30話 魔法封ジ ~其ノ壱~
2手にわかれてしまったルティーナは、行方不明になってしまったサーミャ達の捜索は二次災害に繋がることを懸念し単独行動をすることを決めた。
シャルレシカがいれば、向こうから合流してくれると信じて――。
ルティーナは飛翔することで罠にかならないように移動するも、そこへヘレンの操る小動物の魔物群に襲撃される。
後退しながらも、馬琴の機転でヘレンを撃退する。
ヘレンは謎の爆発に巻き込まれ倒れこむ。それに巻き込まれた魔物達もほぼ全滅し、残った数匹も予想どおり統率を失い去っていった。
ルティーナは馬琴に、瓦礫の向こうで何が起こったのかを問う。
(作戦通りだな……たぶん片付いたよ)
(自爆なの? 身を隠すのに、【霧】じゃなくて【粉】って使うから理由はあるとおもったんだけど……)
(あぁ、狭い洞窟だったから粉塵がすぐ充満するだろうし、ヘレンも洞窟ってこともあったから瓦礫除去も最小限にしていたはずだからな)
(この壁を破壊するのにヘレンが火系魔法を唱えた瞬間に、粉塵爆発って出来るかな~って?)
(ふんじ……ん? 爆発? マコトの世界では常識なの? あ~頭が痛くなりそう……説明はいいわ)
馬琴は【粉】の発生を止め、道を塞いている瓦礫を溶かしヘレンが倒れている所へ向かった。
ヘレンは爆破に巻き込まれ血まみれにはなっているが息はしていた。
彼は、反対側に瓦礫が残っていたため完全な密閉空間で無かったことと、火魔法の威力を抑えめに使っていたことが致命傷に繋がらなかったのだろうと語る。
ルティーナは倒れたヘレンに母からもらった首飾りを握らせて『キュア・ヒール』を口にした。
その瞬間、ヘレンは癒の光につつみこまれ傷がみるみる治っていったのだった。
魔物や万が一のがけ崩れから身を守るために【硬】と、起きないように【眠】を描きヘレンを放置することにした。
(この子……首輪をしてないから……本当に裏切ってたんだね)
(……この背中の傷は何んだろう?)
(もしもし~マコトさ~ん、何、見てんのよっ!)
(見てるのはルナだからっ! 俺の意思じゃねぇっ!)
(だけど、しっくりこないなぁ……事が終わったら、シャルに相談するか……)
(流石にさっきの爆発で警戒されちゃったんじゃない?)
(いや、ヘレンが構えてた時点でバレてるよ! 急ぐぞルナっ!)
ルティーナは、飛翔を継続し道を進みなおし始めたが、蛇行する道を慎重に進んでいくと分かれ道に遭遇してしまった。
(え~参ったなぁ~……シャルが居れば……)
(マコトぉ~、『能力』でなんとかしなさいよぉ~)
(出来るかぁ~っ!)
(道を間違えたら時間がもったいないし――)
その時、馬琴はデスウマが左側の道に走りこんでいくのを見逃さなかった。
(ルナっいいところを見てたなっ! 右側だっ!)
(えっ……なになに?)
馬琴は動物の本能に賭けた。
先ほどの爆発でここが危険な場所と思っているなら外に逃げようとしていると察した。
逃げた反対側の道を進むが、いきなり行き止りになってしまった。
(え~~マコト……ハズレじゃんっ! 博学ぅ~と一瞬でも思ったのに……)
(いや、たぶん合ってる。これは自然な岩壁じゃない。不自然だ)
(きっと土魔法かなにかで塞いでる、この先に道があるんだよ……)
そして馬琴は地道に壁を【溶】で溶かしながら突き進むことにした。
【爆】や【崩】のが早くないかとルティーナはつっかかるが、この先にサーミャ達が合流しようと近づいていたら巻き込んでしまうが、溶かすなら実害がないと説明した。
いままでの馬琴の漢字の使い方を振り返ると、ルティーナは自分ではこの『能力』を使いこなせないと少し元気をなくしてしまった。
しかし、馬琴は彼女の発想でヘレンを止めることができたと称し、お互いの発想は必要だと元気付けるのであった。
―― 一方、落とし穴に転落したサーミャとシャルレシカであったが、サーミャの機転でシャルレシカを抱きしめ地面に向かって『ストーム・サイクロン』を放ち、地面へ叩きつけられはしたが衝撃を減らしたおかげで、たいした怪我もなかったのであった。
シャルレシカがルティーナが魔物と戦っているのを確認し、早く合流しようと落ちた場所から道を探して前に進むことにしていた。
サーミャは以前潜入調査した時は罠はなかったと油断していたが、ここにきて仕掛けられていると思ってもみなかった。
それ以前にシャルレシカには罠は生き物でないから察知できないことを理解し、彼女を守るように自分が前を歩くことにした。
しばらくシャルレシカのいう通りに進むと、大きな扉の前に立っていた。
「どうやって開けるんだ? 重くて開かねぇ! ……めんどくせぇっ」
「『フレイム・ボム』っ」
扉は爆発とともに2人が入れる入口を作り出し中に入ると、その中は大きな空洞になっていた。
そして辺りを見渡す限り道はなかった。
行き止まりと落胆するなか、シャルレシカが入って来た扉の反対側の角を指さし何かあると指さし、サーミャはそこに『フレイム・ボム』を放とうとするのであった。
しかし――。
「(……)えぇ? ま、魔法が……発現しないっ……まさかっ」
「シャルっ、急げっ! さっきの入――」
時すでに遅く、入口側の壁が崩れ完全に密室にされてしまった。
慌てる2人に追い打ちを賭けるように天井の四隅から水が吹き出し始めるのであった。