231話 再戦
ルティーナの指示通りシャルレシカは騎士団を馬車の待機場所へ向かい、その場を急いで去っていく。
そして地上に這い上がってくる竜のせいで地震が激しくなっていくのであった。
遭遇まで数分も無い中、馬琴は作戦を立てる。
問題なのは、たとえ一度に1人とは言え、誰か1人の思考の中を読まれてしまう事――。
そこを逆手にとり、エリアルには、誉美と単独行動で臨機応変にする様に指示する。
サーミャには土魔法で『岩』を使う物理攻撃で竜の行動を制限させるようにし、そして竜戦は初めてとなるロザリナには、『シャイン・デベロップ』がどの程度通用するのか、自分とサーミャを気にせずに攻撃させることにした。
「わかった。とにかくどう使えば有効か試してみる」
「だめだったら、『シャイン・ウォール』を使って、みんなの防衛にまわるわ」
ガバババババーーーっ!
「みんな、来るわよっ!」
全員が作戦を確認し終わるころ、地面が裂け、中から竜が雄たけびをあげながら飛翔を始めるのであった。
「堕ちろ~っ! 『ロック・バスター』っ5連打っ」
『貴様らっさっきはやってくれたな! 下等生物の分際でぇぇぇ~っ!』
「『ランス・オブ・インフィニティライジングプラズマ』っ」
(【伸】×8っ【雷】)
『ちぃっ!』
攻撃を裂けるように竜は地上に降下し、4人を踏みつぶすことにするのであった。それを逆手にロザリナは、『シャイン・デベロップ』で左拳に光を集中し1mほどの固まりを作り、踏み込んでくる脚に殴りかかるのであった。
その効果は絶大で竜の脚の甲羅を破壊するのであった。
『くそっ! こいつら順応しすぎだろ! 俺様が奇襲してくることを読んでやがっただと? どうなってやがる』
(やはり、さっきの爆弾の怪我が治ってる……自然治癒できるとしても早すぎる)
『(くそっ、こいつらの思考を探りながら、様子を見るか……)』
『そうだよな、気になるよな? この土地は資源に恵まてれいるみたいだな――』
「資源? ですって……まさか」
竜は地割れに飲み込まれた時、彼は死を覚悟していたが、偶然、地下には『ヒーリング・ストーン』の原石が大量に存在していた。
竜の体質は、原石を捕食することでその特性を体全身に細胞レベルで反映することができる。彼は偶然、それを捕食したことで、時間はかかったが傷を全快することができたのだ。
(! まさかっ!)
『あぁ、そうさ食べたのさ』
(もしかして、魔法が利かないのも……)
『それか? よくわからんが、お前らの言う『マジックシール・ストーン』というやつの原石を捕食したらしいな』
(思考をまた……)
「それじゃ、『サモナー・ストーン』も食べる為に探してい――」
『! 俺が何を探していたか知っていたのか?』
(やはり! 召喚を食べて……まさか)
「ルナっ! 攻撃の手を弱まってるぞ!」
竜に思考を読まれたとしても作戦の事だけは考えないようにしていたが、誉美はまだ連携に不慣れであったため、そううまくいかない。
『(この女にも別の意識がある……だと……こいつら一体?)』
『(そういえば、さっき意識介入できなかった小娘は居ない? 隠れているのか? どいつもこいつも人間ではないのか?)』
竜はエリアルの攻撃だけ独立し皆と連携していないことを理解し、全員の攻撃をいなし始める。
そして、ロザリナに殴られ負傷した脚もほぼ治癒が終わっていた。
(くそっ、勝手に治癒しやがる……持久戦は不利だな)
『時間なら、いっぱいあるぞ……そうか、俺の事が知りたいみたいだな? 今度こそ、俺様に勝ったら話してやろう』
『その代わり、お前たちが負けた時は解ってるよな? 死なない程度でいたぶってやる』
自然に怪我が治癒する上、先の闘いとは違い油断しない姿勢で戦い始める竜に、ルティーナ達は動揺する。
それでもサーミャは力押しで、再び飛翔を始める竜の翼を『ロック・バスター』で再び攻撃を始めるが、竜は息吹を放ち、いとも簡単に粉砕するのであった。
『ふんっ、たかが岩の塊っ。先ほどの水蛇の攻撃の方がマシだったぞ』
竜が空に舞ってしまっため、エリアルは大剣を盾にし攻撃をしのぎつつ、槍でけん制を続ける。
ロザリナは攻撃する術がなくなり『シャイン・ウォール』で、息吹に対する防御に徹することにした。
『今度は、雨という隠れ蓑はないぞ! 不意打ちは効かぬぞっ!』
しかし、サーミャとエリアルの攻撃は無駄ではなかった。
その隙にルティーナは【透】で姿を消し、同じく飛翔し竜の背後を取っていたのだ。
『(むっ! 男の意識を持つ小娘が消えた! こいつも転移魔法を?)』
『(どういうことだ? 意識もない……)』
竜はルティーナが隠れていないか、サーミャ達の攻撃をかわしながら探し始める。
その姿を見た誉美は1つの疑問を感じる。
(ねぇエルちゃん? あいつ、ルナちゃんを探してるよね?)
(もしかして、見えないと意識介入できなかったりして)
(まさか、そんな単純な――)
『そうかっ、ルナという娘は姿を消しているのかっ!』
(えっ、私の意識が読まれた? ごめ~ん、馬琴ぉ~バレちゃったよぉ~)
((ぷっ) でも、トモミさんの考えは当たりかも知れませんよ)
『くそっ! どこだっ小娘っ』
エリアルは全然関係のない方向にむかって、竜は姿が見えないと意識介入できないことを大声で叫ぶ。
それを聞いた馬琴は、作戦を考えても読まれないことに安心する。
『(余計なことを)』
焦る竜は、しきりに地上に向かって息吹を放ち続け、ルティーナを炙りだそうとしていた。
サーミャとエリアルにはルティーナの姿は見えないが、竜の背後にいることを知っているため、知らぬ顔で攻撃を続け、空にいることを悟らせないようにした。
(でも私達はどうするの? 空から攻撃したら一発で存在がバレちゃうわよ?)
(またあの爆弾を使うの?)
(いや……)
(外部からの爆発は結局耐えられてしまったからな、やはり内部からでないければ効果がない)
馬琴は、次の一手を悩んでいた。
竜が地上に出てくる前に、仕込みで地面にいくつかの漢字を描いていたが、漢字を発動する前にその場を破壊されてしまったため消滅していたのだ。
「ルナぁ、出てくるなよぉ~っ! あたい達は大丈夫だから、こっちに来るんじゃねぇぞぉ」
次の行動を起こさないルティーナに、しびれを切らしたサーミャは白々しく攪乱を始める。
(助かる……だが、いつまで持つか……)
『くそっ! どこだぁ! どこから狙ってやがる!』




