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☆見知らぬ世界で、少女のお目付け役になりました!  作者: うにかいな
最終章 ~黒竜《ブラック・デンゴラド》~

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223/250

223話 帰国

 ルティーナ達は、春斗(はると)達との永遠の別れを告げ、悲しみを背に半月ぶりに、ノモナーガ王国へ戻ってきた。

そして――。

  

「「「「きゃあ」」」」


「「「「なんだなんだ!」」」」


「「「「せ、狭いっ」」」」


「なんですか? この超柔らかいものは?」


「ふにゃっ! 私の胸を揉まないでくださぃ」


「つか親父っ! ここはどこだ!」


「落ち着けサーミャちゃんっ! 転移して帰ってくるのは解ってたが……ぐっ」

「まさか、俺の部屋に10人以上で転移してくるなんて聞いてねえぞっ」

「(俺もモルディナ王国でやらかすとこだったのか……気をつけよ)」


「あらあらサーミャちゃんご立腹ね」

「おかえりなさい、お母さんですよ」


「(げっ)」


「え、ウェンディ様もいらっしゃってたんですか?」


「そりゃ、夫婦ですものぉ~」

「一緒にいて何か問題でも?」


「つか、まだ結婚してねぇっつうの!」


「あれれ?」

「ところでシャルレシカちゃん、なかなかな物を……張りがあってうらやましいわ」


「揉まないでくださいぃ~」


「「「「「(ご、ごくり)」」」」」


(あ、あのエルちゃん? シャルちゃんが二人いるように見えるんだけど……)


(あはは、彼女はミヤのお母さん予定の魔法使いのウェンディ様です)


(予定って、何? つか、若くない?)


(確か、今年36とか言われてましたよ)


(え、私より年上なの? それにしてもスタイルもいいし ううう……)


(?)


「あ、あのさぁ、俺も居るんだが……」


「ヘイガル様?」



彼らは、すぐに戻ってくると思っていたルティーナ達が戻って来なかったため、その間にやるべきことを進めていた。

それはハーレイとウエンディが婚姻することとなり、同盟国のモルディナから魔法師団長が居なくなるという事態は国としては大問題であり、ノキア王と相談の上、近衛師団長のヘイガルがモルディナに出向することになり引き継ぎの打ち合わせをしていたのだ。


「今回の戦争の件で剣兵を強化したいと言う、あちらさんと、利害を無理やり一致させられちまったってわけさ」


(……大変だなぁ)


(あはは)


(ルナ、それより――)


「あの、ノキア王に拝謁したいんですが……」


「あぁ、首を長くしてお待ちかねだぞ」


ヘイガルは気を使い、自分がノキア王にルティーナ達が戻ってきたことを伝える為に部屋から出て行った。

ルティーナ達が待っている間、アンハルト達は自分たちは一度退散すると城から去っていく。


そして1時間程の時間が経過し、デーハイグがハーレイの部屋を訪れノキア王の下へ案内する。

案内の途中、デーハイグは、話しかけたそうにするルティーナと、隠そうとしても思わず睨んでしまうロザリナの気配に気付いていた。


「おふた方……何をおっしゃりたいか、だいたいの事は察しております」

「色々あるとは思いますが、ノキア王との話の場でよろしいでしょうか?」


「「わ、わかりました」」


(……元、暗殺部隊の2代目の隊長……時期的にハルトさん達の暗殺に関わっていたはずだよな)


「(リーナ、わかってるよね?)」


「(う、うん……)」

「(この人が、おじいちゃん達を苦しめた張本人だったの? ……)」



 そして部屋に到着したルティーナ達は、ノキア王とデーハイグ、ダブリスの3人と対峙するような位置で円卓を囲み話し合いが始まった。

ノキア王もだたならぬルティーナ達の気配は感じ取っていたが、流れとして先に世界を混乱におとしめた長明(ながあき)を倒したことについての感謝の意を伝えるのであった。


今回の功労として、ルティーナは念願の金の冒険者、サーミャとロザリナは白金の冒険者に昇格し、金10000枚を贈呈することとした。


(まさか、私たちをお金で?)


