241話 和解
サーミャとエリアルがブクレイン王国で、魔物騒動に巻き込まれている中、ノモナーガ王国でも各国で地上の魔物たちが急に大暴れし街や村を襲撃しているとの情報と増援依頼が大量に舞い込んでいた。
それを聞きつけたアンハルトは、自由行動していたロザリナ達を拾い、急遽、王城で待機することとなった。
「あわわわわ、ミヤ達もいないしどうしよぅ……リーナ」
「私たちは、ここで待っているしかないの。アンハルトさん達に任せましょう」
「ルナは今、飛んでるだろうし連絡は……」
慌てるノキア王を横目に、一緒に着いてきた朝時は、各国には城を守る白金級の兵士や魔法師がいるから、そこまで大騒ぎする必要はないと溜息をつく。
それを見ていたノキア王は、もともと自分に乗り移っていた8年間で何を見てきて、やって来たのかを問う。
国によっては兵力重視、魔法使い重視という傾向はあるものの、各国の戦力は均衡していると言ってもいい。
そして、ノモナーガ王国は勇者を初めて召喚し運用した時から、白金級の戦力として冒険者を育てる仕組みギルドを数十年にかけて構築していた。
朝時がノキア王の体を乗っ取った後の国の政策は、社会・経済の先生をやっていた知識を使い目まぐるしい発展をさせ、ギルドのシステムにも革新をあたえ、有力な冒険者が次々に育っていったのであった。
「(そうだったな、ギルドの冒険者達にさまざまな状況を経験させることで底上げしてきたんだ。支援システムを作って各国との友好関係を築くために)」
「アンハルトや、早速ギルドに向かいブランデァに伝令をたのめぬか?」
「おいノキア王、ギルドまで……いや現地に行くっつても時間が足りねぇぞ」
そこへ現れたのはハーレイとウェンディであり、自分達が居れば冒険者を各国に瞬時に送れると提案する。
「そうか、その手があったか! このような事態になっては、転送魔法の件を出し惜しみできない事態だな」
「わかった、この魔法の件は、私が各国にうまく説明する!」
そして、ハーレイはアンハルトからヒーリングストーンの充電役としてシェシカを貸してもらい、ウエンディは単独で転移魔法を駆使し、冒険者達を各地の知っている人間の元へ送り出すことで話が進む。
「あなた? 浮気しないでね」
「す、するかボケっ!」
「あとブクレインには、今ちょうど、ミヤとエルが居ますので、支援は最後でいいと思います」
「わかった」
ハーレイ達は早速、アンハルト達を連れブランデァの元へ向かい、集められる全ての冒険者を招集し、現時点でギルドに居る冒険者を技量で2手にわけ、ハーレイは広大な土地をもつエウィータ王国へ、そしてウエンディはモルディナ王国へ連れて行くのであった。
そしてアンハルト達は、これから集まる冒険者達と1陣の情報を受けてから2陣での出発を予定していた。
「すまないアンハルト、出撃保留でっ」
「こんな時に『零の運命』が誰も出動せんとはっ、他の冒険者達からの不信感が募る一方だぞっ……やはり、ギルド序列がお前たちが2位というのは――」
「ブランデァさん! それは違います!」
「(黒竜――の件は極秘だが、ブランデァさんぐらい……俺から説明するか……これ以上、彼女達の悪評が立たないように)」
それから数時間後、各地で魔物が暴れ大混乱が続く中、ブクレイン王国の国境付近の森でも魔物が暴れていたが、サーミャとエリアルの活躍によりほとんどが撃退されていた。
そんな中、ウエンディが数人の冒険者を連れサーミャ達の元へ転移してくるのであった。
「サーミャちゃん、増援に来ちゃったわよ~」
「お、お母さん?」
「あれ? サーミャちゃんとエリアルちゃんね。ほとんど退治しちゃってるじゃない?」
「貴方たちが、ここに居るってロザリナちゃんから聞いてたから、一番、最後になっちゃってごめんね」
「――さぁ皆さん! 『バリア・ストーン』の設置と後始末をお願いします! 私はブクレイン王に説明に行きますので、この場は任せましたよっ」
(ブクレイン王……)
(エルちゃん、今、会うとややこしくなりそうだから、やめといた方がいいんじゃない?)
(そ、そうだね)
サーミャは、この場は増援の冒険者に任せ、ブクレイン王に会わずに帰り支度をしたいとウエンディに伝える。
ウエンディは、彼女達に王城で待機命令が出ているのが解っていたため、何の疑いもなくその提案を受け入れる。
そうして2人はその場を後にし、ミレイユの待つ孤児院へ戻るのであった。
その途中、国の入口付近でミレイユが彼女達を出迎える為に、心配そうな顔をして祈る姿で立っていた。
だが、無事な姿を見た瞬間、その顔は何か吹っ切れたような笑顔に変わった。
「おかえり2人共、もう片付いたのですか?」
「ただいま、おばあ様」
「いえ、ギルドからたくさん応援の冒険者が来てくれたからもう大丈夫です。それより子供達は?」
「ここにいると危険だから王宮に避難してもらったわ」
「私は、貴方たちが帰ってくるのを待つ義務があったから……」
「ごめんなさい、危険な目に遭わせて……僕は――」
「そんなことはありません。貴方はお父様と同じ魂を持っています」
ミレイユは、成長するエリアルがどこか手の届かない所に行ってしまう事を恐れていた事を自覚し、過去にしがみついてエリアル自信の幸せが何かわかってなかったと反省した。
「……もう何も言いません。貴方は自由に生きなさい」
「おばあ様……」
「よかったじゃねぇか、エル」
「サーミャさん、この子の事をよろしくお願いします」
「あぁ、任せときな! 姫の1人や2人守ってみせるさ」
「エリアル最後ですが、これをもって行きなさい! きっと役に立つはずです」
ミレイユが手渡した物は、以前、エリアル達が立ち寄り遺品として持ち帰った、父イスガ王の王冠についていた宝石であった。
「――こ、これは、……ひいおじい様の形見の宝石ではないですか?」
ミレイユはこの石は、イスガ王国に伝わる秘宝であり、必ずエリアルを守ってくれると。
しかしどう守ってくれるかという事は、言い伝えか気休めかはわからないが、お守り代わりにとにかく持って行ってほしいと願った。
「そんな、この石はおばあ様の大事な――」
「構いません、あなたが無事で戻って来てくれるなら、迷信にかけます!」
「わかりました。必ず帰ってきて、この石はお返しします」
(シャルちゃんに鑑定してもらえば何かわかるかもよ)
(そうですね)
「では、おばあ様、行ってまいります」
そして、2人は笑顔をミレイユに見せながら黒い空間へと消えていくのであった。
「(せめてあの子たちが無事で帰って来られるよう、その時まで祈り続けています)」
「(お父様達も見守ってあげてください)」




