208話 島ノ捜索
迫る海の魔物に対してルティーナ達は、まだ見えない得たいの知れない相手に出来る限りの迎撃準備を進めるのであった。
「ルナっ、あと500mですぅ」
「暗くて接近しているかすらも、波の音や揺れでわかりずらい」
(光を浴びせたいが、逆にナガアキに見つかる可能性もある……)
シャルレシカから300m以内に迫ってきたことを聞いた馬琴は、手前にとばした手裏剣の内2つの【浮】を解除した。
(え、せっかく描いたのに……)
(いいんだ、これで)
そして数秒後、前方から鈍い爆発音とともに水しぶきがあがり、その水影から巨大なデスパトクオとクジラの魔物――デルーイホ――が姿を現した。
「げっ、でけぇ! あんなデスパトクオ見た事ねぇぞ」
「それとなんだあの魚は! 海にはあんなのが居るんですか」
「ミヤ、エルっ、デスパは任せたわっ」
「あいよっ」
「あぁ」
(どうするの? あの魔物の対応策はあるの?)
(デスパトクオはすこしでも知識があるミヤ達の方が適任だろ? こっちのクジラは俺達が迎え撃つ)
(あれは俺が知ってる生き物だ)
サーミャは魔物が射程圏内に入る前提ですでに『クロノ・モラトリス』の詠唱は終わっており、デスパトクを任されたと同時に放っていた。
動きが止まったデスパトクはそのまま海に沈んでしまうところだったが、エリアルも準備していた風の剣で、風の刃を複数乱れ撃ちした。
風の刃で足を4本切り落としたが、頭にも数発命中したにも関わらず頑丈であったため致命傷には至たらず、海に沈んでいく。
「もう少し近ければ……威力が弱い」
「上出来だ! 相手が分かればこっちのもんだ! 詠唱完了っ、動けるようになる前にもう一度、海の上に引きずり出してやるぜっ!」
「『スプラッシュ・バイパー』っ!」
グオォォーンッ
デスパトクオは、サーミャの作り出す水竜に巻き付けられた状態で、船の方にむかって放り投げる。
「もう一発くらいなっ! 「クロノ・モラトリス』っ!」
「行けっ! エルっ」
「乱発は出来ないが大剣で行くっ! 風の刃っ!」
(――あっちは盛りあがってるね)
一度は姿を見せたデルーイホであったが、再び潜航されてしまい姿を見失う。
ルティーナはシャルレシカを呼び、再度、索敵し位置と深度を確認した。
「さっきぃ出現した場所からぁ位置は変わってないですぅ」
(先制攻撃は失敗だったか? 警戒されてるな)
(足止めしたいなら、でっかい【凍】を描いた手裏剣を打ち込んで、辺りを凍らせちゃえばいいんじゃない?)
(海のこの大量な水を一瞬で凍らせるのは不可能だし、そもそも逃げ場は無限だ)
(そっか、浮上してきたら浮いてる手裏剣を爆破させるのが得策ってわけね)
(あの魔物ってどうやって攻撃してくるのかしら?)
(大きな口で噛みついてくるか? 体当たりってとこだと思うが……むしろ噛みついて来てくれるほうが、口の中を砲撃で狙い撃ちしやすいけどね)
「! ルナっ、浮上してきますぅ」
「!」
デルーイホは急浮上し、噴気孔を船側に向けたと思った瞬間、高圧の水鉄砲を船首に放射し再び海に潜るのであった。
水鉄砲は狙い通り船首を直撃し、船は大きく揺らぐが、硬くしていたため無傷で後ろに押し戻される程度で済むのであった。
「な、なんだっ! ルナっ手こずってんのか?」
「大丈夫よ。ごめんね」
(まさか砲撃があるのか……)
「ルナっ、もう一回来ますぅ」
(ルナ、手裏剣2枚に【毒】を描くぞ)
ルティーナは、デルーイホが頭を出し砲撃を始めようとした瞬間、『デストラクション・シューター』で馬琴の指示で1枚の手裏剣を打ち込んだ。
そしてデルーイホの噴射口に手裏剣が届いた瞬間、半径8m規模の毒液を浴びせた。
危険を察知したのか噴射口は閉じられてしまい、毒は防がれ外皮を伝わりとともに海へと流れていった。
有効打にはならなかったが、その場が汚染されてしまった為、デルーイホは突進に作戦を切り替えてきた。
(毒が効かないじゃない!)
