80話 再開前
ウェルハンの試合妨害によりシャルレシカが殺害されかけたが、ルティーナ達とエリアルにより未遂に終わらせるのであった。
大会が混乱する中、運営部はノキア王が大会を中止にしたくない意向に答えたいと、選手のルティーナ達から許可を得て、そのまま準決勝から再会することとなった。
色々な思惑が入り混じりながら――。
ブランデァは観客に対して、事件についての詳細と選手事情を考慮した上で、観客に対して、この後の流れについて説明したのであった。
―― 第二回戦 第四試合 結果 ――
剣士(銀)エリアル=ストリング 不戦勝
占い師(銀):シャルレシカ=ブルムダール 不慮の事故により、「準決勝」敗戦扱いで棄権
―― 準決勝 組み合わせ ――
第1試合 職業無し(白):ルナリカ=リターナ 対 魔法使い(銀):サーミャ=キャステル
第2試合 剣士(銀)エリアル=ストリング 不戦勝
回復師見習い(銀):ロザリナ=ノザラ 不慮の事故により、「決勝」敗戦扱いで棄権
―― 決勝 組み合わせ ――
準決勝第1試合勝者 対 剣士(銀)エリアル=ストリング
準決勝以降の組み合わせについて、観客席からは大きな不満の声が溢れかえっていたが、突然、主賓席からノキア王が緊急演説をはじめたことにより静まりを取り戻した。
しかし、シャルレシカが闘技場を予想以上に破壊していたため、簡易復旧作業に1時間を要するのであった。
さすがに観客に申し訳ないと、選手3人を控室でなく闘技場付近で顔だしさせ椅子に座らせられた上で、ブランデァとの公開トークで場を和ませることにしたのであった。
「せっかくの試合が台無しになっちまったなぁ」
「まぁ、シャルレシカが無事だったから、ひとまずは良かった」
「しかし、ロザリナも出れなくなってしまうとはな」
「だがよぉ、2人とも上位戦の敗戦扱いだろ? 賞金と昇格の権利はもらえるってわけだ、これって……」
つまり、この時点で最低限でもルナリカ以外は全員『金』の冒険者への昇格が確定した。
さらには準決勝第1試合で2人のどちらが勝っても決勝戦進出……そして、エリアルを倒すことができれば夢の金貨1000枚が確定する。
その事をわかっていた馬琴であるが、こればっかりは、あまりうれしくない結末であった。
しばらくして、アンハルトの元へ大混乱の人混みをかき分けながらブライアンが尋ねてきた。
早速、アンハルトは挨拶をふまえて、サーミャに代わり彼に、2年前までヴァイスとサーミャと5人で『碧き閃光』を組んでいた経緯から語り始めた。
「そうなんですね。兄貴はあいつと一緒に行動していた……のか」
そこである任務で、2人が別行動になった時に、サーミャが罠に落ちてヴァイスが人質に取られ、それを救出しようとした彼女は失敗して、ヴァイスが命を落としたのだと。
その話を聞き、救出の時にやはり魔法を誤射して兄を殺したのではないかと言いかけたブライアンであったが、その状況をヴァイスの知人が知っているわけがないと、そして、それを知っている男こそ主犯のドグルスであると語る。
「……」
「ここにいるヘレンは1年前に仲間に加わったんだが、君に情報を吹き込んだドグルスによって、体内に魔石を埋め込まれてしまい、彼女もサーミャの動向を監視させる駒にされていたのさ」
「駒……ど、どういうことですか?」
するとヘレンは、ドグルスの人物像について語り始める。
喋り方や特徴などをブライアンに伝え、同一人物の可能性は高いことを認めさせた。
「……髪型までは身を衣につつんでわからなかったが、だが、ねちっこい声と体格は一致する」
「そいつは兄の知人と名のり、サーミャが兄を殺した事を俺に吹き込んだ……」
「確かにあの事件後、サーミャが失踪してしまった……真実味は増してしまうな」
「きっと、追跡者を仕立てたかったんだろう」
――あんたさ、私とヴァイスが付き合ってたの知らないわよね?――
――なぁブライアン、あたいの目の前で殺されたことは認める――
「(そういうことか、彼氏を殺された失望感で……失踪していたのか)」
「だけど何故、冒険者として戻って来のですかっ?」
アンハルトは、サーミャが戻って来る気になれた理由を語るにあたり、闘技場に居るルティーナを指さすのであった。
ブライアンは無職の冒険者に何ができると言いた気だったが、準決勝に上がってなおかつ、サーミャに勝つ気満々で楽しそうな顔を見て何か納得するのであった。
「――彼女のおかげで、サーミャはヴァイスの仇を討てたんだよ」
「兄の仇……(……そうかとってくれてたんだ)」
「できれば、質問をしてもらえると助かるんだが」
「俺からあれやこれや説明すると、変に嘘をついているみたいになるから嫌なんだ」
「そうですね……確かに、その考え方と配慮、好感が持てます」
「それに俺もこんな話を聞いてわからないほど馬鹿じゃないつもりです」
「ですが、最後に1つだけ、どうしても信じられないことが……」
「?」
ブライアンは、ズボラに見えるサーミャがどうしてもヴァイスと恋人同士だったことが納得できなかった。
そこにグルバスが意気揚々と今までの何かしらのうっぷんを晴らすかのように、サーミャとヴァイスが付き合った経緯をブライアンに語り始めた。
その話に、ブライアンは兄がそういう女性に弱いことを知っていたため納得がいくのであった。
「そうでしたか。皆さんのおかげでモヤモヤが晴れました」
「私の勘違いのせいで、皆さんにまで迷惑をかけてしまい申し訳ありませんでした」
「いやいや仕方ないさ、謝るならサーミャにするんだよ」
「はい」
しかしアンハルトは何故、ヴァイスは弟がいることを黙っていた理由が分からないかとブライアンに質問した。
するとブライアンは、6年前にヴァイスが17歳の時に冒険者になりたいと父親と大喧嘩し家から勘当されたらしく、冒険者になったら、家系のことを一切口外することを禁止されていたことを聞いた。
それを聞いたアンハルトは納得するも、ブライアンも勘当されたのではないかと心配をするのであった。
「はい、兄の仇を討つため俺も大喧嘩して勘当されてしまいまたが、俺は兄と違って家系の事なんてどうでもいいので話したんです」
「でも目標がなくなっちゃったんで、冒険者も面白そうだしソロでがんばってみようかと……」
「サーミャ相手にその剣筋と剣技はなかなかだったぜ、もったいねぇ」
ブライアンは、結局サーミャに負けたので意味はないと一蹴するも、ヘレンから彼女は魔法使いとして『白金』クラスの実力者だと聞かされ、確かに無詠唱や複数魔法同時詠唱を平然と放つ彼女は相手が悪かったと納得するのであった。
「そうだ、もし君が嫌でなければ、『碧き閃光』に是非入ってほしいんだが……だめかな?」
「……」
「あぁ、いきなりですまなかった」
「いえいえ、もうそろそろ試合が再開ですかね? 姉さんの戦いを見させてもらいながら考えます」
「そうか……」
「(しかしまぁ、サーミャの事、姉さんって言ったなコイツ)」
「(もう大丈夫そうだな……心置きなく戦ってくれサーミャ)」
そして闘技場の整備がやっと終わり、準決勝開始の宣言がされ、ルティーナとサーミャは笑顔で向き合いながら壇上に登る。
今回は特例で、エリアルも控室でなく闘技場の片隅で椅子に座り観戦する方針となった。
「ではっ、試合開始っ!」




