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79話 想定外

 2回戦第4試合は、シャルレシカと魔法剣士エリアルとの戦いとなった。

シャルレシカは何としても皆の拠点建築の目標の為に必死に魔法攻撃で戦い、エリアルの操る魔剣にも負けない闘いをしていた。

そして、彼女は索敵能力を有効に活用し、岩壁だらけにした闘技場で試合を優位に進めエリアルに決定打を与え、勝利を確信した瞬間――。

その戦いに水を刺すかのように、ウェハルンが放つ矢が非常にもシャルレシカの胸を貫き、会場は大混乱となってしまった。

 倒れたシャルレシカに対して容赦なく矢を打ち続けるウェハルン。

ロザリナは『シャイン・ウォール』を展開し彼女を守り、サーミャは『ライトニング・アロー』を矢の数以上に撃ち放ち迎撃するのであった。

そしてルティーナは、シャルレシカの傷口周辺に【(いやし)】を描き、矢を素早く抜くのであった。


「これで治療できるわっ、リーナっ」


ロザリナが再生魔法でシャルレシカを包み込むと、傷口から噴き出している出血が止まり、やがて傷口が塞がりはじめた。


「なんとかなりそう? リーナ?」


「えぇ、でも矢が貫通してるし、内臓もかなり痛めているかもしれないから、魔力全開でいきますっ!」


光の中でシャルレシカは苦痛でゆがんでいた顔が、安堵な顔に代わりつつあった。


その頃には、時計台に居たウェルハンは護衛団に取り押さえられ、救護班がシャルレシカの元に駆け付けた頃には、ロザリナは力尽きシャルレシカに覆いかぶさるように倒れたのであった。

ルティーナとサーミャとエリアルは、その様子を見て安心するのであった。



「すごいな……ロザリナさん、本当に『銀』なのかい?」


「リーナは興奮状態なら『白金』ぐらいの力はもってるわよ」

「でも、シャルをかばってくれて本当にありがとうございました」


「みんなは仲間みたいだね? 僕はギルドにまだ3回ぐらいしか行ったことがないからあまり知らないんだ」


「そうなんですね、私たちは4人で『零の運命』って言うパーティーなんですよ」


「そうか……仲間っていいですね。でも、せっかくの大会につまらない水を差してくれたものだ……」


「そうですね」

(なんだ、この子、めっちゃいいやつじゃん)



シャルレシカが医務室に運ばれた後も、観客席でも騒ぎが収まらず混乱が続いていた。

そんな中、ブランデァが闘技場に立ち、運営本部からの指示があるまで待つようにアナウンスをするのであった。



「シャルお姉ちゃん……大丈夫かな~ぐすっ」


「ロザリナが治療したから、絶対大丈夫よっ」


「う、うんっ」




その大混乱の中、ウェハルンが連行された時計台の影からスレイナが様子を覗っていた。


「(あいつらが『零の運命』か……ふふ、今日のはあいさつ代わりさ)」

「(暗部が動き回る前に、この混乱に乗じるとするか……)」


そして彼女は、城内が混乱しているのをいいことに手薄の城内に潜入しドグルスが何をしていたのかを調べるために、消えるのであった。



一方、護衛団に確保されたウェハルンは急に苦しみだし泡を吹きながら気を失うのであった。


「おいっ! ウェルハンっ! どうしたっ! おいっ!」


「こいつの首元……なんだこの小さな穴は?」


「ん、何かに噛まれたのか?」


護衛団がそうこうしているうちに、ウェハルンの首の穴から急に黄色い液体が吹き出しはじめ、しおれていき死亡してしまったのであった。


「な、こいつっ! なにがどうなっている?」



――その頃、運営本部では今後について緊急会議が行われていた。


「会議中失礼します」


「どうしたっ血相をかいてっ! ウェルハンが何か自白したのかっ」


「いいえ、ギルド長……それが……」


兵士の1人がウェハルンが不可思議な状況で死亡した状況をブランデァに説明した。

さすがに、勝手にしおれて死んだ状況に混乱しつつも、襲撃した理由がわからずじまいになってしまい、シャルレシカが戦闘中に騒いでいた不正の件でもめたことを懸念していた。


「少し、邪魔をしてよいかな?」


そこへ、ノキア王が会議に割り込んできたのであった。

ノキア王はこの事態について、楽しみに集まってくれた観客に申し訳ないと、シャルレシカの安否次第では大会を続けたいと意思を伝えた。

ブランデァ達、大会運営は出来る限り、王の願いを叶えたいと前向きに検討を進めることにした。


「(くそっ想定外だ、こんな形で中止にされたらルナリカとの接触する機会が無くなるではないかっ)」

「(しかし、シャルレシカから矢を抜くときに確かに【(いやし)】という字が見えた。手で描いてたように見えた……間違いないはずなんだ)」

「ブランデァよ、今後あのような冒険者を出さないように十分注意してくれたまえ」


ブランデァはノキア王に謝罪し、今後、このような冒険者が出ないようにする方針をまとめ大会後に報告すると約束した。

するとノキア王は、不気味な笑みを浮かべていた。


「そうだな、今後のギルドの信頼と存続にかかるからな」

「後日、個別に王室に来てもらうぞ(ふふふ、これはこれで駒が増えるから良しとするか……)」


「ではっ、私は一旦失礼いたしますっ」



そして、ブランデァはノキア王の意図を伝えるため闘技場に再び戻り、待っている3人にこの後の流れについて説明を始めた。



「そうですか……シャルが無事だったら、大会継続ですね」


「もともと死者が出る可能性のある大会でしたから、文句はないですが……」


「そんなことより、ウェルハンの野郎が死んだだってぇ? 自害でもしたのかよっ!」


「(落ち着いてミヤ、ついに組織が動きだしたのかもしれないわ……)」


「(くそっ……よりによってシャルを狙いやがって!)」


「そこでっあまり気は進まないかもしれないがっ、試合継続する前提でっ、これからの試合について合意をとらせてもらうがいいかなっ?」


「待ってくれ! 僕の試合はどうなるんですか?」


「確かにエリアルさんが追い詰められてはいましたがっ、勝敗は決していませんっ」

「よって、シャルレシカさんがこうなってしまった以上っ、あなたは不戦勝になりますっ」


「くっ! (……僕は負けていたのに)」


不満だらけのエリアルであったが、ノキア王は特例でシャルレシカは準決勝で敗退した扱いにし、賞品は同等のものを与えるという話にしたのであった。



――そこへ、介護室から連絡をうけた運営の人間が闘技場に現れた。


「ブランデァさんっ、シャルレシカさんの意識が戻りましたっ!」


「さすがだぜリーナっ」


「よかったですね、みなさん」


「ありがとうエリアルさん」



シャルレシカの無事が確認できたことで、準決勝から予定通りに再会するということになった。

そしてルティーナとサーミャはお互い見つめあい、笑いがこぼれそうな顔であったが、そこへ――。


「……あのすみません、もう一つご報告が……ロザリナさ――」


「リーナがどうかしたのっ?」


「魔力を全て使い果たされてしまわれたようで、次の試合を棄権させてくれないかと打診が……」


ロザリナはシャルレシカの治療に加え、ヘレンの治療やワイズとの戦いで魔力をかなり浪費していたのであった。

結果、エリアルは準決勝まで不戦勝になってしまうことが確定してしまい不満気に下にうつむくのであった。



(エリアルさん……)


「気にしないでください。リーナ達に悔いはないと思います」

「だから、私かミヤの勝った方が、貴方のうっぷんを晴らしてみせんますから元気を出してください」


「あ、ありがとう……ルナリカさん」

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