34話 魔石使イ
ルティーナとサーミャの作戦でドグルスの捕獲に成功した。
ルティーナ達は、シャルレシカの能力を使ってドグルスから色々聞き出すことにした。
しかしドルグスが誰の指示で動いているかは不明のままだが、2人の謎の影に従っていたように映るのであった。
ルティーナ達は影の黒幕は2人居ることを知る。
しかしシャルレシカは、既に寝起きに盗賊に尋問して力を使っていたため眠気の限界が近かづいていた。
その事を知らないドグルスは、これ以上秘密が暴かれてるとまずいと焦っていた。
「(そろそろ頃合いか)」
「ところで、てめ~らの事だ、闇魔女は始末しちまったのかぁ?」
「(こいつらの強さは半端ない……しかし、人を殺すことにためらってるやがる……)」
「なによ、突然――」
「いやね、闇魔女が何もせずに……」
「おっと俺様に質問しても、あいつがどんな手で『碧き閃光』の連中を始末しようとしてるかわからねぇから無駄だぜ」
「急いで、あいつから情報を抜いた方がいいんじゃないか?」
「だから何よ――」
突然、盗賊の一人が鎧越しに背中から爆発し絶命する。
「「「――えっ!」」」
「さぁ~て、次はどいつにしようかな?」
ドグルスの言葉に呼応し、次々と盗賊が爆発し始めるのであった。
「俺の言いたい事がわかるかい? そうさ、俺の意思ひとつで殺せるってことだよっ」
「そうさ、これは交渉だ! おれを見逃せば、闇魔女は助けてやるぜ」
「闇魔女が死んだら、魔女よぉてめぇの仲間を助けられなくなるぞ!」
「そうさ、お前は再び仲間を見殺しにしちまうんだ! ひゃははははは~っ」
しかし吠えるドグルスに対して、馬琴には違和感しかなかった。
「あなた、よくしゃべるのね? 勝利でも確信したの?」
ルティーナも例の事に気付き、ドグルスにあおり返すのであった。
焦るドグルスを無視するかのように、次々と仲間達が爆発し始める。
「あなたの意思で爆破できるって言ってたわよね、そしたらヘレンはいつでも殺せるってことよね?」
「(ちっ、俺一人で逃げる様に用意した捨て駒を無駄にしちまった……)」
「あそこの土砂に埋もれたやつらの方を爆発すべきよね? 戦える仲間が爆発しているのは――」
「ねぇミヤ~、そこの鎧持ってきてくれる?」
未装着の鎧が積んである山から、ルティーナのいう通りにサーミャは1つ持ってきた。
「ねぇミヤ~、その鎧の背中のあたりに、あの石……着いてない?」
「おっ! ついてるぜ、ルナの予想通りだっ」
「『カース・ストーン』は簡単な条件しか付与できないわっ!」
「だから、『俺』の『意思』で『殺せる』……そんな条件は出来ないっ!」
「この鎧を着けている奴しか、爆発していないっ! そしてこの『カース・ストーン』の条件は、時間っ!」
「装着して呪いが発動し、おそらく数分後に勝手に爆発する仕組み! 違う?」
「意思で爆発出来るなら、ミヤが持ってる鎧をやってみなさいよっ!」
馬琴の『カース・ストーン』の疑念が晴れた。
バルストを殺そうとした2人組が首輪で自滅したのは装着後の時間経過……そして……。
「くっ……(なんで知ってやがるっ)」
「じゃ、鎧着てみなさいよ……それですべてがはっきりするわ! 着けてあげるわよっ」
「や、や、や、ややめろ~ちくしょうがぁぁあ~~っ」
ルティーナ達は、動けないドグルスに鎧をかぶせた。
慌てふためくドグルスは顔色が変わると同時に、鎧が自然に密着し装着されるのであった。
「わぁぁぁぁ~~っ! 何てことをっ~」
(こいつの脇腹に痣? ただの入れ墨なのか?)
「どうやら、私の予想通りだったようね……」
「もう、あなたから得られそうな情報もなさそうだから、最後に1つだけ大事な仲間のためにはっきりしときたいんだけど」
「え?」
「本当に、ヴァイスさんの『カース・ストーン』は、『ミヤが魔法を使ったら首輪が締まる』って条件だったのかしら?」
「誰がって条件は付与できなハズだよねぇ?」
「……」
「ミヤが着けられた『カース・ストーン』は、『魔法を使ったら』『首輪が締まる』って条件だったんだろうけど……」
「なんで、ミヤが呪文を放った時に、ヴァイスさんが死んでしまったのかしら?」
「そう、あれは『何分か経過したら』『首輪が締まる』だったんじゃないの?」
「ミヤが殺したんじゃなくて、偶然そうなるように誘導したんでしょ?」
「ガキがっ……あぁ、そうだよっ! でめぇの言う通りさ」
「魔女に奴を引き渡す時間を考慮して、入口から追い出してやったのさ……」
「まんまと自分が殺したと信じこませて、そこを利用しやろうと思ったのに!」
「――わ、私が、ヴァイスを……殺して……ない……のね」
「ううぅぅ……うわ~~~んっ」
今までの心の苦しみから解放され泣き叫ぶサーミャであった。
そして、ルティーナはドグルスから『エクソシズム・ケーン』を取り上げた。
「これはミヤとヴァイスさんの大切な思い出なんだからっ! 汚い手でさわらないでっ!」
「さよなら……魔石使いっ! 自分の手で闇に消えなさいっ」
3人はドグルスをそのまま放置し、ルティーナが掘った穴を辿ってヘレンの元へ向かうことにした。
数分後、爆音と共にドグルスの断末魔が響きわたるのであった。
「――終わったよ……ミヤ……もう泣かないでいいのよ」
「うるせぇ……これは、嬉し涙だよ……これでヴァイスのお墓参りに堂々と行ける……」
「本当にありがとう、ルナ、シャルっ……」
「2人には、お礼しきれない……ぐらい感謝しているわ……」
「別にいいわよ。もう私たちは仲間でしょ?」
「話の続きは、ヘレンを連れて外に出てからにしましょっ!」
3人はヘレンが放置されている場所に戻り、【硬】を解除し【微】を描きなおした。
シャルレシカも疲れて寝てしまったので、【微】を描き、小さくした2人を連れて洞窟から運び出すのであった。