215話 悪ノ終焉 ~前編~
ボロボロになった長明はルティーナ達に周りをとり囲まれ、ついに闘いの幕が下りようとしていた。
「(ふっ、ロザリナを人質にとる事は折り込み済だったのか……まさか、最後のとどめをロザリナに刺されるとは……自業自得か)」
「き、貴様らの勝ちだ……す……好きにするがいい……」
長明は風前の灯であり、死を待つしかなかった。
だが、彼はそれでもあることを目論んでいた。
「もうこのまま放置していても死が待っているだけね」
「とどめを刺す必要はないわ……私たちの勝ちよ――でも]
そんな様を見つめるルティーナ達は、今までの苦悩と思いがそれぞれ交差していた。
ロザリナは最後に決定打を入れたことに大満足していた。
シャルレシカも自分の祖母が、結果的に彼の命令でドグルスによって殺された顛末はあれど、存在も顔も知らない親族にピンと来ない様子であり怒りは持っていなかった。
サーミャとエリアルは特に因縁はなかったが、サーミャは色々してやられたことに腹を立てる程度であった。
「私もお父さんが暗殺されてかけた原因はこいつにあるけど、こうしてみんなが無事だったら文句ないわ」
「ってことよナガアキ、あなたはこのまま放置して帰るけど、最後に言い残したいことはある?」
「とことん甘い奴らだな……しかし、こんな奴らに負けたのか……俺は」
「なぁ、サトミ……そして、エリアルの中にる勇者……俺の声は聞こえているんだろ? お前らに話がある」
(話……だと)
長明は自分の最後の時間に、馬琴に問いかけを始める。
「貴様らは勇者召喚されて、二度と自分の居た世界に戻れないとしたら? いや、要らない存在として命を狙われるとしたらどんな気分だ?」
(こいつ? 何を言っている?)
長明は馬琴にノモナーガの闇つまり黒竜を倒した後の話を語った。その内容は、春斗達から聞いていた話と同じであり嘘ではないという事を理解するも、彼に同情してしまう馬琴であった。
(こいつも、本当にハルトさん達と同じように命を狙われていたのか……)
(今度はマコトに同情させて、洗脳しようとしているだけよっ!)
(いや、『マジックシール・ストーン』は奴の手元にあるからそれは無い……)
(だけどはっきりした……俺だってそんな目にあったらとち狂いそうだ……ナガアキがこの世界を呪うには十分すぎる理由だ……)
(そんな……)
長明は、馬琴に自分が勇者召喚を妨害しなかったとして正しく召喚されていたとしても、ノキア王は元の世界に戻す方法すら知らないくせに、黒竜を討伐させた後は、国同士の戦力均衡の為に、最後は闇に葬るつもりだと言い放つ。
そして、自分は元の世界に戻る方法を知っていると。
(こいつリーナの体に転生し、この世界を滅茶苦茶にした後、元の世界に戻ろうとしていたのか?)
「いまさら俺にその気はないが、それを今から教えてやる」
「それを知れば、俺が居なくなって大暴れする黒竜に襲われることなく、自分の居た日々に戻れるぞ――」
「だから何だっつんだよ! あたいの時間魔法さえあればマコマコは自分の居た世界に戻せるんだっ!」
「お前、知っているのか?」
「そう、その『エクソシズム・ケーン』さえあれば……だが、その杖に入手にも失敗しロザリナも手に入らなかった」
「その杖さえあれば、最低でも1属性が補填される。全属性持ちでなくとも7属性をもつ魔法使いさえ居れば時間逆行の魔法が使えるようになるのさ」
(ドグルスが杖を狙っていた理由はこれだったのかっ)
「だが、俺の探していた7属性もちがこんな身近に居たとは思ってもみなかった……お前も魔法を封じて誘拐すればよかったざ」
「ふざけるなっ! あたいは、みんなと違ってまだあんたとやる気が残ってんだ! これ以上――」
「なら殺せばいいさ、その魔法は詠唱するだけではだめなんだぞ? マコトは……気付いているんだろ?」
「こいつ、他に秘密を知ってやがるのか!」
「(そうなのですぅ……やっぱり夢の通りですぅ)」
(それには俺と誉美が、ルナ達の中から出る前提が……)
「『サモナー・ストーン』を知っているか?」
「お前らを召喚する儀式に使ってた石さ」
「あれを使って、もう一度、通常の再召喚をすれば出られるかもしれないぞ」
だが、勇者召喚の儀の爆破事件で、再召喚が出来る召喚師は巻き込まれて死んでしまっていたが、この召喚も結果的に『エクソシズム・ケーン』を持つサーミャが居るから問題ないと長明は言う。
(再召喚か……なるほど、実際、太平がやってた『サモナー・ストーン』を使って出入りできたんだからな)
(あとは、サーミャの『サモン・オーバーコール』と組み合わせなら可能は高い)
(そうなの?)
(確証はない……しかし、なぜ俺にそのヒントを……)
(ヒントを与える理由がわかねぇ……言わなければ、俺達が困るだろうと思わなかったのか? なぜ、こうもペラペラと何でもかんでも……)
長明の言動に馬琴の疑念は深まる一方であった。




