33話 魔法封ジ ~其ノ肆~
サーミャは魔法が使えないことを逆手に、水による物理的攻撃で盗賊団を攻撃する。
魔法が使える場所と使えない場所を理解し反撃をはじめるが、ドグルスの機転により再び魔法が使えなくなってしまう。
そんな戦いの中に留守番していたはずのシャルレシカが現れ、地中で迷子になっていたルティーナを無事、戦いの場に導くのであった。
ルティーナ達は、【窯】の『能力』により岩の中に隠れていたが、徐々に盗賊団に剣で崩れようとしていた。
彼女は、そんな状況ではあったが、サーミャの傷周辺に手を当て【癒】を描きで激痛をやわらげつつ、刺さった矢を引き抜いた。
そしてシャルレシカはドリネからもらっていた上級回復薬を、サーミャの傷口にかけ傷をいやすのであった。
そのうちに、窯の岩の一部が破壊され、中が露出し盗賊団が覗き込んだところで、ルティーナは両手を突き出し【輝】で、中を覗く盗賊たちの目をくらませ、【窯】を解除し、三人はすぐさま後退するのであった。
ドグルスは魔法を封印しているはずの状況にもかかわらず、平然と魔法らしきものを使うルティーナに違和感を覚える。
ルティーナは早速シャルレシカを【硬】で硬化させ、サーミャと耳打ちをし魔法が使える範囲まで後退させた。
そこへ容赦なく複数の矢が飛んでくるが、すかさずシャルレシカの後ろに隠れ難を逃れる。
「ひ、ひどぉいですぅ~ルナぁ~」
「ごめんごめん、さすがに防御できなかったからさ~」
「でも、おかげで反撃開始よっ」
ルティーナは、シャルレシカの後ろに隠れた時に地面に手をついており、シャルレシカの足元を外周点として【凍】を約15mほど展開させ終わっていたのだ。
「雑魚は固まってなさいっ!」
瞬く間に地面は凍りつきその上に居た盗賊の半数以上は、下半身が凍り付いて動けなくなった。
間髪なく、大き目の【雷】を描いた手裏剣を、その中心部に投げ込み『起動』すると雷につつまれながら盗賊たちは泣きわめきながら気を失った。
「これで、5……6……あと7人……」
「――てめぇ、魔法が使えないはずなのに、土? 光? 氷? 雷? 次々とぉ~一体何者だぁ!」
「そんな事ができるのは……まさかっ勇者かぁ? 勇者の回し者かぁ~っ! 俺は裏切られたのかぁ~っ!」
(ゆ、勇者? 勇者キタッ~って、居るの? この世界って? それに、裏切りって? 一体?)
(マコト、なんか嬉しそうなんだけどさ、ゆう……しゃって何よ? 知ってるの?)
(え……ルナも知らないの? と言うことは……俺の知ってる勇者じゃないのか?)
残った盗賊達は、動揺しはじめたドグルスからの指示が出ないため躊躇していた。
ルティーナは、すでに【霧】を描いた手裏剣と、【爆】を描いたクナイを取り出し、賊が一番固まっている場所に【霧】の手裏剣を投げ込み『起動』して、霧で盗賊を包み込んだ。
続けて【爆】のクナイを投げ込んだ。
「てめぇら、うかつに動くんじゃねぇっ! 同志打ちになるっ! お前らは動くなっ!」
「(ちっ、今度は水系? なんなんだ、こいつはっ!)」
残った仲間に何も指示ぜずドグルスは『エクソシズム・ケーン』を持ち、自分だけその場を離れ逃走しようとしていた。
「あんたなら考えそうな事ねっ! ルナっ準備出来たわっ」
サーミャは、魔法が使える位置から雷の大量の矢を準備して待機していた。
「馬鹿めっ、そこのガキならともかく、お前の魔法は途中で消えるから意味はねぇんだよっ!」
ルティーナは、【霧】を解除して霧の発生を止めて、すでに投げ込んでいる【爆】のクナイを『起動』させた。
爆発したのと同時に、サーミャは呪文を放った。
「『ライトニング・アロー ――雷の矢――』っ」
光速の雷の矢が盗賊たちの全員の頭を直撃し失神させ、そして残りの矢はグバルスを襲った。
「なっ、魔法……なぜ使えるっ」
ルティーナはサーミャの指示で、【爆】のクナイは最初っから『マジックシール・ストーン』の入った箱を狙っていたのだ。
それによって魔法は使えるようになっていた。
「「さぁ、懺悔の時間だぜっ!」」
そして三人は瀕死のドグルスを取り囲み、ルティーナは【重】でグルバス全体を包み込み自由を奪い、左の手のひらに【貼】を描き写しシャルレシカの水晶に貼り付けた。
ドグルスは抵抗しながらもルティーナ達の質問により、水晶に答えが映し出されていくのであった。
「まず、なぜバルストを暗殺しようとしたの?」
「暗殺しようとした? それ以前に、暗殺が失敗だと!」
(このなんか豪華な部屋で誰と話しているの? なんか裕福な衣装だな、顔までは映ってないか……ひれ伏せてるの?)
「あんたは下っ端なの?……こいつが、黒幕? ってこと」
(……会話が聞ければ、最強な術式なんだけどね)
「そのあと、あいつら二人に指示をだしてたのね――」
「! どこまで知ってやがるてめぇっ――」
続けてサーミャもシェシカにこだわる理由を問いた。
すると水晶には、たくさんの鎖に繋がれている魔法使いらしき女性達が部屋に閉じ込められ、怪我人に回復魔法をかけつづけさせられている異様な光景が映った。
「どういうことよっ! こんな、ひどいっ」
「てめぇっ! こんなことをさせようとっ――」
そして馬琴が気になっていた『勇者』について問いた。
すると水晶には、暗闇の中に人らしきものが見えていた。
(そして、また……ひれ伏せてるんだ……こいつ?)