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70話 一回戦 ~其ノ壱~

 ルティーナとサーミャは『生国祭』の2日目に、国外からの行商人の露店を周り情報収集をしていた。

2人は最初に訪問した露店で、『痣』をこめかみに刻んでいるという女性の話しを聞きつけたがそれ以上の詳しいことはわからなかった。

しかし、国外でまた何か企んでいるのではないかと馬琴(まこと)は睨んでいた。

――そして『武闘会』本戦の当日を迎えた。

 空には花火が盛大に打ちあがり武闘大会の幕が上がった。

そして闘技場はほぼ満員で大盛り上がり中、国王の挨拶が始まるのであった。

そんな中、本線参加者は各門の控え部屋に8人づつ集まり、試合開始を待ちわびていた。


「うちらはあくまでも1回戦目の対戦相手はわからないって仕組みか」


「みなさま、ようこそ。私は西門担当のギルド受付レミーナ=オズールと申します。よろしくお願いいたします」

「冒険者の皆様、国王の挨拶が終わりましたら、すぐに1回戦第1試合を開始いたします」


レミーナから1回戦目の簡単な説明が始まった。


・予選通過の時にもらった札の番号を元に、各門で1人づつ抽選された番号同士で対戦を行う

・呼ばれた選手は、闘技場に上り、名前と職業の雄たけびを上げながら入場する事。自己紹介は自由とする

・各偶数回目の試合での勝者は2回戦目以降の都合上、東門に移動する

 つまり、1回戦第2試合、4試合……の勝者は東門、以外の試合は、西門での待機となる

・他の冒険者の対決中はこの小窓から覗く事が出来き、2回戦以降の相手の情報収集は自由に行ってもよい

 これは、観客に本戦の参加者を隠すための処置である


(ルールはわかったけど、雄たけびを上げながら登場するって……何それっ、超はずかしんですけど)


「私からの説明は以上となります」

「そろそろ挨拶が終わりますので、皆さんのご武運を祈ります」



 国王の挨拶が終わると、闘技場に1人の男が登る。


「さぁ~皆さん、お待たせしましたぁ~! 私め、ギルド長のブランデァ=イーグランと申しますっ!」

「進行及び主審をさせていただきますっ。よろしくお願いいたしますっ!」


(え、あの人がギルド長なの? へんな口調だなぁ)


「さぁて、まずは第1回戦第1試合っ! 各門の予選通過番号の抽選をしますっ!」


(……超ノリノリだなぁ)


そしてブランデァは、西門の箱から番号が描かれた玉を取り出だした。


「西門8番っ! 闘技場へっ!」


「!」


「ぷっ、る、ルナ、いきなりあんたよっ」



恥ずかしがるルティーナをけしかけるサーミャ、そして観客からは選手が出てこないとだんだん騒がしくなってきた。


「ほらほら早く行ってきなよ、失格になっちまうぜルナ」


(え~、『名乗り』ってなんて言えばいいのよぉ~、マコトぉ~助けて――)



そして、もじもじしながらルティーナは西門から登場する。

すると観客からは一斉に――。


「「「「「おいおいっ! なんだなんだぁ~ 子供じゃねぇ~かっ」」」」」



(もぉぉ~っ全員でガキ扱いしてぇ~っ! 度肝を抜いてやるんだからぁ~)


「わ、私はっ! ルナリカ=リターナっ!」

「こ、これでも19歳なんだからねっ! 職業は無しっ! 白の冒険者っ! 文句ある?」

「なめてかかると痛い目を見るんだからっ! 私の無双を止められるものならっ! 止めてみなさいっ!」



「「ぷっ、決め顔で言ってるよ……腹痛てぇ~」」


ルティーナは予想していた。裏でサーミャとレミーナが腹を抱えて爆笑しているに違いないと。

それだけではなく、観客は観客で彼女のことを痛い目で見ながら笑いをこらえていた。


(ぷっ、よ、よくやったルナ)


(マコトも……あんたも、しばくっ)



「「「「おいおいっ、職業無しで白って! 一瞬で止められっぞっ」」」」


「うるさ~っうるさいっうるさい~っ! ルナお姉ちゃんを馬鹿にするな~っ! お姉ちゃんは超強いんだからねっ!」


(カルラちゃん、ありがと)



「(あれが……まさかあんな幼女とは)」

「(誉美(ともみ)も取り憑けんだな。最悪、石を取り出せなくても、19歳なら問題ないか……)」



 ――そのころ、東門では。

西門の抽選結果が、職業無しの白の冒険者ということが判明し、自分の番号を引いてくれと願う冒険者が大半であった。

しかし、1人の女性剣士はそんな冒険者達を冷たい目線で傍観していた。


そして、ブランデァが東門の箱から玉を取り出した。


「東門8番っ! 闘技場へっ!」



「……」



周りからはうらやましいと誰の事かを見回していたが、対戦相手の顔色は急変した。


「おいブロンダルっ、8番ってお前じゃないかよ? お前、いきなりツイてるじゃないかぁ~、早く出ろよっ」


そう、ルティーナとロザリナが冒険者登録初日に来ていたのを馬鹿にしてぶちのめされた、肉団子こと新人いじめで有名なブロンダルであった。


「どうした? 顔色が悪いぞっ?」


「(なんであいつなんだよ)……じ、持病がぁ~――」


「あ、逃げやがった……もったいねぇ~病気じゃしょうがないか~」



結果、彼はルティーナとのトラウマで恥をかくぐらいなら仮病で棄権したほうがいいと判断した。

そして、ブランデァからは彼が体調不良で棄権したとの報告をするのであった。

つまり――。


「ルナリカ=リターナっ、1回戦不戦勝で通過となりますっ」


「「「「「「なんだよっ、ツイてるじゃねぇか嬢ちゃんっ! 戦わずに金貨50枚かよっ」」」」」」



湧き上がる観客をよそに、ルティーナはただただ恥ずかしい思いをしただけではないかと試合に勝っても戦いに負けた気分を味わってしまいながら西門に戻っていくのであった。



「ぷっ、おつかれルナっ、手の内ばらざずに済んだじゃん」

「しかも、相手はブロンダルだったなんて、こりゃウケるわ! 絶対、仮病だぜ」


「え、ブロンダル?って、あの肉団子? 私がひき肉にしてやりたかったです」


(あはは)



「さぁて、第1試合から想定外の結果になってしまいましたが、気を取り直して第2試合を始めますっ」


続けてブランデァは次の抽選を行った。

西門7番『銀の武闘家』と東門6番『銀の罠師』の組み合わせが決まった。

それぞれ自己紹介を終え、戦いが始まる。


「ここで、勝ったほうが私の対戦相手ってことね。手の内を見ておかなきゃね」

「でも、罠師っていう職業があるんだねぇ」


「そうだな、罠を張って魔物と戦うとか、意外とハッタリや騙しが得意かな」


「へぇ~、でも今から戦うのに罠を仕掛ける暇なんてないよねぇ~」

「これは、そんな余裕も与えられない、武闘家の方が有利じゃないの?」


そして戦いが始まり、序盤は予想通り、武闘家の攻撃から逃げ回るしかなかった罠師であったが虎視眈々と何かを狙っていた。

しばらくすると闘技場のあちこちで突然爆発をおこり、それに巻き込まれた武闘家は闘技場に倒れこむのであった。


「ヘルディンを戦闘不能とみなしっ、第2試合勝者ドルント=ブレバッハっ!」



「「「「「「「「おおおお~っ」」」」」」」」


(1分ほどでケリがついちゃったよ)


(罠なんていつ? ……勝手に爆発が?)

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