62話 闇ノ幕切
ルティーナは空を飛ぶデルグーイになったゲレンガに手も足もでなかったが、シャルレシカとの連携でなんとか勝利を納めることができた。
ルティーナがあの方と呼ばれる黒幕と同種だとゲレンガに言われたが、肝心な話しを聴きだすことも出来ずにゲレンガは息絶えるのであった。
馬琴はゲレンガの攻撃をいかにかわして打撃を与えるかしか考えていなかったため、結果、落下による地面激突で即死という形で戦いの幕が降りてしまった。
やがて毒雨は止み、そこにはほとんど原型をとどめていないデグルーイとゲレンガが半分混じったままの状態で死体が転がっていた。
(なんとか勝ったねマコト……)
(ルナとシャルのお陰たよ。でも、肝心な事は全く聞き出せなかった)
(でも、私、人を殺してしま――)
(いいや違うよ、もうあいつは魔物だった。人間を捨てた悪魔だよ。殺したんじゃないっ退治したんだっ!)
(あのまま放置していたら、もっと被害が出ていたと思う。お前はそれを止めたんだっ!)
(そもそも直接殺傷はしてはいないんだから、ルナが心病む事はないんだよ)
(それは俺のせいだ……悔いるなら指示を出した俺を恨めばいい)
(ごめんなさいっ、恨みなんかしないわよっ)
(これでも、すごく感謝してるのよ。私1人じゃ両親を助けることなんてできない。でもマコトが助けてやるって言ってくれた時すごく心強かった)
(これからも、こういう事態はあるしねっ我慢するよっ)
ルティーナを気遣う馬琴は、反省は後回しにさせ『ヒーリング・ストーン』を使わせひっかき傷を治療させるのであった。
治療しながらシャルレシカを探し見つけ出すが、彼女は魔力を使い果たして倒れていた。
だが、満面の笑みを浮かべ気持ちよさそうに寝ていたのであった。
(なぜに笑顔? まぁ、今回は大活躍だったもんね、帰ったら肉食べさせてあげなきゃ)
(その前に、奴の死体を火葬しよう)
(?)
ルティーナは、ゲレンガが魔物になった事実を隠すために、毒雨で枯れてしまった木々をまとめて地面に【炎】を描き広げで焼き払い、すぐに【水】を描き広げ消化するのであった。
そして、眠っているシャルレシカと『エクソシズム・ケーン』を拾い、夜が明ける前にエレヴァルクの館まで戻るのであった。
「「お~いっルナっ!」」
「ミヤっ~! リーナっ~!」
3人は親指を立て合いながら、お互いの勝利を称えあったのであった。
「――そうなのか、ゲレンガは魔物に……」
「あいつは領主に金を横領させて、その代わりに魔物化する薬を製造していたみたい」
「だからリーナ……お父さんの件、私があいつを……生きたまま連れて帰れなくてごめんなさい」
「ううん、いいのよ。ルナじゃなかったら倒せなかったと思う」
「みんなに出会えたから、真実にもたどり着けたし、魔法も使えなければ父さんにもう一度話す事も出来なかったんだから」
「私は後悔してないわ……本当にありが――」
「ちょっと待って、感謝するなら今回の殊勲者の眠り姫が起きてからにしてね」
「「あははは」」
「で、エレヴァルクはどうなったの?」
「あぁ、あの後、聖女ロザリナ様の手荒い導きで、国の警備隊に自首して連れて行かれたよ」
「もぉ~ミヤったらぁ~聖女ってやめてくださいよ」
サーミャは警備隊に自分たちはトレンシリア王国のギルドの冒険者であることを説明した上で、今回の件について夕方にブクレイン王国の警備所に出頭する調整をした。
「おぉ、さすが大人の対応~。私も寝たかったから助かるよ」
「「あははは」」
「あっそうだ、シャルの水晶は?」
「大丈夫です、ちゃんと回収してありますよ」
「しっかしこの水晶って本当に怖いよなぁ~」
「でも、一体何で出来ているんですかね? というか、どうしてこんな物を彼女が」
「そうだよね、シャルにはいっぱい謎があるんだよぉ。捨てられていた時にお守りのように首にかけられてたらしいんだけど」
「それより、あたいはこの杖がシャルの乱用で壊れないかだけ心配でしょうがなかったよ」
「はいはいっ! スリスリしないっ」
「眩っ――もう夜明けかぁ~、とりあえず後は国の対応にまかせて、宿に戻って寝よう……さすがに疲れたわ」
4人は宿に戻り疲れを癒し、夕方に警備所に出頭するのであった。
エルヴァルクの自首については、サーミャが気を利かせ自首する前に、逮捕されたゲレンガの仲間の護衛団達がルティーナが空を飛んでいたと騒いている事実は嘘であると証言させ、ゲレンガは薬の開発でなく魔物を使役していたといことで口裏をあわせるように指示していたため、それを聞いていた馬琴は巧な話術で警備隊が納得するようにルティーナに説明させたのであった。
一方、逃亡したゲレンガについてはルティーナが領内の森に追い込んだが、ゲレンガが飼育していたと思われる大型のデルグーイと戦闘になり、逆にゲレンガが食い殺されてしまいそのデグルーイは火魔法で倒したと説明した。
翌日、ルティーナ達の話しを踏まえエレヴァルクの処分は領主としての権限ははく奪されたが、ルティーナ達の擁護と利用されていたという事が加味され1年の留置で済むのであった。
護衛団はゲレンガと同じく通商破壊目的で盗賊をしていた事から、全員3年間の留置と国外追放を言い渡された。
そして、警備隊は森でルティーナが倒したデルグーイの遺体を発見し、その中からゲレンガらしき肉片が発見された事から、証言が認められるのであった。
「ルナ、これでよかったのか?」
「さすがに魔物化の薬が存在する件が公になれば大騒ぎだからね。ミヤの判断は正解だったわ」
「それより、ドグルスとゲレンガの2人が死んだことで、向こうからこっちに接近してきてくるかもしれないわね」
「そうだな。でも、誘拐されるのは勘弁してくれよな」
「あ~結構やばかったから、次回は控えるよ」
「さぁてリーナ、事件解決しちゃったね、これで――」
「あ……あのねルナ……これでお別れなんて言わないでくださいね」
「「「?」」」
「私は『零の運命』の回復師見習いリーナっ!」
「私もルナのお父さんを救いたい。恩返しさせてください……ダメかな」
「「「よろしくっリーナ」」」
「うんっ」
ロザリナの満面の笑みは、まるでこれからの険しい道のりに光をさす女神のように輝いていた。
(第参章 「戦ウ聖女」編 完)
次回から、第肆章 「武闘会」編 に入ります。
ついに謎の2人の黒幕達が動き始めます。
そんな事も知らないルティーナ達はノモナーガ王国の生国際の大目玉『武闘会』に参加しようとしていた。




