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38話 雇ウ交渉

 ルティーナ達は『零の運命』という名のパーティーを結成し、仕事始めになる任務を探していた。

サーミャを探したことで『碧き閃光』の名前を使えるという報酬により、優良な任務を受ることが可能となり選び放題であった。

そして常連のアバダルト商会の護衛任務を受けることになった。

商会に向かう途中で、偶然『碧き閃光』のメンバーのグルバスに出会い、店主は一癖ある男の為、同伴してもらう事にしたのであった。





金の格闘家:グルバス=ブラウダ

挿絵(By みてみん)

 ――アバダルト商会はノスガルドで唯一、商品の流通を取り仕切っている。

近隣の国は、『バリア・ストーン』の効果範囲内や近隣護衛団が常駐している道を利用することで安全に輸送できるが、輸送先のブクレイン公国は隣国アウリッヒ王国を挟んだ先にあり『バリア・ストーン』の恩恵を受けないため道中での魔物に遭遇する率が上がる。

さらには、魔物がいなくても盗賊団が多発している地域のため護衛は必須となっていた。



 ルティーナ達は、グルバスに連れられアバダルト商会の門の前に到着した。

彼曰く、この商会の店主は根は悪い人間ではないが、職業上なのか用心ぶかく疑りぶかい。

初対面は面倒臭いと聞かされたルティーナであった。


「たのもぉ~っ、カイゼルのオヤジはいるかぁ~?」


(どっかの道場破りかよっ……さすが格闘家……というか、顧客をオヤジ呼ばわりしてる?)


「あぁぁ、うるせぇなグルバスかよ? なんだよ『碧き閃光』が請け負ってくれるのかい? こんな小遣い稼ぎの案件に……ついに資金繰りで困ったのか?」


「ちっ、相変わらず口が悪りぃな~あんたは」

「違げぇ~よ。今回は、この『零の運命』達がお前らを守ってくれるよ」

「ほれっ、これが『紹介状』だ」



不思議そうに紹介状に目を通すガイゼルであったが、グルバスの周りを見回すがそれっぽいのがサーミャしか見当たらなく、冒険者ごっこをしている少女が何故いるのかと悩んでいた。


「違げぇよ! このお嬢ちゃん達だよ」


「おいおいグルバス、お前、いつから冗談を言うようになった? さすがにこれはねぇだろ? いくらお前らの『紹介状』があるからって……」



心配した通り、初見で不満を垂れ流される様を見ていたサーミャはグルバスに感謝しながらも、ガイゼルに自己紹介を始めた。


「あたいはサーミャ=キャステル――銀の魔法使いだっ」

「そこの豊満な娘が、シャルレシカ=ブルムダール――銀の占い師っ」


「ほぉ、豊満ってぇなんですかぁ~」


「そして、そこの幼女が『零の運命』の(かしら)ルナリカ=リターナ――白の無職だっ」


「おぃっミヤ、幼女っつうなっ!」


「だって、説明しやすいだろ?」



メンバー紹介をされても、使えそうなのがサーミャぐらいしかいない事と、最高ランクで『銀』に加えにルティーナの『無職』という内容に対してあきれ顔であった。

しかしガイゼルも大人の対応で、礼儀には礼儀と自分も自己紹介を返したが、自分の命を預ける人間を選ぶ権利があると主張し3人の護衛を断ると言い始めた。

それを聞いたグルバスは、一言、言い放った。


「おっさん……商品以外の見る目はねぇみてぇだなぁ~見損なったぜ」


「な、なんだとぉ~グルバスぅ!」


「ちなみにこいつら3人で、既に大量の魔物と盗賊団2、30人はほふってるぜ……(知らんけど)」

「俺でも……ルナリカとサシでやりあったら手に負えねぇかもな」


「な……そんな馬鹿も休み休みに――」



しびれを切らしたサーミャは、自分は攻撃5属性の魔法が全て使えると自負し、空を飛んでいる鷹に向かい無詠唱で『ライトニング・アロー』を放ち、撃ち落として見せるのであった。

続けて、シャルレシカも能力を見せつけるように尻をたたき、索敵魔法で店内の従業員数と場所を的確に示して見せさせるのであった。

それを見たガイゼルはあっけにとられていた。


「な、なんとっ、5属性の魔法と索敵魔法の使い手だとぉ? 2人とも本当に銀の冒険者か? これならら……」

「ぜ、是非っ、おふたりにお願いしたい……」


「「「(…………)」」」


「おっさんよぉ……最後まで話聞いてやれよ。まだ(かしら)が居るんだぜ……話聞いてたか? 俺でもかなわないっつたろ?」


「いや、いや無職だろ? 察するに頭が切れて2人を従えているだけなんだろ? 確かに頭じゃお前は勝てないって事だろ? いらんいらんっ、こっちも商売だ不要な人件費はかけたくない」


さすがの扱いにルティーナは、キレ気味に『頭脳派無職』と自分を紹介し、庭にある大木は無くなっても問題ないかと問う。

何を言っているのか解らないガイゼルは適当に相槌を打ってしまう。


「はぁ、無くなるだとぉ? (適当な事を言いよって)」


ルティーナは、クナイを取り出し【(ばく)】を描き写して、木に向かって構える。


「(あ、あれはクナイ? なんでこの子が……あれで大木を?)」


投てきされたクナイは見事に大木に命中したが、ガイゼルはただの偶然と失笑し、壊れてもいない大木を見ていい加減にしてほしいと怒りがこみあげていた。

――と、その時。

馬琴(まこと)は【(ばく)】を『起動(きどう)』し、大木は爆発とともに粉々に飛び散った。


彼女が何をしたのかを理解できずガイゼルは硬直していた。

そこへ追い打ちをかけ、自分は本当に役に立たないのかと問い直す。


「ほ、本当に職業無しなのかい? さすがに今回は、外見でダメだと決めつけすぎていたわい。3人に是非お願いしたい」

「見下して本当にすまなかった。許してもらえないだろうか? この通りだ」


「なっ、伊達に『碧き閃光』のお墨付きじゃねぇだろ?」


「そうだな」

「ところで、ルナリカさんだっけ? 何でクナイを持って……」


ガイゼルは、ルティーナがクナイを使いこなしていることに武器屋から発明したのは少女だと聞かされたことを思い出した。


「そうだったのかい。手裏剣やクナイがブクレインの武器屋市場で大人気商品になっちまってなぁ~、その商品も輸送品の中にあるんだよ」


「これも何かのご縁ですね」


(あ、なんか武器屋からの売上報酬がいいと思ったら、そういうことだったんだね)


「それじゃ、ガイゼルのおっさん、この子達をよろしくなっ」


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