22話 魔法使イ ~其ノ参~
ルティーナは、シャルレシカは対象者が利用していたもので色々調べることが出来る能力で魔法使いサーミャの居場所を探そうとしていた。
しかし、ぼんやりとした場所しかわからず、水晶には暗い闇がかかった状態であった。
2人はとにかく水晶に映ったモルディナ王国とモルデリド王国に国境にある山脈を目指して現地へと向かった。
しかし、山脈を飛翔して越えようとしたが、その姿を謎の人影に目撃されてしまうのであった。
ルティーナ達は飛んでいるところを目撃されてしまい、変な噂が広がり行動がしにくくなることを懸念し森に逃げ込んだ人影を追うことにした。
シャルレシカを先に元の姿に戻してもよかったが、彼女は足が遅いため、2人で追跡するには懐に入れたまま追跡する方が賢明と馬琴は判断した。
(まさか、こんな時間に人が居たとは……俺としたことが……くそっ)
(そこまで気に病むことなの?)
(『あのコ、空を飛んでましたよ~』なんて、噂なんか流されたら、人探しどころじゃなくなっちまうぞっ……)
(だから、眼立つ飛翔行為は最低限にしようと思っていたんだが……その矢先)
(しかし、どうやって、追いつくか? 追いかけても、体格差がでかいなぁ……どんどん差が――)
(マコト……完全に見失なっちゃったじゃないっ。こっちで合っているの?)
草むらをかきわけた跡と、走っている音はこの方向を確かめながら追っていたがその内音がしなくなるのであった。
しかし、その様子を見ていたシャルレシカはルティーナの懐で索敵をしていた。
人の気配は1つしかないらしく、このまま500m先で止まっていると情報を伝えるのであった。
(とにかくこっちの事情を話して、秘密にしてもらうしかない……)
(いきなりサーミャさん探しどころじゃなくなっちゃったよ~)
しばらくけもの道を道なりに進んでいくと、わかりにくいが草木に囲まれた小屋が目に入るのであった。
シャルレシカは、そこに誰かが居るのは間違いないのですが、かなり巨大な力ではあるが悪意はないとルティーナにひそひそ声で語りかけた。
ルティーナはシャルレシカを外に出し漢字を解除し、待機させるのであった。
(とりあえず、ルナ、入ってみよう! 巨大な力ってのが気になるけど、シャルが悪意がないって言うなら、大丈夫だろ……)
(念のため、両手は何も持たずにいろよ!)
(わかったわ!)
「(シャルはそこで待ってて、悪意に変わったら叫んでね)」
「(はぁ~い)」
そしてティーナは、小屋にゆっくり近寄り中の様子をうかがう。
(さすがに、強引に中に入ると泥棒になっちゃうわよね)
(外に出て来るのを待つか? それだと……いつになるかわからないしな)
(中から出てきてもらうのが――)
馬琴はあることを思いつき、ルティーナに小屋の壁に手を当てさせた。
そして【暑】が小屋を包むぐらいの大きさになるまで描き、小屋を蒸し風呂のような状態にしたのであった。
しばらくすると、さすがの暑さに慌てて中から人が飛び出してきたのであった。
「ぶはっ、なんで暑いのよぉっ? 山火事っ……?」
「じょ、女性……?」
暑さのあまり、くるまっていた布から顔をさらけだしたその姿は、やさくれたおももちで長い金色の髪を首に巻き付けていた女性だった。
そして、ルティーナに目を合わせた瞬間、首元を必死に隠そうと汗だくにもかかわらず髪の毛を巻きつけるのであった。
「まさか、あなた、サーミャさん……」
馬琴は、おもわずルティーナにそう言わせてしまった。
女性はにらみつけて逃げようとしたが、ルティーナにすぐさま腕をつかまれた。
「私は、ルナリカ=リターナ……これでも冒険者よ!」
「冒険者だぁ? まだ10? 11歳ぐらいだろ?」
しかしサーミャは自分の正体を初見で見抜かれた事と、幼い容姿には見合わない人間とは思えない振舞いに、自分をおとしめた盗賊団が油断を誘って始末しようと送り込んできた刺客だと暴言を吐く。
殺すなら小屋事爆破していると誤解であること、発見できたのもシャルレシカの占いのおかげであり、アンハルト達が2年間探し続けていた事を説明するルティーナであった。
「そして、羽は私の『能力』なの……化け物なんかじゃないわ。だから安心して、話だけでもしませんか?」
「それにその『能力』って? そんなの聞いたことも見たこともないわよ。 まさか、あたいの知らない魔法……なのか?」
馬琴はルティーナに、サーミャに長い髪を首に巻き隠したのは、首が締まって死んでしまう首輪でないかと探りをいれさせた。
サーミャはアンハルト達ですら知らないことを知っているルティーナに警戒心を覚えたが、自分の父親を殺そうとした連中がその首輪と同じもので死んだ現場に居合わせた過去を説明した。
だが馬琴には違和感があった。
あの時は装着して時間差はあったもののギーダンは30分もしないうちに首が締まっていたが、サーミャは2年近くそのままであったため偽物か脅しの類でないかと。
「そうかい、それでこの首輪の事を知ってんだな」
「こいつは、『私が魔法を詠唱したら首輪がしまる』らしいわ……それに、自分でも外せない……」
「そうよ、この首輪は切れないし、ぴったり首に巻きついてしまっているのさ……せめて腕なら切り落としてしまえば……首じゃぁ……」
サーミャは、涙を流しながら空を見上げるのであった。




