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71話 一回戦 ~其ノ弐~

 『武闘会』の幕が切って落とされた。

1回戦第1試合はルティーナの出番であったが、いきなりの不戦勝で2回戦に進むことが出来た。

そしてその2回戦での対戦相手となる第2試合では、罠師が不可思議な技で勝利を納めていた。

会場では興奮冷めあらぬ中、第3試合が始まろうとしていた。


『銀の剣士』ブライアン=クレッサ

挿絵(By みてみん)


 予選第2試合が終了し、救護班が駆け付け負傷した武闘家ヘルディンを介護室へ搬送した。

 

「では、本日初めての戦いの勝者のドルントさんっ、一言お願いしますっ――」



「えぇ~何よあれっ! 私は不戦勝だったから、とっとと追い帰えらされたってこと?」


「一言いいたかったのかい?」


サーミャは、罠師の闘いを見てあれは魔法じゃないく、どちらかといえばルティーナの攻撃に似ていると語った。

逃げ回るだけで爆発できることは、例えば手裏剣に【(ばく)】を描いてばらまきながら時間差で爆発させるのであればできるだろうと。


(小窓から見えた様子だとなんとも言えないなぁ……でも、何かを撒いていたようにも見えたね)


(そういうえばキラっと一瞬見えたような……それなら考えはあってるけど)


(俺みたいに意識的に起爆しないと、自由にできないだろう?)



罠師ドルントの勝者インタビューが終わり、偶数試合の勝者になるため東門へ移動し待機するのであった。


「(俺はなんてくじ運がいいんだぁ、これで次の相手は無職の小娘……くくくっ、これで準決勝確定……金貨100枚に手が届いたな)」



続いて、第3試合の抽選が行われ、まずは西門1番が選ばれた。

サーミャは、予選の時から自分にガンを飛ばしていた男だと注目した。



「俺は、ブライアン=クレッサ 銀の剣士だっ」



「え! い、今、あいつ、く、クレッサって?」


「どうしたのミヤ?」


「ヴァ、ヴァイスの苗字もクレッサなんだよ」


「えっ?」



一方、観客席でも――。


「おぃおぃアンハルト、あいつクレッサっつたよな? 前からギルドに居たか?」


「いや初めて見る顔だな」


「おぉアンハルトじゃないか?」


そこへ現れたのは、ルティーナが参加していると聞きつけ応援にかけつけた鑑定士オリハーデの姿であった。

都合がいいとアンハルトは、ブライアンの冒険者登録の経緯を確認した。

彼は、予選会が始まる直前に冒険者登録にやって来た。そして剣士としての実力は申し分なかった結果であったため『銀』で登録したという。


「それで、誰も知らなかったのかぁ」

「(予選前に登録していきなり? そもそもヴァイスに兄弟が居たなんて聞いていない? 親戚か?)」



そして、東門からは4番『銀の魔法使い』が闘技場に登り、戦いの幕が切って落とされた。

魔法使いは距離を開けるため、風魔法で足元を狙って攻撃を始めたが、ブライアンは軽々と魔法を避け、距離を詰めて迫るのであった。


「ちっ、致命傷になるから高度な魔法が使えないのは不利だな……だが、あいつもむやみに斬りつけられねぇだろ?」


しかし想定は甘かった。ブライアンは盾で魔法を軽やかに弾きながら、容赦なく剣で切りつけてきたのであった。


「っぶっねぇ~っ! お前、殺すきかぁ~っ!」


「あ、なんだぁ? あんた、戦いってのは殺すか? 殺されるか? だろ?」

「俺の目的の為に、あんた……殺すよっ」


「ひぃぃ~っ! こ、コイツっイカれてやがるっ!」


ブライアンは容赦なく剣を振り回すが致命傷にはならず、魔法使いの法衣を切り刻んで恐怖だけを与えていた。


「さぁさぁ、どうするんだ、この距離じゃ詠唱も間に合わないだろ? 勝ち目はねぇぞ」


魔法使いは覚悟を決めた。

ブライアンの剣を自分の腕を犠牲にして封じ込め、直接魔法をぶち込むとという作戦に出ようとした矢先、彼に破れた衣装が足にからまり転倒してしまった。

その隙を見逃さずブライアンは魔法使いの顔の前に剣を突き立てたのであった。


「さぁ、どうする? 今なら無傷ですむぞ」


「ま、参りましたっ」



「おぉ~っとバイルツの降参によりっ、第3試合勝者ブライアン=クレッサっ!」



「「「「「「おおおぉ~っ!」」」」」」



「さて、勝者のブライアンさんっ、一言お願いしますっ」


「魔法使いごとき敵ではないっ! ただ切り刻むのみっ!」



まるでサーミャに向けた宣戦布告に思えるコメントを残し、彼は西門に戻って来た。


「おぃあんたっ! なかなか強ぇじゃねぇか……それより魔法使いに怨みでもあんのかい?」


「ふんっ」


「無視かよ、ところであんた、ヴァイス=クレッサって知ってるかい?」


「ふんっ、さすがに苗字で気づいたか?」

「おまえは絶対殺すからなぁ! 反則負けになってもっな! じゃぁなっ」


「おいっちょっと! 待てよっ! 話はまだ――」


すると無常にも第4試合で、サーミャの西4番がコールされるのであった。


「くっそ――あたいじゃねぇ~かっ! 都合がいい、勝って2回戦で直接聞き出してやるっ!」



「あたいは、サーミャ=キャスティルっ 元金の魔法使いだ~っ」



そして、東門からは7番『銀の剣士』が闘技場に登り、皮肉にも逆の組み合わせの戦いの幕が切って落とされた。


「元、金って言ってたが、降格するほど腕が腐ってんだろ? 杖すら持ってねぇじゃねか」


「残念だったなぁ、貧乏くじを引いたのはあんただよっ。あんたには悪いけど、次の対戦相手に用があるから、負けてもらうよっ」


「生意気なっ」


サーミャは、突進してくる詰め寄られる前に『フレイム・ボム』を相手の足元に放ち、後方に吹き飛ばし間合いを空けるのであった。

そしてすかさず、一瞬で『ライトニング・アロー』を広範囲に複数展開し放つのであった。


「げっ、この女、何者だっ! 詰め寄る時間がねぇっ、無詠唱で魔法を乱発しやがるだとっ? 隙がねぇ~っ……ぎゃ~っ!」


剣士はそのまま電撃につつまれ気絶するのであった。


「ライゲルを戦闘不能とみなしっ、第4試合勝者サーミャ=キャスティルっ!」



「「「「「「「「瞬殺かよ~っ」」」」」」」」



「では、勝者のサーミャさんっ、一言お願いしますっ」


「剣士なんざ敵じゃねぇっ! ただぶっ潰すのみっ!」


ブライアンへの宣戦布告返しを見事に決めるサーミャであった。


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