58話 淵ノ救出
ルティーナは睡眠薬をかがされ宿から誘拐されたが、馬琴の機転により目を覚ますことができた。
しかし目が覚めていることをゲレンガに悟られしまい対峙することになってしまった。
だが他の男達は足元を凍らせて身動きできないようにし、実質1対1の状況になったが武器を持たないルティーナは体も完全ではなく劣勢であった。
一方、サーミャ達は彼女を救出に向かう。
ルティーナはゲレンガに『能力』を見透かされ上に、睡眠薬の効果が残っている為に立ち上がれず苦戦していた。
(どうするのよマコト、かなりまずいんじゃないの?)
(ルナの体がもうちょっと自由が利けば……今回の作戦は俺の考えが甘かった……すまない)
(ミヤ達が来てくれるまで、まだ時間がかかるだろうし)
「おやおや、どうしたぁ~? 俺に聞きたいことがあるんだろ?」
「貴方! ロザリナのお父さんを罠にはめて逮捕させたでしょ?」
「ロザリナ? 誰の事だ? 逮捕……あ、あの失敗作の事か――」
(失敗作だと? なんなんだコイツ)
「あいつはここの不正金の事知っちまったらしいからな、護衛に同行させて盗賊とつるんでいたって情報流して、嘘の警備隊に連れさらわせて、俺様の実験体にしてやったんだよ。そのおかげで俺がエルヴァルクの周辺も監視しなきゃいけなく――」
「そんなことはどうでもいい! まぁ今度は、お前で実験してやるよ」
「やっぱり貴方が絡んでたのね! でも、私は思った通りにはならないわよっ!」
ルティーナは足元がフラフラしながらも立ち上がったが、ゲレンガは容赦なくその場にあった剣を手に取り振り回しながらじわじわと迫ってきた。
(何か、何か物はないか……投げられそうなもの)
「残念ながら、この部屋には手頃な武器はこれしかねぇ~ぜ」
(!)
「図星かぁ~、ガキにしてはちったぁ頭が切れるようだが、俺は用心深いんでなぁ~」
(ルナに剣をかわす体術もなければ……腕を固くして盾代わりに……)
(マコトぉ~何かに隠れられないの?)
(それだ! ルナっ、左手のひらを開いて奴に向けろっ! そして右手は床についてっ)
ルティーナは馬琴の言った通りに、ゲレンガに左手を向けたが、その瞬間、ゲレンガは剣を構えたまま、とっさに後ろに飛び去った。
(えっ? なんで)
(奴の用心深さを利用させてもらったんだよっ)
彼女の手のひらには【水】が描かれ、足元には1m程の【煙】が描いていた。
それを見たゲレンガは意味もわからず警戒したのであった。
「ちっ、危ない危ない。どんな仕組みか知らねぇが、床に描くだけじゃねぇのかぁ~? こいつらみたいに凍らせられたらたまらないからなぁ~」
(やっぱり、漢字の意味はわかってない)
(そのまま、奴に向かって左手を向け続けるんだ!)
ゲレンガが構えて回り込もうとするが、ルティーナは追いかけるように左手の手のひらを向け位置を追うのであった。
状況を見ながら馬琴は、左手のひらから水を勢いよく吹き出させた。
「なっ、水? 俺にかけて凍らせるつもりか?」
さらにゲレンガが距離をとったのを確認して、馬琴はすぐさま足元の【煙】を『起動』し、自分を煙で身を隠した。
「それは煙幕? それじゃ出口は探せなくなるぜ!」
馬琴は煙と水の噴射を止め、ルティーナは姿を消してゲレンガと距離を取るのであった。
「煙が止まった? い、居ねぇ? 姿が消せるだとぉ (ちっ、水の方向から居場所が分かると思ったが、このガキっ頭切れやがる)」
しかしゲレンガは警戒しながらも剣を振り回しながら徐々に迫ってくる。
(マコトぉ、このままじゃすぐ居場所がばれちゃうよ――)
(それは大丈夫だと思う、こいつは魔力を気配で感じるのに長けてるから、あんな手探りな攻撃で警戒してんだよ)
(私、魔力0だもんね……なんか複雑)
「あぁん? こっちから魔力を感じるなぁ~! 魔力制御に騙されてたか……あんだけ変な魔法を連発し――」
(な、なんで、私の居場所がわかるのよぉ~)
(――いや、助かった)
(?)
――その時、天井を突き破り螺旋状の岩が突っ込んできたのであった。
「お待たせっ! ルナっ! 無事か?」
「って? シャルっココじゃねぇのかよ? それとも一緒に吹っ飛ばしちまったか?」
「勝手に殺さないでよっ! まだ生きてるわよっ」
「姿を消してたのか? 簡単にやられる玉じゃね~か」
「げっ、仲間かっ! なんでここが……」
「(くそっ仕方ねぇ実験はこれまでた……ここは魔物と護衛団の奴にまかせて退散だなぁ)」
(凄いわねマコト……あんな状況で本当に助かった)
(感心は後だ、ゲレンガの奴が逃げ出したぞ!)
サーミャが魔法を使ったことで、騒音を聞きつけた護衛団が集まり始め3人を取り囲んだ。
サーミャはロザリナに穴の下にいるルティーナの治療と武器を渡すように指示し、シャルレシカには『エクソシズム・ケーン』を渡して、自分と一緒に場を攪乱するように指示したのであった。
「えぇ~やっちゃってぇいいんですかぁ~わくわくですぅ」
「すっ『ストーム・サイクロン』~」
――シャルレシカはもともと膨大な魔力を持っているため、『エクソシズム・ケーン』によって本来の攻撃力に近い魔法が発動できるのであった。
「「「「ぎゃ~っ」」」」
「すっ『ストーム・サイクロン』~ろっ『ロック・バスター』ぁ~だっけぇ?」
「ミヤ~あと他に何がありましたぁ?」
無作為にサーミャが使っていた魔法名を連呼し放ち続けるシャルレシカであったが、その無謀さに護衛団は慌てふためき混乱していた。
「(シャルに、この杖は危険だなぁ……)」
「ミヤぁ~、これ楽しいぃ~あっ、思いだしたぁ~!」
「す、『スプラッシュ・バイパー』~」
「しゃ、シャルっ! こんなとこで使うんじゃねぇっ!」
屋敷の中にあった池の水が揺れ始め、巻き上げながら蛇の姿となって怒号と共に護衛団の群れに向かって一直線に飛んで行ったのだ。
威力はミヤほどではないが、屋敷の庭を護衛団もろとも洪水で飲み込むのであった。
一方、ロザリナはサーミャの開けた穴から地下室へ飛び降りた。
「ルナっ! 大丈夫っ? 怪我はないですか?」
「忘れないうちに、武器も渡しておきますねっ」
「怪我は大したことはないけど、睡眠薬のせいで体の自由がね」
「わかりました。『キュア・スリープ』っ」
ロザリナはルティーナに異常を解除する魔法により体が自由に動くようになった。
その頃、逃亡していたゲレンガは地下室を抜け出し、館のある部屋に向かっていた。
時同じく、屋敷が洪水になり驚いたエレヴァルクが飛び出してきたのであった。




