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☆見知らぬ世界で、少女のお目付け役になりました!  作者: うにかいな
第玖章 ~闇ノ孤島~

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214話 生ノ執念

 ルティーナ達は索敵していた長明(ながあき)が複数居るというシャルレシカの索敵結果に疑問を感じ、そんな魔法や魔物が存在するのかどうかサーミャに確認するが聞いたこともないという。

しかし長明(ながあき)の反応が4つ以上になることはなかたが、シャルレシカはあることに気が付くのであった。


「ねぇルナぁ、ナガアキはぁは3つが行ったり来たりぃ? 1つだけこっちに近づいているような近づいていないようなぁ……」

「それにぃ、同じ感覚なんですがぁ、魔力の大きさがバラバラなんですよぉ~」


(数が増えると魔力を分けるのか? それならこれ以上増やすリスクを負うメリットはないということか……)

(それとも、ナガアキの気配を他の魔物に分け与えて攪乱を狙っているのか?)



すると、サーミャが嫌な顔をしながらあることを思い出した。


「いや、自らを切り落とす魔物が居るけどさ……戦闘向きじゃねぇぞ」


「居るの? っていうか何、その嫌そうな顔」


「あいつだよあいつ……嫌な思い出しかない……」


「え、え、もしかして……」


「そうだよ、デーリェジだよ」


長明(ながあき)の最後の注射は、サーミャの予想通りデーリェジであった。

彼は、自分の体の一部を切り落としながら、浜辺近くで波に揺られて浮いていた。


(自分の一部を切り落とす能力か……なるほど、3人って言っているのは波で流されている……か、それにまぎれて本体で裏をかくってか?)


「シャルっ、1体だけ違った動きをしている奴を監視しててね!」


「はぁ~い」


「さぁみんな海岸に最終決戦に向かうわよっ!」


「いくぜ!」

「ぶっ殺す!」

「あぁ」

「はぁ~い」



――だが、馬琴(まこと)は1つだけ見誤っていたことに気付かないまま事が進んでいた。


「やはり、海岸まで出てきたか……決着をどうしてもつけたいらしいな」

「全てが予想通りだ。シャルレシカの索敵能力が仇になったな」

「あいつらの中で、俺を狙えるのは――」



「シャルっ、あのあたりなのね?」


「はいぃ、50m辺りの浅瀬にぃ」


「にゃろっ! 先手必勝っ! 5倍っ『フィフス・エクスプロージョン』っ!」



 ギュオォォォォォンッ!

 ザパーンッ!



 サーミャの放った『フィフス・エクスプロージョン』により、目標一体の半径30mで大爆発が起り、辺りは高波となり水しぶきがルティーナ達の居る海岸まで飛びちる程であった。


「どうだっ!」


「気配が消えましたぁ……」


「っしゃっ! これで、ナガアキを倒したぜ」



「ミヤ、私の分、残しておいてって言ったのに!」


(やったよね? マコト!)


(それ言っちゃダメなやつ……!)

(あのナガアキがこうも簡単に……シャルの能力ぐらい警戒していただろうに……)


(どういうこと?)


(どうやってデーリェジで、俺達を攻撃するつもりで魔物化したのかなって……)


(!)


「シャルっ! 残りの3つの気配を確認してっ!」


「はぁ~い」

「…………」


「ど、どうしたんだよルナ」

「マコマコが何か納得してねぇのか?」


「ルナぁ~海には1つしか残ってません~」

「残り2つが地上にぃ……」



長明(ながあき)の狙いは、一番魔力を乗せた自分の分身に攻撃が向くように仕向け、それに便乗して自分と、別の分身を砂浜の遠くに打ち上げていたのだ。

それにより、ルティーナ達は3択を迫られる。


(そうか、これが狙いか! 1つの気配に動きを付けて、のこりの3つの気配の1つに息を殺すように紛れて、今の攻撃で地上に飛び出たのか?)

(左右どっちだ! いや、両方とも偽物か? まずい!)


