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77話 二回戦 ~其ノ参~

 ついに2回戦第2試合、サーミャは自分に対して兄ヴァイスの仇だと復讐心に燃えるブライアンと対峙する。

戦いの会話の中で、彼に兄を殺したと吹き込んだのがドグルスという事が分かったのであった。

サーミャはブライアンの剣術で劣勢になるも、彼の心理を付き動揺を誘うことで形勢を逆転させ勝利を納めるのであった。



 ブライアンは、サーミャには殺意がないことに疑問を感じ、冷静に話をきくことにしたのであった。


「では、勝者のサーミャさんっ、一言お願いしますっ!」



「おぃ~っ! アンハルトぉ~っ! こいつに事情を説明してやってくれよ~っ!」

「あたいは、これからルナと大事な試合があるからさっ!」



「(さっきから、伝言の場になってきてるなっ……)ありがとうございましたっ、では第3試合に入りますっ」



そしてサーミャは、ブライアンに目の前でヴァイスが殺されたことは認め、なぜこのようなことになったのかを観覧席にいるアンハルト達を指さし説明を受けるように伝えた。

今から口裏を合わせる時間もない事にブライアンはサーミャが言っていることが正しいのだろうと薄々感づいていた。


「――それでも許せないなら……そん時だ」


「……準決勝、負けんなよ……」


「あぁ。ありがとう」



 そして、第3試合が始まり、ロザリナと傀儡子ワイズが闘技場に登り、いきなり彼女は喰いかかる。


「さぁて、今度は私の復讐の時間だよっ」

「ワイズっ! よくもヘレンを滅多打ちにしてくれましたね! 仇討ちよっ」




「もぉ~ロザリナぁ~勝手に殺さないでよぉ~」


「あっ、ヘレンお姉ちゃん……もう体は大丈夫なんですか?」


ヘレンはロザリナのおかげで外傷は綺麗に治っていたが、出血が酷かった為シェシカが肩を貸してくれないと歩けない状態ではあった。

そして、試合前に大量の魔力を無駄に使わせたと後悔していたが、シェシカに自分とは違って彼女の魔力はその程度で枯渇しないとなだめるのであった。


そしてアンハルトはヘレンに、ブライアンがここに来たら一緒にサーミャの無実を証明するためにドグルスの事を話してほしいと伝え、ひとまずは皆でロザリナを応援することにした。



「さぁて、こちらも険悪な様相ですがっ、試合……開始っ」



 ワイズは先制攻撃で両手が剣になった1体の人形を操り、両脇からロザリナに襲い掛からせた。

彼女は怒りによって高度な身体強化が自身にかかっており、剣筋すらも簡単に見極め人形を軽々と場外に蹴り飛ばした。


「こりゃ驚いた、場外に蹴り飛ばすか」


「こんなちんたらした動きたいしたことないわ! 2体なら別だけど、1体はヘレンが壊してくれてたからね」

「とどのつまり、あの人形は破壊しなけりゃいいんでしょ?」



「「「「おおおおっ! あの回復師のお姉ちゃん、すげ~身のこなしだぞっ!」」」」



ワイズは、破壊すればヘレンのようになることを疑うのは当然と予想はしていた。

場外から不気味に登ってくる人形にはお腹や胸にロザリナの蹴りによる風穴があいていたが、そこから2体の小さな人形が飛び出し、計3体の人形がロザリナを取り囲んだ。


剣をふりかざす人形は最初と同じような攻撃をしかけ、追加の2体人形は武器は持っていないが素早い身のこなしでロザリナに襲い掛かり、彼女はワイズには近づけず回避をつづけていた。


「どうした? さすがにあの女みたいに何かされるのを警戒しているのかい?」


「そうね、小さいのが邪魔ね。殴ってもあったらない……簡単に場外に放りせないわね」

「どういうからくりか解らないけど、人形を壊したら貧血みたいにされるんでしょ? 彼女から聞いたわ!」


ロザリナは出血は自己治癒では治せないため、とにかく人形を破壊しないように場外に放り出すことだけを考えていた。


「(そうやって人形に集中してろ)」

「そういえば、おまえ、ヘレンの仇とか言ってるが、それはそのまま返すぜ」

「俺の妻が世話になったからな」


「妻?」


1回戦でロザリナが戦った調香師はワイズの妻であった。

確かに同じ名前であったことを思い出し、自分はヘレンみたいな仕打ちはしていないと真っ向から否定しながら、彼女は剣を振りかざす人形の腕を掴み、再び場外に放りなげるのであった。


「人形を壊せず、あなたに近づいてボコボコにすれば――」


その時、ロザリナは急に左腕の自由が奪われる。しかも、自動治癒もされないことに状態異常ではないと動揺するのであった。


「どうしたのかな? そんな腕で3体を相手にできるのかい?」


ロザリナは追い込まれながらも、場外から戻ろうとしいている人形を警戒しながら、打撃しかない周りを飛び回る2体の人形を無視し、ワイズに特攻をしかけることにしたが――。

今度は、彼女は右足がつったかのように転倒してしまう。


「ふふ、あと一歩届かなかったな」

「お前は人形を壊すと動けなくされると警戒してくるのは織り込み済みだったぜ」


ロザリナが場外の人形を見ると動きはとまっていた。

そして動かない腕や足をよく見ると、透明な『糸』と『蚊』が等間隔でくっ付いていたのであった。


ワイズは大量の蚊を闇魔法『ダーク・マニピュレート』で操り、『ダーク・インビジブル――対象物の透明化――』で蚊の姿と、切れない糸を見えなくして、人形を自在に操っていたのでった。

ヘレンが壊した人形の体内には吸血用の『蚊』を大量に保有させていて、ヘレンはそれに吸血されて貧血になっていたのであった。


「お前が相手していた人形は、小さい人形が2体はいっていただけなんだがな。警戒しすぎたな。変に意識を割いてくれたおかげで――」


「(くそっ糸が巻き付いて取れない……この蚊……そうか操る対象が小ければ小さいほどと大量に操作できるってルナが言ってた……でも、こんな使い方が)」


「これで終わりにしてやるっ」


動けなくなったロザリナに、2体の小さな人形が飛びつきしがみついた。

その瞬間、人形が突然爆発する――。

場内からは歓声と悲鳴が入り混じった声が交錯していた。



「いやゃ~ロザリナぁあ~~っ!」


「ロザリナお姉ちゃん~っ!」



「心配するな、死なない程度に火薬は調整してやったから戦闘不能ってとこだぜ」

「ぼけーっとしてねぇで、勝どきをあげてくれよっギルドちょ――いや、主審」


「――まだ試合は終わってないぞ、ワイズっ」


「!」


ロザリナはヘレンの事で予想以上に魔力が高まっていたおかげで、爆発の瞬間に身を包む強度な『シャイン・ウォール』が展開さていた。

爆破が弱めだった為、大事には至らず身を守ることができたのであった。


「ふぅ~っ、おかげで絡んでた糸も切れたみたい……それに自動治癒でこの程度の火傷はすぐ治るわ」

「これで、あなたを守るものはなくなった――わよっ」


ロザリナは一瞬で、呆然とするワイズ眼前に飛び込み、怒りのまま渾身の拳を顔にぶち込み場外にぶっ飛ばした。

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