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☆見知らぬ世界で、少女のお目付け役になりました!  作者: うにかいな
最終章 ~黒竜《ブラック・デンゴラド》~

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221話 誉美《ともみ》

 春斗(はると)の『能力(ちから)』で、エリアルの中に存在している誉美(ともみ)の意識に介入を試みる。

すると、エリアルは何かの気配を自分の中に感じるようになった。


(……トモミさん? トモミさんですよね?)


(! だ、誰?)

(ここは一体どこ? 老人と少女? 私は結婚式の最中……馬琴(まこと)! どこっ!)


(トモミさん! 落ち着いてく――)


誉美(ともみ)はエリアルの視覚情報を自分が見ているかのように錯覚し、エリアルの問いかけも聞けないほど錯乱していた。

そのうちに、自分が水晶の中に閉じ込められていた時の記憶を思い出す。


(ち、違う、そうよ! 私は砂漠の上にポツンと何かガラスのようなものに閉じ込められて……)

(そして、その中で助けを求めていると、一人の男性が近づいてきて、剣を私に突き立てて――)


(そうですトモミさんは、その剣に意識だけが乗り移ってしまったんです)


(――ど、どういうこと? って貴方、誰?)


エリアルは自己紹介をし、誉美(ともみ)の身に起こったことを説明していく。

誉美(ともみ)との対話に集中してしまったエリアルは黙り込んでしまう。

それを見たルティーナは、いつも自分たちが会話している時はこんな感じになっていることを理解する。


(まるで、放心状態だな)


(いつも、みんなが心配して声をかけるわけね。これからは気をつけましょ)


(今、必死に事情を説明してくれているのだろうか)



誉美(ともみ)はエリアルの中に自分の意識があることと、目の前にいる少女の中に、婚約者である馬琴(まこと)の意識が同じように存在していることを理解した。


(あの子の中に……馬琴(まこと)が)


(そうですよ)

(トモミさんはマコトと勇者としてこの世界に召喚されるはずだったんです)



 エリアルの中で誉美(ともみ)との意識が芽生えた事で、長い時間を経て、ついに馬琴(まこと)はルティーナとエリアルを介して奇妙な状況ではあるが、会話ができるのであった。


そして誉美(ともみ)はエリアルに、今、自分が置かされている現状を理解した上で、馬琴(まこと)に伝えてほしいとお願いした。


「あの、トモミさんがね――」

「自分も怖いけど、1人だけ助かっても嬉しくないから、皆と一緒に戦うって」

「それに、今、自分が居なくなったら、僕を見殺しにすると同じだから、それはやりたくない言ってくれました」


(だってさ、マコト)


「普通なら巻き込まれて嫌になるはずなのに、とても勇敢で素敵な女性ですね」


(まぁ、俺の惚れた女だからな)


(のろけ、ご馳走さま)


(むほんっ。あ、ありがとうって伝えてくれ……)



無事に意識が繋がって安心したが、春斗(はると)は自分の力とは異なることが気になっていた。

結果、2人共、刻印魔法の使い手として召喚されるはずだったが、馬琴(まこと)は自分と同じく触れることで能力を発揮するにもかかわらず、誉美(ともみ)の能力は触れるという観点では違いないが、持っている剣の刃の部分にだけ能力が展開される異質のものであった。


彼の推測では、本来はルティーナのように直接触れたのが人間ではなく、誉美(ともみ)の場合は剣に触れてしまったため、結果、無機物に憑依してしたことで意識が保てなくなったのではないかと言う。


そして、その弊害で偶然に剣刃に漢字の『能力(ちから)』を剣に投影されるようになり、その内に剣の中から使用者のエリアルに同調しつつ意識が移ったのではないかと。


(剣で突かれた恐怖から、刃の部分に過剰反応したのかもな)


「だから、僕が知っている魔法の知識とやりたいことが、無意識のトモミさんに伝わり、カンジってやつで再現してくれていたんですね」


「だが、1つだけ疑問があるんだが」


(そう、俺も疑問が)


(?)


「エリアル、そこに飾ってある斧を持ってくれないか?」


「え、えぇ」



 エリアルは斧を手にし、春斗(はると)の言う通りに氷剣を使う時のイメージするように指示されるのであった。

――すると。


「『ソード・オブ・ブリザード』」

(トモミさん、氷魔法を……)


(そうだ! その言葉……。【(こおる)】、『起動(きどう)』っ)



すると、斧の刃先の部分が氷をまとい始めた。

それは春斗(はると)馬琴(まこと)の予想通りであり、剣だけでなく持っている物であれば、その刃の部分に効果を及ぼす『能力(ちから)』であったのだ。



「剣以外でも、こ、こんな事ができたのか?」

「確かに、剣士だから剣以外で戦わないし、その時しか魔法を使うことはなかったからね」


「ってことは槍でも、出来るんじゃない?」


「それより、この斧の冷気が半端ない……これが、意識がつながった恩恵?」


「ということは漢字を転写するのではなく、直接持っている物の先に伝播する『能力(ちから)』を持っていると結論づけたほうがよさそうだな」


(手で持っている部分はそのままなんだな)


(私達のとはやっぱり違うわね)


「エル、更に強くなっちゃうわね」


「あぁ、でもトモミさんありきなのは否めないけ――」


すると、大きな地鳴りのような音が響き渡る。



 ドカーンッ!

 ボーンッ!

 ズバババーンッ!



外では、サーミャと尼帆(まほ)から講義をうけたロザリナが模擬戦を初めていたのであった。


「もうやってるの? あの2人……」


(二人?)


(外に僕達の仲間が居るんです。おそらく1人は観戦しているので、全員で3人居ます)

(他にも、『碧き閃光』って冒険者パーティーも居るので、紹介しないといけませんね)


(よろしくね、エリアル)


(僕の事はエルと呼んでください)


(わかったわ! エルちゃん)


「それじゃ、僕達も混ぜてもらおうか? ルナ」


「あはは」

「ハルトさん、ありがとうございました」


「それじゃ、私も連れて行ってくれないかな?」

「(君たちには私達の尻ぬぐいをさせてしまうことになるとは……本当にすまない)」


そして、3人も盛り上がる外へ移動するのであった。


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