「私は右側を見るから、エルは左側、ミヤは海側、リーナはシャルを守ってあげて!」

「シャルは3つの動きを観察してっ!」


「海の奴は氷漬けにしてやるわ! 5倍っ『フリーズ・ゲージ』っ!」


サーミャは海辺に向かって駆け上がり、氷結魔法を連射し浜辺の水の大半は流氷の海原のような状態になり、そこに正体不明の分身が巻き込まれ動きが封じられていく。


そんな中、シャルレシカは左側の岩場のほうで草むらから森に逃げ込もうとしている反応があるとエリアルに伝える。


(あっちが本命なのか? なんだろうこの違和感――)


「切り落とした奴なら地上で動けるわけないから、確定ですね。森を燃やしてしまえば嫌でも」


エリアルは大剣に炎をまとわせ、長明(ながあき)が居ると思われる森の方に駆けていくのであった。


「ま、待ってエルっ」


ルティーナが静止をかけた瞬間、全員の目線がそれた隙に、潜んでいた長明(ながあき)がロザリナに蜘蛛の糸を巻き付け、宙高く舞い上げる。


「きゃあっーーーーーっ!」


「リーナぁ~!」


「そっちか! そうか、糸で分身を操作していたのか!」



「残念だったな、全員、そっちを向いてくれて助かったよ」



(マコト! リーナは殺されないわよね?)


(……いや)



「もう、こいつを使って若返ることも――そして復讐すら果たすことはできない……」

「俺もこの戦いが終われば命は尽きるだろう……つまり、こいつを生かす意味はもうない……そう、人質だ」


「(今度こそ……『クロノ・モ――』)」


「(多分、姿を現している時点で対策されてるわ……リーナが魔法を使えれば、あんな糸すぐ脱出できるはずだから)」


「(ちっ、また石を……)」


「さぁ、お前たちで殺し合いを始めろっ! さもないとこいつの命はないっ」


(奴の執念……半端ないな)


「さぁさぁ~早く始めろっ! こいつに巻き付いた糸がどんどんきつくなるぞ」


「(くそっ!)」


「なんだ? サーミャその目は? ロザリナは見捨てて、4人でこの島から退去してもいいんだぞ!」


「誰がリーナを見捨てるかってんだ!」


そんなやりとりの中、糸で拘束されたロザリナが、長明(ながあき)に問いかける。


「なんだ? ロザリナ、命乞いか?」


「人質作戦は失敗だったんじゃない?」


「?」



ロザリナは、長明(ながあき)に向かって口を大きく広げた。

その瞬間、息を合わせたように馬琴(まこと)は1つの漢字を『起動(きどう)』させた。すると、ロザリナの舌の上に描いてあった【(かがやき)】により長明(ながあき)の視界を遮った。


「くそっ! そんな所に、漢字をいつの間に描いてやがったっ!」


馬琴(まこと)は、先にエリアルを人質にとられたことを気にしていたため、万が一のことを考え、事前に全員の口の中に【(かがやき)】の漢字を転写しておいたのであった。


その一瞬、エリアルは振り向きざまに、炎の大剣を長明(ながあき)に向かって投擲した。

そしてその大剣は長明(ながあき)をかすめ後方の地面に突き刺さったが、飛び火する炎でロザリナに巻き付いた糸を焼き切った。


自由の身になったロザリナは、『マジックシール・ストーン』の影響で身体強化魔法は使用できなかったが、今までの思いを込め自慢の鉄拳を長明(ながあき)にぶち込み、彼の後ろに刺さっているエリアルの投げた大剣の所まで吹き飛ばされるのであった。


「これが私自身の怒りの拳よっ!」


「ぐっ、ぐわ~っ」


長明(ながあき)はエリアルの燃え盛る大剣にぶち当たり、身を焦がされて悶え苦しむのであった。彼はついに、苦しみから逃れるために魔物化を解除し炎を強引に掻き消し、人間の姿に戻るのであった。

しかし、ボロボロになった老体は砂浜で倒れこみ、空を見上げながら横たわるのであった。


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