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☆見知らぬ世界で、少女のお目付け役になりました!  作者: うにかいな
最終章 ~黒竜《ブラック・デンゴラド》~

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242/250

242話 思惑

 サーミャとエリアルはミレイユに見送られながら、ノモナーガ城に居るロザリナの元へ帰っていくのであった。

丁度その時、佐渡島を目指して移動しているルティーナから連絡が入る。


ルティーナは順調に飛翔しては休憩を繰り返し移動しているが、突然、大量の魔物が荒れ狂っている現場に遭遇してしまい、連絡が遅くなったが想定内で移動しており、明日の昼には島に上陸できると。


しかしロザリナは現在、各国で発生している魔物騒ぎの件を伝え、黒竜(ブラック・デンゴラド)の魔力にあてられてデルグーイの様に狂い始めている可能性が高いと確信するのであった。


「これでも結構急いだんだけど……ゆっくりしていられなくなったわね」


「ルナ! ちゃんと休まないとだめですよ!」


「そうですよ。私たちの為に移動してもらっているんですから! 今夜、寝ないで移動しようなんて考えてないでしょうね?」


「ありがとう。さすがに疲れたから今日は、このまま寝るわよ」

「じゃ、また明日の昼前に連絡するね」



そしてルティーナとの通信を終え、とりあえず明日の決戦に備え、夕食後に各自、王室で準備させた部屋で休むことにするのであった。


「でもぉ隣国は混乱しているのに、何もできないなんてぇ……辛いですぅ」


「シャルレシカや、休むのも仕事だ。悲観するではない」

「世も心苦しいが、君らには万全な体調で臨んでもらわなければならんからな」

「君は、たくさん食べないと魔力が枯渇するのであろう? たくさん作らせているからな、遠慮なく食べてくれ」


「ありがとうございますぅ」


「そういえばエル、どうでしたか? ブクレインは?」


「あ、あの……それが……」


「?」



 エリアルは、ミレイユから聞かされた話をそのまま皆に話し、自分の素性が、イスガ王国の子孫であったことを説明した。

それを聞いたロザリナとシャルレシカ以外は、皆、呆然としていた。


「え、つまり、今は亡きイスガ王国の王様の子孫になるのかね? ……『零の運命』のメンバーは何でもアリになって来たのぉ」


「だけど、剣士として生きていくって決めたんだよな。もうイスガは存在しねぇし、過去にすがってもしかたねぇ」


「でもエルぅ、お姫さまなのにぃ」


「(……)」

「この筋肉体型で、お姫様っておかしくないかい?」


「「「あははは」」」



「(さすがに『零の運命』はここまで来ると、一国では抱えきれない戦力になってしまったな……どうしたものか)」


「だから、これからも一緒に冒険者を続けようねシャル」


(でもこの闘いが終わったら、僕はただの剣士になっちゃいますけどね)


(そっか、私達が元の世界に帰ったら、この『能力(ちから)』は……)


「つうか、タイヘイ? おいタイヘイ? お前、魂ぬけてねぇか?」


「ふ、普通、驚くというか……目が点になるでしょ? そんな話を聞かされては」

「(まさか、幻のイスガの姫だったのかよ? 本当に姫じゃねぇか!)」


「何をいまさら、エルの事をいっつも、姫、姫って言ってんだからいいじゃねぇか!」


「うぅぅ」



「そういえばシャル、食後で良いので、この石を鑑定してもらえないかな?」


「ん? この石って……確か」



 エリアルはシャルレシカにイスガ王の形見の宝石を鑑定してもらうことにした。

しばらく彼女は黙り込んでいたが、鑑定結果は宝石は名前はわからないが、何かの身代わりになってくれるもののようだということがわかったのだ。

鑑定士としての能力を得たものの、さすがにオリハーデのように長年、いろいろな物の知識を得ているわけでないので、見た事も知識もないものまで正確には鑑定できなかったのだ。


「身代わり?」


「それってさ、例えばもしエリアルの身に何か起こったら肩代わりしてくれるってことじゃねぇのか?」


「いやいやそれはないでしょ、それならイスガ王は身に着けていたのに亡くなられてしまったんですから」


「そ、そうだよな……ならなんの身代わりなんだ?」


(これってさ、身代わりになる条件があるんじゃない?)


(使い方はわからないか……それなら、なおさらお守りとして大切に持っておくよ)



「そうだ、タイヘイ、勇者様の黒魔法にそんなのねぇのかよ? まだ、隠してんじゃねぇだろうな?」


「滅相もない! この前、サト――いえ、ルティーナさんからの質問に答えた通り、それ以上でも未満でもないですよ」

「そもそも、そんな物や能力(ちから)』があったらナガアキだって生きてますって!」


「……だよな」



結局、イスガ王の忘れ形見の宝石は何かを調べることまではできなかったが、きっと、イスガのもつ謎の技術で作られた秘宝じゃないかということで話しを片づけ、皆、各々の部屋に移動し就寝することにしたのであった。


しかし皆が寝静まった後、1人だけ目を覚まし行動を始めた者が居た。

それは朝時(あさとき)であり、暗殺部隊であるダブリスとデーハイグの気配を気にしつつ、密かに城を一人徘徊していた。


「(くそっ、俺は何してんだ)」

「(しかし戦いに行く前に、あれだけは手に入れておかないと……)」


彼は、自分に装着されている『カース・ストーン』に付与された条件をずっと考えながら日々を暮らしていた。

 『何か』をしたら『どうなる』


この単純な条件で、考える点は1点。

『どうなる』は、爆発なりチョーカーが締まるなり自分の身に不都合が起こることは間違いはなく、結果的には、それを起動させるトリガー『何か』さえ、注意すれば害はないのだ。


以前、不用意に『裏切る』や『復讐』など、馬琴(まこと)への怨念で浮かばせてしまったが無事であった。

その後、冷静に考え、自分が考えるであろう行動は条件に無闇に選択しないのは当たり前だと理解した。そう、朝時(あさとき)が決戦前に居なくなると召喚した意味がなくなるからなのだ。


そして、先日の質問で『洗脳魔法』は作戦に使うと言っていたため、これを使うことも条件でないことはわかっていた。


しかし、いくら悩んでも、自分が馬琴(まこと)達にとって不都合な行動が見当たらないのだ。


開き直った朝時(あさとき)は、誰かを洗脳することを思いつくが、付き合いが短いため弱みを全く知らない。それは馬琴(まこと)は織り込み済みで、わざと特訓もアンハルト達に任せにし一緒に生活させなかったのは、その為であったのだ。


だが、それでも自分なりに作戦を考え、ある部屋を目指し城の闇に消えていくのであった。





――そして、最終決戦当日の日が昇る前、体調を整えたルティーナは島が見える海岸沿いまで一気に飛翔し始めていた。


(マコト、まだ海岸にも着いてないのに、でっかい島が見えるね)


(あぁ、あれが佐渡島さ……今では黒竜(ブラック・デンゴラド)の巣だがな)


(ちょっと疲れてきたから休みたいんだけど、下には魔物はいなさそうね)


(ひとまず休憩しよう。とりあえずミヤ達に準備するように連絡も入れよう)


(そういえば、橋みたいな道をハルトさん達が作ったって言ってたけど、見当たらないわね……)


(……おそらく亡くなられたから、『能力(ちから)』が消えたんだと思う)


(そっか……)

(もし、マコトが死んだら、カンジは使えなくなっちゃ――)


(いやいや、それはルナが死ぬ時しかないから! それに絶対、させない! 生きて帰ろうぜ!)



2人は自分たちの最後の約束を果たす為に、心を奮い立たせるのであった。


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