234話 提案
ルティーナ達はリュウゼから驚愕の真実を聞かされ困惑するも、黒竜対策に必要な情報を聞き出せたのであった。
そしてリュウゼの遺体をそのまま置いておくわけに行かず、リュウガの時のように【硬】で全身を包み込むように描き、サーミャに『アース・クエイク』で地中奥底へ鎮め埋葬し、避難していたシャルレシカと合流し、ガレイド城へ帰還するのであった。
帰還後すぐにルティーナはガレイド王に対して、火山噴火の原因と対策を終えたことを説明した。
原因となった銀竜の件については、騎士団が戦闘していたため、混乱を招かないように『未確認の空飛ぶ巨大な魔物』として説明し、戦闘で勝利し消滅したと報告した。
ノキア王にも通話で簡単に状況報告したが、正体不明の魔物が存在していた事について、他に居るのではないかと不安の声を漏らしていたガレイド王に対して、後日、情報共有と対策について話し合う場を設けるように話をつけてもらう。
そして翌日、ノモナーガまで戻った5人は、王に銀竜から語られた内容を伝える為に王室に向かうのであった。
その中、馬琴は黒竜との闘いに備えて、ある保険を考えていた。
(――マコト、本気なの?)
(皆は楽観的だけど、素直に黒竜が条件を飲むと思えないんだ……)
(マコトの不安って、当たるから嫌なんだけどね)
(だからと言って、あいつを?)
(……ノキア王への説明はまかせたぞ)
「皆の者、よく無事で戻ってきてくれた」
「しかし黒竜は、先代王の過ちで召喚していたとは……そして隠蔽するために勇者を始末しようとしていたなんて」
「そうですね。おそらく、それが過去の真実だと思います」
「余の祖父のやったこととは言え、今後はこのような過ちを起こさないように償っていく。ありがとう」
「しかし、銀竜と遭遇して、そこまでの情報を入手し打ち勝つとは大したものよ」
「これならお前達が、黒竜と対峙しても――」
「今回、戦った竜からハッタリかもしれませんが、奴の体長はさらに10倍以上だと言っていました」
(おいおいルナさん? ハルトさんの話を盛るなよ)
「10倍だとしても、50m級の魔物ではないか!」
そしてルティーナは本題である、黒竜が復活の件について語る。
占いではあと6カ月後に活動を行うとされているが、ルティーナ達が封印を施した長明を倒してしまっていることで、すでに復活していると伝える。
「なんだって! それじゃ活動を――」
しかし、黒竜は80年前の闘いの怪我が癒えるまで、つまり完全体に戻る半年後まで活動はしない事が占いの時期に重なると伝える。
「なるほど……それであれば、こちらから奇襲をかければ叩けるのに、どこに居るのかわから――」
「大丈夫です、目途は付いています」
「「「なんと!」」」
「そこで、奴が完全体になる前に勝負をかけたいのですが、それでも楽勝ではないと思います」
「とにかく目標を2か月後にして、準備をすすめていきます」
「そこで提案なんですが――」
ルティーナはあえて黒竜の脅威をしらしめたのは、馬琴の提案を通しやすくするためのハッタリだった。
その雰囲気を利用し、対策案としてタイヘイを封印した『サモナー・ストーン』を貸してほしいと要求する。
――彼を黒魔法剣士の勇者として召喚すると。
「何っ! あの罪悪人をか! 仮に余が許可したとしても……共に戦うというのか?」
今回の騒ぎで、偶然、ガレイド王国の鉱脈で『サモナー・ストーン』の原石を大量に発見したことを説明した上で、サーミャの魔法を馬琴達に使う前に試しておきたい本音も正直に伝えた。
「あれでも彼は闇魔法使いの勇者として召喚されるはずだった男なのです。彼を脅してでも『能力』を使わないと苦戦は必死です」
「うぐ……そ、そうかもしれぬが……また、反旗を――」
「それなら考えがあります」
「その前にダブリスさん、『カース・ストーン』を用意できますか?」
ルティーナも正直、朝時の事は信用はしていないため、『カース・ストーン』にありえない条件を付与することでも、脅しになると考えていた。
「それなら……わかった、なんとか入手してみよう」
「お前たちに任せるしかないのが情けないが、あまり無理をするでは無いぞルナリカ!」
「出来ることであればなんでも助力するからな」
「ありがとうございます」
ノキア王に全てを伝え終えたルティーナ達は城を後にし、久しぶりの自分たちの拠点に戻るのであった。
折角、建てたにも関わらず、まだ数日しか過ごせないくらい色々な問題に巻き込まれていたが、それらから一気に解放され、初日はみんなで自由に行動し思いっきり平和を味わうことにした。
――そして、その日の夜。
「いきなりですが、明日から当面、天気のいい日は皆に空を飛んでもらいます!」
「「「「はぁ~?」」」」
いきなりのルティーナの一言に全員は唖然としていた。
しかし、敵は空を飛ぶ魔物。つまり、地上からでの攻撃は不利な点は否めなかった。
そのためにも空中戦になれる必要があると強調するのであった。
翌朝、ルティーナは自分も含めエリアル以外を小さくし、エリアルの荷物鞄に入りこみ、彼女の愛馬でルティーナの家のあるフォレスタ平原まで駆ける。
「さぁ、みんな着いたよ」
「結構、早かったねぇ、これは移動方法としてありだね」
「さすがに、久しぶりの乗馬での遠出なんて気分があがっちゃってさ興奮しちゃってるよ」
「その興奮している間に、背中を出して出してっ! さぁ、皆も順番に脱いだ脱いだ! カンジを描くから並んで並んで」
そしてついに、全員の背中に翼が生え、ルティーナから飛び方をまず教わるのであった。
「――じゃあ早速、飛んでみようぜ! あたいは、皆の中で一番まともに飛ぶ自信があるぜ」
「なんたって、才能の申し子だからな。あははは」
「体術に長けている私の方が、こういう体幹系には向いてますってよ」
(なんだ、この主婦の見栄張り合戦みたいな雰囲気は)
(いいんじゃない? 久しぶりに遊び気分なんだから)
――それから1時間後。
「ぜぇぜぇ……なんで、まっすぐ飛べねぇんだぁ」
「さすがに、格闘とは違うわ」
「お腹ペコペコですぅ~」
「だがよぉ、エルは器用だな……負けたぜ」
「トモミさんから助言をもらいながらやってるからね。でも、背中が痛いよ……師匠との大剣の特訓より筋肉痛になりそうだ」
「ルナ、あたいが甘かった……謝るよ」
「ところでよ、まともに飛ぶまでどれくらい時間がかかったんだ?」
「私は、まともに飛べるまで1ヶ月かかったわよ」
「げぇっ、無理じゃねぇか? 黒竜と2か月後に戦う予定なんて大丈夫か?」
「私も毎日何時間も飛んでただけじゃないから、皆なら1週間もあれば慣れるわよ」
「まともに飛べるようになったら、今度は攻撃の練習、そして、デグルーイとの戦闘実践もやるわよ」
「「「「「ひぃぃ~」」」」