(いいんだこれで!)
迫ってくるデルーイホに向かって、浮いている【爆】が描かれた手裏剣を次々と爆破させかすり傷ながらもダメージをあたえた。
それでもかまわず突進してくるデルーイホだったが、のこり1枚の【毒】の手裏剣を放ち、再度、毒を浴びせることで傷口から汚染が始まり船の手前で動きが止まり沈んでいくのであった。
「ルナっ、気配が消えましたぁ」
「よっし」
「こっちも片付いたぜ」
ルティーナ達はとりあえず、初戦はなんとか乗り越え航海を再開するのであった。
出来る限りシャルレシカに索敵で接近する敵を回避するように努めたが、魔力切れを懸念し常時は使えなかった。
その後、島にたどり着くまで、サメの魔物――デクーシャ――の群れによる船への特攻攻撃を受けることもあったが、4人は力を合わせてその場をしのぎ切り突き進む。
だが、目的地に近づけば近づくほど、魔物の生存比率が高くなっていた。
「どうやら、この海域の魔物はすべてナガアキに洗脳されているみたいってマコトが言ってる」
「あいうらは敵味方を判断できるのか?」
馬琴は考えた。どうやったら彼の手下だけ無事に島へ行けるのか。
結論は1つ、特定の船だけは攻撃しないのではないかと。その船以外は攻撃するように洗脳しているのだと。
そもそも、魔力次第で魔物は大量に洗脳できるが全て意のままに操れるわけでなく、1匹だけであれば自由に操れたり意識を共有できるが、複数となれば話は別で、共通の指示に従って動いているだけであった。
「なるほどな、伊達に勇者じゃねぇか……頭は切れるんだな」
「ところでミヤ、魔力はまだ大丈夫?」
「あぁ、半分ぐらい使っちまったかな」
「……魔物の数が増える度に、どんどん不利になっちまうぞ」
(こっちも手裏剣やクナイが残り少ない……このままじゃ消耗戦だな)
「僕はミヤが止めてくれてる間に攻撃するだけだから消耗するものはないけど、島を探す前にミヤの魔力が切れてしまうぞ」
「そういえば、そろそろリーナが居る場所をどうやって特定できるか教えろよ」
「実はリーナがどうしてもやってほしいって言われて、杖に細工しておいたのよ」
「杖? アンナさんにもらったやつかい? リーナは持ち歩いてたか?」
「リーナの魔力をこめてもらったまま、小さく見えないようにしてリーナの服に貼り付けておいたのよ」
「だが身に着けてる杖でも、結界内では――」
「リーナはアジトに付いたら、貼り付けている布地の部分を破り捨てる様に伝えてあるの」
「そうか魔法が封じられても、眠らせられない限りそれぐらいは動けるものな」
ロザリナはもともと自己回復魔法で仮に睡眠薬を飲まされても数秒で解除できる為、意識を失うことなないという前提での捨て身の作戦であった。
そしてその杖を元に戻し索敵すれば、居場所付近までたどり着けるのだ。
「で、その杖は範囲外にあるってことか?」
「そういうこと」
「リーナが、うまくやってくれてると願うしかないけど……10km索敵でシャルがその杖を見つけられれば、こっちのものよ」
(あれから7時間か……うまくいけばそろそろ索敵範囲内にはいる頃か)
そしてシャルレシカは『エクソシズム・ケーン』を借り索敵を開始した。
迫る海の魔物に対してルティーナ達は、まだ見えない得たいの知れない相手に出来る限りの迎撃準備を進めるのであった。
「ルナっ、あと500mですぅ」
「暗くて接近しているかすらも、波の音や揺れでわかりずらい」
(光を浴びせたいが、逆にナガアキに見つかる可能性もある……)
シャルレシカから300m以内に迫ってきたことを聞いた馬琴は、手前にとばした手裏剣の内2つの【浮】を解除した。
(え、せっかく描いたのに……)
(いいんだ、これで)
そして数秒後、前方から鈍い爆発音とともに水しぶきがあがり、その水影から巨大なデスパトクオとクジラの魔物――デルーイホ――が姿を現した。
「げっ、でけぇ! あんなデスパトクオ見た事ねぇぞ」
「それとなんだあの魚は! 海にはあんなのが居るんですか」
「ミヤ、エルっ、デスパは任せたわっ」
「あいよっ」
「あぁ」
(どうするの? あの魔物の対応策はあるの?)
