは嫁入り道具かな?」

 収まりのやや悪い金髪ショートカット、赤い瞳には爬虫類じみた縦スリットが走っている。また、素晴らしい豊満を備えている百八十センチの長身は、今日もM1ロー(注5)ではなく非番用の恰好……首にチョーカーを巻いて、リング留め式のビキニのすぐ上でブラウスの下部を結んだ、所謂スクールガールのそれ。腹部は大きく露出しており、その下方には短いチェック柄のスカートと、丸出しだけはやめてとエーリヒが懇願したが故のショートスパッツ。

「この人は婿養子でしょうよ……」

 普段通り呆れ声を発する副官など全く意に介さぬ様子で、ノエルはエーリヒの汗ばんだ右首筋——人間時代にはなかった、自分と同じ個体識別用バーコードを鼻先で撫でる。

「取っちゃいなよこんなの!」

「あっ!」

 間髪入れず、ノエルはエーリヒの眼帯の紐を解いてしまう。すると、ビッグ・マザーの意向で蘇る時、彼女達と同じ遺伝子を混ぜ込まれたせいで、こちらだけ縦スリットになっている赤い瞳が露出した。

「ねえエリー、九月二十四日(ダークホーム)の続きはいつしてくれるの?」

「いや……それは……」

 続く乳繰り合いを見て、いつも楽しそうですねえ……と副官は思う。恋人以上・夫婦未満……まだ人間だった頃は散々逢瀬を重ねた分際で、

『セックスとはそれ即ち、結婚に対する神からの祝福である』

 今はこの古臭い考えに固執しているエーリヒと、キス以上の進展を拒み続ける彼の童貞を如何にしてもう一度奪うか以外、この世界に対する関心をほぼ失ったノエルの煮え切らぬやり取りは、もう司令センターの風物詩となっている。

「整備はお任せください。私は忙しいので、これにて失礼します」

 副官は足元の工具箱を拾い上げると、九月二十二日(ダークホーム)同様の視線——呆れが多く含まれた、実に冷ややかなもの——をエーリヒに向けてから、今度はBMP‐2歩兵戦闘車の整備に向かう。司令センターの格納庫の中には他にも、ソ連本国でわざわざ新規生産されたZSU‐23‐4自走式高射機関砲や2S1自走榴弾砲がずらりと並んでいた。後者に至っては驚くべきことに、それ専用の誘導砲弾(クラスノポール)までしこたま積み上げられている。

「しかし気味が悪い……」

 先程エーリヒと話そうとした時は遮られてしまったが、自分達に対する異常な優遇について、副官はどこか薄ら寒いものを覚えずにはいられなかった。恐らくノエルとビッグ・マザーの関係に理由があるのだろうが、その真意まではどうも読めない。嬉しい一方、本国でさえ使っているかどうか定かではない新型兵器をさも当然のように供与されるのは、やはり困惑してしまうものである。

「まあ、一日以上先のことを考えても仕方ないか……」

 されど副官はそれ以上は考えるのをやめて、第二次世界大戦の後半、懲罰部隊送りとなったソ連兵に思いを馳せた。少なくとも優遇されている自分らは、あの兵士達のように己の身一つでトーチカに立ち向かうことはないだろう。

『考えるだけで気が狂いそうになることは考えないで済ます』

 それに当時、こんなことを言っていた奴もいたような気がする。だから副官は自分もそれに倣うことにして、今は手近な仕事を一つ一つ片付けることにした。


 注1 マーレブランケの外国人義勇兵は私物や各々調達した軍服を着ている。

 注2 ソ連フロントの南東に存在していたバグ達の拠点。

 注3 バグで構成された武装組織、通称『学級会』の本拠地。

 注4 米国製M48戦車の愛称。ジョージ・パットン将軍に由来している。

 注5 GROMが纏う特殊な戦闘スーツ。現在はこちらが主流となっている。


                  ◆


「あの女……やはり好きにはなれんな」

 ネクロスペース(死の宇宙)での気が重い対面を終えたマリアは、司令センターへの帰路に就いていた。彼女が乗る軍用車の前と後ろは、BTR‐60PB装甲兵員輸送車とM2重機関銃を積んだ日本製ピックアップトラックで守られている。

「だが勝利は揺るぎない」

 マリアは十五年前(暴力の王国)同様、アスパラガス——縦方向に突き立てられた、空挺攻撃阻止用の錆びた鉄道レールや、チェコのハリネズミ(対戦車障害物)等があちこちに見受けられる窓外を見ながら呟く。

「我々は、既に何度も勝っているのだ」

 実は今日ビッグ・マザーから突然呼び出される前の時点で、マーレブランケはバリカドイとの小規模な地上戦闘に何度も勝利していた。GROMの亡命騒ぎもあれば、蜂起を呼び掛ける短波放送もしばしば受信したことがあった。これから戦う相手の内情については、おおよその察しが付いている。

