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24話 魔法使イ ~其ノ伍~

 ルティーナ達はサーミャが失踪する原因となった盗賊団との出来事を聞かされた。

サーミャの首輪は『呪いの首輪』と言われており、魔法を使うと首が絞め切られてしまうというものであった。

それを聞いた馬琴(まこと)はどうすれば首輪を外せるか模索を始めた。

 馬琴(まこと)は、自分の『能力(ちから)』を整理しなおした。



『能力』(ちから)は、漢字の――


・『画数』が多ければ多いほど、威力が増加する。

 同義の漢字であれば、画数に比例した威力が得られる。


・『サイズ』が大きければ大きいほど、指定した中心点を軸に効果対象エリアが広がる。


……ようは、小さい漢字でも効果範囲が違うだけで威力は変わらない。

しかし、文字の初期サイズはルティーナの手のひら12cm……首輪に対しては、それでも大きすぎる範囲。


確認することは、手のひらや拳以外で漢字が書けるかどうか?


 

(マコト……。そんなに悩むことなの?)


(俺は、ルナとは逆に首輪に【(おおきい)】を描けばいいと思ってたさ)

(でも、手のひらサイズでは、漢字が大きすぎるんだよ……)

(それだと、首輪を起点に12cm、つまり、サーミャさんの後頭部だけ変形してしまう……体を大きくしたりする場合は全体を同時に効果を与えないと、殺してしまうかもしれない――)


(そんなことまで、考えていたのね……。でも、このままじゃ)



数分間、黙り込むルティーナに見かねたサーミャは怒りを覚えた。

 

「結局、黙り込んで、何もできないいじゃないっ」

「アンハルト達に、ワケを伝えて……あと『いままで探してくれてありがとう。もう探さなくていい』と付け加えといて」

「あっちに真っすぐ10分ぐらい歩けば、小道に出るわ。そしたらすぐ街よ」


サーミャは小道の方向を指さし、2人を追い払おうとした。


そのしぐさを見た馬琴(まこと)は、【(とける)】を人差し指に浮かび上がらせようとし、思惑どおり1cmサイズの漢字が浮かびあがった。

それを察したルティーナはサーミャに首輪を外す方法が解ったから待ってほしいと伝えた。


「首輪っ首輪って! もうやめてよっ! 私の事は放っておい――」


「あ~ぐだぐだうるさいっ! 最後でいいからっ、もう一度ぐらい人を信じなさいよっ!」

「これがダメなら、勝手に死ねばいいわっ! あなたがそうしたいと、本気で思っているのならねっ! 私には、全然見えないんだけど」


「あたいだって……うううぅ……あなたの『能力(ちから)』で……」


ルティーナは、小さくうなづき【(とける)】を両手の人差の先に描きで、サーミャの左右から首輪に触れた。

漢字が首輪だけに転写されたことを確認して、馬琴(まこと)は『起動(きどう)』した。

すると予想通り、首輪の2箇所だけが溶けてサーミャの首元からこぼれ落ちたのであった。


床に落ちた首輪を見つめながら、サーミャの瞳から大粒の涙が溢れ出していた。


「は……外れた。本当に外れた……。あ、ありがとう……」

「ひどいことばかり言って、本当にごめんなさい。あなたを信じてよかった…………」


「そう思ってくれるなら、アンハルトさん達には自分で謝罪するなら許してあげるわ」


「ありがとう……ありがど……ありが――」


サーミャは、ルティーナに抱きつき号泣するのであった。


(やっぱり……抱き着きやすいんじゃないか? お前)


(あははは、でも、よかったわねサーミャさん。もう少しこのままにしてあげよ)




 しばらく泣き崩れていたサーミャも落ち着きを取り戻し、3人はこれからどうするかを語り合うのであった。

サーミャの願いは、「ヴァイスとの思いでの品『エクソシズム・ケーン』を取り戻したい」「盗賊団を壊滅させたい」こと。

それが叶うまで、アンハルト達には自分を見つけたことを伝えないでほしいということであった。

 

 ルティーナは了承したうえで、とりあえず昼前に一緒にモルディナ王国の街まで移動し、とりあえず宿を見つけるのであった。

自分は首輪の事を調べるために鑑定師=アンハルトの居るギルドに戻り、2人は宿に数日居てほしいと伝えた。

鑑定できなくなるので、許可するまで魔法を使わないという条件付きで――魔法が使えるからと勝手に飛び出さないようにと、お守りみたいな意味もこめて――。



馬琴(まこと)は信頼関係を築くために、本名はルティーナであることを明かさせ、冒険者を始めた理由と『能力(ちから)』は自然に身に憑いたものだと簡単に説明をするのであった。

サーミャも『能力(ちから)』や理由の話よりも、ルティーナがシャルレシカより年上で19歳であることに一番震撼した。



「……そうか、首輪の事にヤケにからんできた理由はそういうことだったのか」

「でもそうすると、ルティ……じゃなかった、ルナリカの親父(おやじ)さんを暗殺しようとした首謀者と関わりがあるってことだな」


「あのサーミャさん、言いづらかったらルナでいいよ。どうせ偽名だし、みんな、そう呼んでいるから」


「ところでぇ~ミヤさんはぁ~、このまま髪をのばすのぉですかぁ~?」


「み、ミヤ? ――あ、あたいのことかい?」


「あぁ~なんかぁ、ミヤさんの方がぁ言いやすくってぇ~。私もシャルでいいですよ~」


「ぷっ、なんの交換条件だよソレ。ミヤか……気に入ったぜ! なんか、新しく生きていこうって気になれたよ。ありがとなシャル」

「髪なぁ~やっと首輪も取れたし、洗うのめんどくさかったし、また切ろうかな……」


「もったいないですぅ~。とってもぉお綺麗ですよぉ」


「やめてくれよ。女っけ無いってみんなに言われてきたんだぞ……今まで――」

「……って、ほんとか? シャル」


 サーミャは、今までの殺意に満ちていた表情が嘘のように消え、子供のように無邪気にはしゃいでいた。

その様子に安堵したルティーナは、2人を残し、今日中にモルデリド王国まで移動を始めた。


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