(慌てるなルナ)


(でも、ついに念願の金、金だよっマコト)


(結局「金」に釣られてるじゃねぇか……)


(そのダジャレ……おじさん臭いっ!)


「サーミャとロザリナは、白金だが国としての勧誘は行わない。ギルドでは金の冒険者として活動してくれ」

「報酬は白金の付加報酬を受け取ってくれたまえ」


「――それは、表面上の国家間の兵力均等の為ですか?」


(……それじゃ、勇者隠しをしていた頃と何も変わらない)


「痛い事を言うのだな……とりあえずは、こちらからの話は以上だ」

「では、待たせたな」


「「「「「……」」」」」


「そうだな、それ以前に不満があるは察している……」

「ナガアキ……つまり前勇者と戦って、そやつが悪に染まった理由を知ってしまったのであろう」


「そうですね、やはり気づいていらっしゃったんですね」

「短刀直入に、もしマコト達が召喚されて無事に黒竜(ブラック・デンゴラド)を討伐した後、彼らをどうなさるおつもりだったのですか?」


「……」

「本音を語ってよいか?」


「構いません。納得のいく回答をいただけるのであれば」

「お答え次第では、そちらにいらっしゃる暗殺部隊と事を構えることも考えております」



ルティーナの毅然とした態度に、ノキア王は自分の返答次第では、討伐は拒否するという意思を理解した上で話しをしようとしていた。

そこへデーハイグが割り込む。


「大変申し訳ございませんノキア王、私から先にお話しさせていただいてもよろしいでしょうか?」

「先ほどからロザリナ様からの視線が殺意に満ちておりますので」


「……そ、そんなつもりは」


「お気になさらず」

「彼らが一番問題視しているのは、『勇者暗殺』の件でございましょう」


デーハイグは自分が暗殺部隊に入隊した60年前のことから順に語り始めた。

そしてロザリナに対して一言、その当時には勇者暗殺という命令は一切出ていなかったこと信じてほしいと伝える。

彼は、あえてシャルレシカに記憶を読まさずにいてくれる敬意と、嘘を言っても意味がないことを理解した上で。


デーハイグが当時の隊長が引退し、2代目として引き継ぐときに創設した経緯と、あることを口止めされていたことを話してくれた。


創設経緯はルティーナ達が知っている通り、国同士の戦力が偏らない為の勇者の存在を隠しつまり、抹殺するために創設された組織であることは間違いなかった。


しかし、想像とは違う話しを聞かされた。


暗殺部隊創設の話しが持ち上がる数日前の話――。

初代隊長であったギャクレンはもともと闇魔法使いの金の冒険者としてギルドで働いていた。

そして任務で訪ねていた森で狂暴な魔物の集団との激闘の末に殺されかけそうになっていた所へ、偶然、通りかかった黒竜(ブラック・デンゴラド)討伐へ向け修行をしていた勇者一行に命を救われたことがあったのだ。


その恩義から、王の命に背き、勇者を長年追い続けた末に始末したと虚偽の報告をしていた。

デーハイグに引き継ぐときに、もし今後、生き延びた勇者が我々に牙を向けぬ限り、この話は伏せていてほしいと懇願されていたのだ。


そしてデーハイグが3代目に30年前に引き継ぐ時には、その時の話から15年経過した時点でも特に活動する様子はなかったためこの話は一切伝えておらず、4代目のダブリスは当然のごとく、そのことを知らないのであった。

しかし今となり、長明(ながあき)黒竜(ブラック・デンゴラド)を利用して国家崩壊を目論んでいたと知り、自分が次の世代に真実を伝えなかったことにわだかまりを持っていたと語るのであった。


(しかし、ナガアキは逃げ延びたと言っていたが、実は見逃してもらっていたのか……その事を知ってさえいれば――)

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