「猫の飼育状況も良くないと聞いている」

 また、アゴネシアにいた頃(アウェイクニング)グレン&グレンダ社がマーレブランケを討伐すべく大量のバグを空輸してきたのをそれで知ったように、マリアは今回も内通者から高精度かつ多くの情報を得ていた。それによれば、バリカドイに配備されているトムキャットこと、F‐14戦闘機は特に悲惨な状況にあるという。予備パーツの不足やメンテナンス要員の退去が原因で、飛べる数はどれだけ多く見積もっても八機が関の山らしい。しかもグレン&グレンダ社の人間達は撤収する時、言わば『主砲』であるフェニックス空対空ミサイルを金輪際使わせないよう破壊工作も行ったそうだ。恐らくは、機体と誘導弾の相互動作に必要な各種ソフトウェアを無力化したのだろう。

 勝てる。

 車列が司令センターに到着する頃には、マリアは改めて勝利を確信していた。

 だが戦争を始める前に、幾つかやっておくことがある……。


                  ◆


「今日も美人ですよ大佐!」

「どうも」

 司令センターに着いたマリアは、少年少女でもないのに無理矢理特待生扱いで登録されている外国人義勇兵達と挨拶を交わしながら進む。外部の人間、それもいい大人が学園大戦ヴァルキリーズに参戦することには賛否両論あるが、タスクフォース・リガだってソ連フロントに亡命したバグ達でその大部分が構成されていたのだから、今更な話だろうと彼女は思っていた。

『遂行できぬ任務はない』

『最強の者が勝利する』

『勝利の待つ場所。それが我々の居場所』

 さて付け焼き刃の文面で書かれたスローガンがあちこちに見受けられる施設を進んだマリアは、やがて地下のとある一室へ辿り着く。

 そこは様々な備品等を纏めておく倉庫だ。タスクフォース・リガ時代のそれを受け継ぐ、真紅の狼——リチャード・ブー(注1)主演のドラマに登場する、チェスの駒めいたそれ——が描かれた、マーレブランケの旗も当然保管してある。

 そんなかび臭い空間の最奥に、ダンボールが一つ。

 その前で立ち止まったマリアは腰を落とし、蓋を開けた。中に入っているのはバグとしてソ連フロントに逃げ込んだ144449879(ヴァルキリー)が、奇跡的存在として血みどろの内部抗争を勝ち抜き、その過程で多くの邂逅と決別を経験したことの副産物だ。

 まず最初に取り出されたのは、ハートのマークと『YES』の文字が描かれた枕であった。これは先代の日常を補佐するため、特別に製造された弟——ユーリ・パステルナークとの思い出の品だ。彼は現在、行方不明となっている。

 それを躊躇なく引き千切ったマリアは、次に一枚の写真を手に取る。そこにはかつての自分と弟、そしてプラチナブロンドの髪の少女が揃って笑っている姿があった。ノエルやサブラと並ぶ最高のGROMとして名高い、エレナ・ヴィレンスカヤである。彼女は先代に見出されて表舞台に現れたが、壮絶な愛憎劇の末に袂を分かち、引退した今は米国に住んでいる。

 マリアはこれもまた躊躇なく破り捨てて、残りは一つ一つ検めることすらせずダストシュートに放り込んだ。必死で心の幻肢痛と戦いながらも、その一方ではハイエナ宜しく同類を探そうとする輩はもういないのだ。

 ユーリとエレナについても、マリアは詮索する予定はない。それぞれの人生があるだろうし、何よりも今の自分には必要ないからだ。

 天国の僕よりも、地獄の支配者の方が優れている。

 一九六八年七月六日(暴力の王国)……内面世界における凄まじき戦いの果て、自分の奥底に潜む悪魔の喉笛を噛み千切ってその結論に辿り着いた自分には。

 だから、まだアルカにいるもう一人とも区切りを付けなければならない。

 クリスこと、クリスティーナ・ラスコワとも。


 注1 多くの西部劇に出演したアメリカ人俳優。


                  ◆


 グレン&グレンダ社直轄区域にある同組織の社員専用ジム。クリス——クリスティーナ・ラスコワがそこを訪れ、一九六八年六月十四日(暴力の王国)宜しくサンドバッグを叩く回数はここ最近、更に増えていた。

「わかってる! わかってるわよ!」

 よく鍛えられてはいるが、然程起伏のない上半身をタンクトップで覆っているクリスは、グレーの短いツインテールを揺らしながら拳を打ち続ける。紅茶色の瞳を持つ彼女が何度も口にする言葉と、その内側で渦巻くフラストレーションのベクトルは、これまた一九六八年六月十四日(暴力の王国)と同じ。

「わかってる……誰よりもわかってる!」

 十五年前(暴力の王国)から五体満足で生き残っている数少ないGROMのクリスは、タスクフォース・リガの崩壊後、あたかも人気を得たアマチュア作家が出版社と契約を結ぶかの如く、グレン&グレンダ社の社員として働く道を選択。M1ローブから黒いスーツに着替えた彼女を待っていたのは穏やかな余生ではなく上層部からの無茶振りだったが、それでもスマイル(注1)にいたダニ共の同類に成り下がる訳にはいかないと考えて努力してきた。その結果、今は主任という地位を得ている。

