43話 光ノ魔法
ルティーナはロザリナと和解することができ、毎回、裏路地でやさくれた男共を相手に暴ている理由を聴くのであった。
それはロザリナの父親が、護衛の任務をしていたが襲撃を手回ししたと疑いがかかり逮捕されてしまい、数日後、自害したと連絡を受けた。
彼女は彼の遺品整理をしていると日記を見つけた。襲撃された日、盗賊の一味の中に変な入れ墨を持つ者が居た事が書いてあった。
それを聞いたルティーナは自分たちが探している入れ墨と全く同じであることを打ち明け、一緒に探すことにした。
サーミャはロザリナの不思議な体質について、シェシカから聞いた話しを語り始めた。
「光魔法は治療だけでなくって、『身体強化』ってのを使えるやつもいるらしいんだ」
「リーナはおそらくそれが無意識に使えてる……だから、大男もぶっ飛ばす腕力や軽快な体の動きも納得がいく」
「そっか、リーナは『キュア・ヒール』を唱られるんだ!」
「え、何? そのキュアなんとかって」
「違うよ、これも無意識だと思う……シェシカも使えるんだが『自己治癒』っていう怪我を勝手に直してくれる魔法さ」
サーミャの結論からすると、リーナが戦う状況つまり興奮状態になると無意識で身体能力が強化され、ある程度なら怪我をしても勝手に治してくれる。
そして、それ以上の魔法が使える可能性もあると。
「わ、私が……」
ロザリナはサーミャに言われたことに動揺はしたが、今までのことを考えると納得がいく自分が居たのであった。
彼女は父が自殺したって聞かされた時、悲しいより先に怒りがこみ上げてきて、急に体が熱くなったかと思った瞬間、気が付くと壁を殴って壊してしまっていた事を思い出した。
その時、自分には格闘の素質があるのではと誤解し、これで危険な男達に相手にも、安全に情報が聞けると簡単に思ってた。
「ようは、男達にからまれて危険を感じた時……というか、怒りで興奮状態になった時だけ無意識に光魔法が発動していたってことなのね」
「……あのさ、さっき依頼を受けてって言ったのは、私が街中で暴れてる噂が広がりすぎて……正直、行き詰ってたの」
「父が死んでから半月ぐらい経つけど……何も情報が得られてない」
「なるほどな、リーナがこの街の連中からは『入れ墨』について、聞きまくったって事だよな……それじゃ、この街では手がかりがもう無いんじゃないか? どうするルナ?」
「リーナぁ、冒険者登録してぇ『零の運命』に入りませんかぁ?」
「あっ! いい案ねシャル」
「確かに、リーナはまだ魔法の正しい使い方が分からないし、知っていれば、これからきっと役に立つと思うし」
「お父さんの疑いを晴すまでの間だけ一緒に居ましょ。これからの事を考えても、私たちと行動してて損はしないわ」
「でも」
「それがいいっ! この際だ、一度ノスガルドに帰ろうぜ!」
「魔法の使い方ならシェシカに教えてもらえばいいぜ、格闘術ならグルバスも居るからな」
(ルナ、1つだけ調べたい事があるんだ)
「待ってミヤっ! ノスガルドに戻るのは明日よ」
「リーナ、今日はあなたのうちに泊めさせてもらってもいい?」
「「「?」」」
「ところでルナ? なんで、今日はうちに泊まることにするの?」
「ここからノスガルドまで馬車で一日はかかるから、日が落ちる前に、近くの街まで移動しておいた方が……」
「いいえ、意味はあるわよ。とても重要な意味がね(マコトの受け売りだけど)」
「?」
結局、ロザリナは3人を自分の家に案内することにしたのであった。
そして、ルティーナは食後に父親の書いた日記をみせてほしいと伝えたが、ロザリナは見ても自分が語ったこと以上の事は書いてないと気が乗らなかった。
「私のぉ~出番ですねぇ~っ」
「シャルはね、その人が使っていた物から何かしらの思いや居場所を探ることができるのよ」
「何それ、シャルレシカちゃんって凄くない?」
「リーナぁ、シャルでいいよぉ~」
食後にシャルレシカは早速、準備を始めた。日記と水晶を両手で触れ、しばらくすると顔つきが変わり瞑想に入るのであった。
「え、さっきまで……ほわわんとしてたのに……」
「これが、シャル様よ。今日は寝てないから、たぶん占いが終わったら急に寝落ちするから、寝床だけ準備お願いね」
「わ、わかったわ(えっ、なんなのよシャルって……)」
そして、シャルレシカは日記からロザリナの父の念を拾い集め、眠気を覚えながら普段の彼女に戻り、語り始めた。
「リーナのぉお父さんはぁ~、男の左腕にあった入れ墨を見てぇ描いたみたいですぅ」
「そんな事どこにも書いてないのに……凄いわ」
「あとぉ、部屋をのぞいてぇ何か困った顔をしてるぅ風景も浮かんでいましたぁ」
「それってさ、何か秘密を知ってしまったってことなんじゃねぇか? 何か日記に書いてあるかもよ」
「それとぉ、リーナの事をぉ凄く愛してぇたのねぇ~とぉってもぉ暖かい感じがぁしましたよぉ――」
(お父さん……)
「それ以上はぁ……ムニュムニュぅ~」
シャルレシカは、物から思念を読み取るのは普段より疲れるようで、そのまま寝床まで運ばれていくのであった。
その後3人は、シャルレシカが言ったことを踏まえて日記を読み返すことにした。
馬琴は一言一句、見落とさないようにルティーナに目を通させることにし、その内に違和感のある文面を見つけるのであった。
――私の身に何かあったら、この日記を読んでくれるだろうか――
――もしもの時は、ロザリナに妻の墓を見てほしい――
「これ? 連行される1週間前のところね。自分が亡くなった時はお母さんのお墓の面倒をみてほしいってことでしょ?」
「違うわよリーナっ、その日に秘密を知ってしまったから自分が消されるって懸念して書かれたものよ」
「お母さんのお墓に何かあるんだよ! どこにあるの?」
「この裏山の共同墓地にあるわよっ」
「でもルナリカちゃんって、本当に頭が切れるのね……そういう意図には読み取れなかったわ」
(マコトがだけどね……)
「それじゃ明日の朝、墓参りに行きましょっ! 何かあるかもしれないわ」
「ところでリーナ……私もルナって呼んでくれるとうれしいな~」
「わかったわルナっ、これからもよろしくね」
そして3人も、眠りにつくのであった。




