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☆見知らぬ世界で、少女のお目付け役になりました!  作者: うにかいな
第参章 ~戦ウ聖女~

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44話 嘆ク出生

 ロザリナの身体強化と自己治癒能力は光魔法を無意識に使っていることにサーミャに気づかされた。

シャルレシカはロザリナを『零の運命』に入らないかと誘い、今後、一緒に行動することで色々情報が探せるとルティーナにも背中を押され、行動を共にすることにした。

しかしノスガルドに戻る前に、馬琴(まこと)はどうしても確認しておきたい事があった。


 翌朝日が昇る前、4人は共同墓地にあるロザリナの母親の墓を訪ねてからノスガルドに移動することにした。

ロザリナの母親は、自分が3歳の時には流行り病でなくなってしまったらしく、本人は顔も覚えてないと言う。

悪い事を聞いてしまったと落ち込むルティーナであったが、彼女は記憶や思い出がないから寂しいという感情はなかった。


「あっあそこです……半年ぶりね、お母さん……あっ?」


「どうしたの? リーナっ」


「お墓が開けられた痕跡が! 周りの土の色が違う」


「……開けたのは、リーナのお父さんかも」


ルティーナの疑惑は正しかった。墓の蓋をあけると、そこにはロザリナの母の骨壺と古ぼけた手紙らしきものと封筒が添えてあった。

とりあえず手紙をロザリナに手渡し、彼女は内容に目を通すのであった。

 

そこには母親が亡くなる3年前の話が書かれていた。

当時、彼女は妊娠しており、父親は半年ほど領主からの依頼の仕事で家に帰れない日が続いていた。

そんな中、不慮の事故で出産を目前にしながらも流産してしまったのだった。

彼がもうすぐ戻ってくることを知っていたため、どうすればいいか悩み暮れていたが、父親がかえって来る数日前、偶然、家の前に赤子が捨てられていたのだった。

その赤子を自分が産んだ子としてロザリナと名付け、嘘を貫ぬくことにしたのであった。

しかし、病で死を覚悟した時にこの遺書を書き、自分が死んでもこの子は見捨てないでほしいと父親に願うのであった。


「そ、そんな……私は……捨て子……だったの……」


「でも、リーナのお父さんは遺書を見て、自分の子ではないことを知っても、なお、変わりなく20歳になるまで育ててくれたのね……」

「お父さんも、その事実を伝えられなくってここに一緒に封印していたのね……」

「もし、自分が死んでも真実を伝えられるように」


「……私――」


「リーナぁ、私はぁ言ったじゃなぃですかぁ~!」

「お父さんのぉ思いはぁ~リーナの事をぉ凄く愛してぇ~たぁってぇ! とてもぉ暖かい感じがぁするってぇ!」

「それにぃ……私もぉ捨て子なんですよぉ~」


「シャルも……捨て子だったの?」


「私はぁ孤児院にぃ捨てられていたのですけどぉ、育てる気がぁないならぁ~拾ってくれないですよぉ~」


「たしかに食費がめっちゃかかるしなシャルは……。あの孤児院よくお金があったよねぇって、私は思うわ」


(つかルナ、空気を読めよっ)


(あ……)


「もぉぉ~っ、ルナぁあぁ~っ台無しですぅ~」


「あははは、そうだねルナ、シャル。それでも愛して育ててくれてたんだよね……」

「笑ったら、少し気が楽になったわ……ありがとう」



少しスッキリしたロザリナは、続けて封筒の中身を開いた。そこには数字が並んでいる資料の様なものが大量に入っていた。

そこには『エレヴァルク』と名前が書いてあった。その名前は、先日、ガイゼルの護衛で運んだ商品の仕入れ先の領主の名前であった。

しかし、ロザリナの父親が働いていた領主でもあった。


(これは、帳簿だな……それに、まさか納品先がロザリナの父親が働いていたところだったなんて)


「たぶん、領主の不正か横領の資料じゃない? リーナのお父さんは、これを見つけてしまったか? 管理していたか? のいずれかかな」


「ルナっ……それって不正を知ってしまった、いや知っているからリーナの親父は――」


「ん~そう考えるのが自然なんだけど。襲われたんだよね? 領主って?」

「そうしたら、シャルが言ってた痣の入れ墨をした男は何だったんだろう」


たくさんの帳簿らしき書類を見ても、これではどうすることもできないルティーナ達であったが、封筒の中に手紙も入っていたに気づく。

そこには、自分が死んだときを想定していた内容が書かれていたのだった。


 ――この手紙を、リーナ以外が読んでいないことを祈る

 だが、万が一を考え、話したいことは山ほどあるが、深くは書かないことを許してほしい


 アーシャの遺書を読んでいたのなら理解しまったかもしれないが、今まで嘘をついてて本当にすまなかった

 だが、ロザリナのことは本当の娘だと育てた事は信じてほしい

 

 この帳簿は、分かる人間が見れば分かるが、私が生きていれば証拠として使うために残していた

 もし、この手紙を読んだのなら、この帳簿を処分してほしい

 

 本当は、お前に、こんな後始末を頼みたくなかった

 本当に申し訳ない


 ロザリナ、これからは一人で寂しいかもしれないけど、楽しく笑顔でこれからも生きてほしいと願う――

 


「……お、お父さ~~~ん……うぅぅぅ……」


(分かる人間が見れば分かるか……ガイゼルさんなら、この帳簿の何がおかしいかも、わかるかもな)

(しかし、そろそろ移動しないと今日中にノスガルドは厳しいか……)


「リーナ、いろいろな事が一瞬に起こって、混乱してしまって辛いだろうけど……大丈夫?」


「うんっ、ごめんね。もう大丈夫よっ」

「ちゃんとした目的が決まったから! でも、最後にお別れだけさせてください」

「(お母さん、お父さん、必ずいい報告をしに戻ってくるから、二人で私を見守っててね)」


仏前に誓いも新たに旅立つ決意をするロザリナであった。


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