「どうして貴方は!」

 そんな彼女は十五年前(暴力の王国)、自分の上官・先輩・上級生と言えるマリアが、深刻で容易に解決できぬ問題を抱えつつも、自分以上の重責を平然とこなしている姿を目の当たりにして、それに対する強烈な尊敬の念から副官を務めたという過去も有している。もしかすると恋愛感情があったのかもしれない。

「ずっと待ってるのよ! 私は!」

 だが——いや、だからこそ、マリアが自分の前から突然いなくなってしまったことや最近になって蘇ったこと、更に復活後、一切自分に連絡してこないことについて複雑な感情を抱いていた。ずっとずっと、自分は朝起きてから夜寝るまで連絡を待っているのに。それなのに……それなのに……。

「えっ……?」

 だからクリスが今日も全く発散にならないストレス発散を済ませて更衣室へと戻り、ロッカーを開けた瞬間、彼女は硬直してしまった。

 手紙が入っていた。待ちに待った瞬間が突然訪れたのだ。

 長き最寒の冬が去り

 桜舞い散る春を経て

 初夏の暑さ残るとも

 実りの秋が来るように

 美しき花を咲かせましょう

 そこに記された内容——最早怪文書に近いが——は、一九六八年六月十四日(暴力の王国)と全く同じものだ。そして、記載されている電話番号と差出人の名前も間違いなくマリア・パステルナークのそれだった。

 ただ、同封されていた要約だけは改変されている。

『すまなかった』

 それを見た瞬間、クリスの唇は大きく震え始める。続いて目尻から大粒の涙が溢れ出るや否や、彼女は手紙を自分の胸に押し付けつつ、床に膝を突いた。

「貴方って人は……本当に……!」

 あの魔境の王はクリスにとって、やはり特別な存在だった。


 注1 グリャーズヌイ特別区のCエリアに存在していた、穏健派バグ達の居住区。


                  ◆


 あの時と同じだ。

 全ての予定をキャンセルしてマーレブランケの司令センターに赴いたクリスは扉が開いた瞬間、一九六八年六月十九日(暴力の王国)のデジャヴを感じる。違うのは、夕日に照らされる執務室タスクフォース・リガではなくマーレブランケの中枢部ということと、中で待つマリア・パステルナークは二代目であるということだ。

「よく来てくれた」

 一九六八年六月十九日(暴力の王国)と違い一人で待っていたマリアは、クリスがスーツ姿であることに驚きもせぬ様子だった。彼女は当時と同じ言葉を、当時よりも遥かに落ち着いた声色で響かせながら来訪者に近付いていく。

「ありがとう。急に呼び出してしまってすまない」

 続く言葉もあの時と全く同じだったが、ウェットティッシュによる手の洒掃(さいそう)は既に行われているようで、席を薦める動作も別人のように落ち着いたもの。

「そうだよね……」

 それらの一挙手一投足を見定めたクリスは、寂しさと安堵が混ざり合った声を漏らさずにはいられなかった。次は相手から、条件や作業時間が羅列されている分厚い書類が差し出されるだろう——副官として、一番近くから自分を補佐してほしいという言葉と共に。

「貴方と一緒に見たマーシャルアーツ(異種格闘技戦)、とっても楽しかった」

 残念ながら、ここからは一九六八年六月十九日(暴力の王国)の再現ではない。現在進行形の一九八三年十一月十九日(バリカドイ)だ。

「だけど貴方が変わったように、私も変わったんです」

 入室してからの短い時間でクリスは確信していた。

 今のマリアは一九六八年六月二十日(暴力の王国)のように、右の人差し指でそっと……涙を拭ってあげる必要はない。

 今のマリアは一九六八年六月二十日(暴力の王国)のように、私はエレナ・ヴィレンスカヤの代わりにはなれませんと言いながら、その両頬を包んであげる必要はない。

 今のマリアは一九六八年六月二十日(暴力の王国)のように、潤む瞳を見据えつつ、こちらの本心を澱みなく伝えてあげる必要はない。

「今のマリアさんに、私は必要ない……」

 一九六八年六月二十日(暴力の王国)のように、あえて大佐とは呼ばなかったクリスは、もう自分が近くにいることで、マリアの心に安らぎを与えることはできないと察していた。今の彼女には、かつての彼女のような不安定さが見受けられない。

「わかった」

 直後、引き留めも哀願もしてこないマリアを見て、自分が愛した人物は本当に死んだのだとクリスは察する。でも、不思議と悲しい気持ちにはならなかった。

「どうか自分の人生を生きてほしい。幸せを願っているよ」

 マリアはこうも言ったが、クリスの知っている彼女は、こんな風に言うような人間ではなかった。他人を気遣うどころか、いつも自分のことしか考えられない哀れな裸の王様だったのだから。

「貴方のこと、大好きでした」

 だからクリスはそう言ってマリアに背を向け、

「これからは、貴方のことを好きでいたいと思います」

 最後にそう付け加えてから執務室を後にした。

 さようなら——と心の中で言いながら。

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