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☆見知らぬ世界で、少女のお目付け役になりました!  作者: うにかいな
最終章 ~黒竜《ブラック・デンゴラド》~

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240話 血統

 最終決戦を前に、サーミャの転移魔法でエリアルは故郷のブクレイン王国に戻っていた。

そこで、ミレイユから重要な話があるともちかけられるのであった。


「おっと、あたいはお邪魔だな? 子供達と遊んで――」


「いえサーミャさんにも聞いていただきたいのですが、よろしいでしょうか?」


「? 構わねえなら」


そしてミレイユは、エリアルの出生について語り始めた。

エリアルは孤児院の前に赤子の時に捨てられていたと、物心ついた頃に聞かされ信じていたが、実はミレイユの娘ソレイユと、ブクレイン王国の近衛騎士団長ガレイドとの間に出来た娘であったのだ。


そして、父親である近衛騎士団長はエリアルが生まれる前に魔物との戦いで命を落とし、母親もエリアルを出産して亡くなってしまったのであった。

一人残された孫が不憫ではあったが、孤児院で特別扱いをしては、他の子供達から孤立してしまうことを危惧し、他の捨て子や親を亡くした子供達と同様に育てることにしたのであった。


「ちょっ待てよ! それってエリアルは名誉ある剣士の血筋だってこ――」

「そこじゃねぇっ! イスガの姫じゃねぇかよっ!」


「……」


ミレイユの話に困惑するエリアルはどう答えればいいか悩み沈黙していた。

その様子に誉美(ともみ)もかける言葉が見あたらなかった。

きっと突然に最終決戦の話しを聞かされたミレイユが、押し込めた思いを吐露したのだと理解はしつつも。


「いきなりそんなことを言われてもミレ――いや、おばあ様?」

「……死んでしまったスェインおじさんは、おじい様だったってことですか?」


「そうよ……あなたが20歳になったときに伝えようと思っていたのよ」


「(それじゃ、あの埋葬した王様は……)」


エリアルはますます、どうしていいのかわからなくなっていた。


「今まで隠していて、本当にごめんなさい」

「あなたは自分の目でイスガがどういう国か見てきたと思います」

「無謀な科学はこの世界を滅ぼす意味を知ってもらい、ガレイドから…つまり、貴方のお父様を通じて、私たちがイスガ人である事も、イスガが存在していた話をブクレイン王には話しをしています」


「そして、20歳になったら、あなたを第二王子と婚約者として迎え入れてくれるともおっしゃってくれてるの」


サーミャはその時、自分がこの場にいることを許された理由がわかり、ミレイユに食いかかった。

自分が父親ハーレイとのギクシャクした関係だった頃と重なって見えてしまい、孫としてまともに接してもらえなかったエリアルの今の気持ちが痛いほどわかっていた。


自分達はエリアルの決断なら全力で応援するが、本当にエリアルの為を考えているなら、本人の意見や考えは尊重すべきだと説得する。


「エリアルは、世話になったあんたに『ありがとう』と言いたい一心でここに来たっていうのに!」


「解っています。エリアルには今まで不憫をさせてしまったあなたには、幸せになってほしいの」

「だからサーミャさんにも聞いてほしかった……本音は戦いに行かないで欲しい、冒険者をやめてもらいたいんです」

「でも……確かに、そうですね。私は非難されてもしかたありません」

「エリアル、今すぐに答えを出してほしいのです、でなければ明日には……」


しかし、エリアルは自分の意思でいいというのであれば、自分は冒険者として生きたいとはっきり宣言するのであった。

ミレイユの悲願を無碍にするつもりはないが、自分にはお姫様は似合わないと。

そして、これからも今まで通り、自分の手で皆を幸せに守れる人間でいたいと。


ミレイユはエリアルが、自分の父親であるイスガ王のいつもの口癖を言われ、やはり血筋だと確信し信念を貫いてこそ彼女なのだと理解し、ひたすら謝り続けるのであった。


「いえ、謝らないでください……おばあ様」

「なら何故、僕が冒険者になることを許してくれたんですか?」


「それは、この世界をもっと知ってほしかったから……これからの貴方の経験として、うぅぅぅぅ――」



そんな静まりかえる部屋とは裏腹に、孤児院の外の妙なあわただしさにサーミャが気づく。


「……? おいエルっ、なんだか外が騒がしくねぇか?」


あわてて外に飛び出すと、逃げ惑う街人で混乱していた。

サーミャは逃げる人を捕まえ、何が起こっているかと問う。


話によると、近隣で魔物が大暴れして、ブクレイン王国に迫ってきていると大騒ぎしていたのであった。


ルティーナの言っていた早期決戦を決断した不安が的中したのか、(デンゴラド)の復活が近い影響だと判断した2人は、示し合わせたかのように様子を見に国境付近に出かけようとする。


それを見たミレーユは、これ以上エリアルに危険な目にあって欲しくないと願い引き止めようとした。

「本当に僕が、王家の血を引いているなら、人が困ってるのを見捨てて良いのですか?」

「そんな、人一人も助けられない王族なんか願い下げですっ!」


「よくいったぜエルっ! いくぞっ」


何も言えずミレイユは2人を見送る事しかできなかった。

そして、エリアルの放った言葉が、幼少期に父親との会話をフラッシュバックさせたのだ。



――ミレイユよ。我が国は、あらゆる先端技術を研究している。何故だか解るかい?


わかりません、どうしてなのですか? お父様。


それは人助けのためなんだ。あらゆる技術があれば、どんな状況でも困った人を助けられる。

私はね、一人でも多く民や、この大陸の皆を救いたいのだよ。

人一人、苦しみから助けられずして王は名乗れぬからな――。


「そうでしたねお父様……エリアル」





「本当によかったのかよ? エル」


「何を今さら、僕は僕ですよ」


(私は話がぶっ飛びすぎて、何もアドバイスできなかったけど、エルちゃんはこれていいと思う)

(ミレイユさんの気持ちもわかるけど、親なんて子供の道を決めたがる。自分の意思を伝えたのはえらいわ)


(そう言ってもらえると、救われます)


「でも、(デンゴラド)と戦う前に、これを実践で使える機会が来るとは思っていませんでした」


「ずっと思ってたんだが、それ槍だよな? なんで穂先を布で巻いてんだ?」


エリアルはおもむろに穂先に巻いてある布を解き、穂先の姿をあらわにする。

その穂先は異様に大きく、長さ40cm、幅20cmもあるのだ。

布で巻いていた理由は、納める鞘が完成する前に受け取った為であった。


「そうですね。この穂先や柄の部分も特注で、オブシディアンで加工してあるのでかなり頑丈なんですよ」

「それに刃の部分が大きいと、それだけ能力が乗せやすいってトモミさんが」


「なるほどな! それじゃ、いっちょ大暴れしようか!」


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