(デスパトクオはすこしでも知識があるミヤ達の方が適任だろ? こっちのクジラは俺達が迎え撃つ)
(あれは俺が知ってる生き物だ)
サーミャは魔物が射程圏内に入る前提ですでに『クロノ・モラトリス』の詠唱は終わっており、デスパトクを任されたと同時に放っていた。
動きが止まったデスパトクはそのまま海に沈んでしまうところだったが、エリアルも準備していた風の剣で、風の刃を複数乱れ撃ちした。
風の刃で足を4本切り落としたが、頭にも数発命中したにも関わらず頑丈であったため致命傷には至たらず、海に沈んでいく。
「もう少し近ければ……威力が弱い」
「上出来だ! 相手が分かればこっちのもんだ! 詠唱完了っ、動けるようになる前にもう一度、海の上に引きずり出してやるぜっ!」
「『スプラッシュ・バイパー』っ!」
グオォォーンッ
デスパトクオは、サーミャの作り出す水竜に巻き付けられた状態で、船の方にむかって放り投げる。
「もう一発くらいなっ! 「クロノ・モラトリス』っ!」
「行けっ! エルっ」
「乱発は出来ないが大剣で行くっ! 風の刃っ!」
(――あっちは盛りあがってるね)
一度は姿を見せたデルーイホであったが、再び潜航されてしまい姿を見失う。
ルティーナはシャルレシカを呼び、再度、索敵し位置と深度を確認した。
「さっきぃ出現した場所からぁ位置は変わってないですぅ」
(先制攻撃は失敗だったか? 警戒されてるな)
(足止めしたいなら、でっかい【凍】を描いた手裏剣を打ち込んで、辺りを凍らせちゃえばいいんじゃない?)
(海のこの大量な水を一瞬で凍らせるのは不可能だし、そもそも逃げ場は無限だ)
(そっか、浮上してきたら浮いてる手裏剣を爆破させるのが得策ってわけね)
(あの魔物ってどうやって攻撃してくるのかしら?)
(大きな口で噛みついてくるか? 体当たりってとこだと思うが……むしろ噛みついて来てくれるほうが、口の中を砲撃で狙い撃ちしやすいけどね)
「! ルナっ、浮上してきますぅ」
「!」
デルーイホは急浮上し、噴気孔を船側に向けたと思った瞬間、高圧の水鉄砲を船首に放射し再び海に潜るのであった。
水鉄砲は狙い通り船首を直撃し、船は大きく揺らぐが、硬くしていたため無傷で後ろに押し戻される程度で済むのであった。
「な、なんだっ! ルナっ手こずってんのか?」
「大丈夫よ。ごめんね」
(まさか砲撃があるのか……)
「ルナっ、もう一回来ますぅ」
(ルナ、手裏剣2枚に【毒】を描くぞ)
ルティーナは、デルーイホが頭を出し砲撃を始めようとした瞬間、『デストラクション・シューター』で馬琴の指示で1枚の手裏剣を打ち込んだ。
そしてデルーイホの噴射口に手裏剣が届いた瞬間、半径8m規模の毒液を浴びせた。
危険を察知したのか噴射口は閉じられてしまい、毒は防がれ外皮を伝わりとともに海へと流れていった。
有効打にはならなかったが、その場が汚染されてしまった為、デルーイホは突進に作戦を切り替えてきた。
(毒が効かないじゃない!)
(いいんだこれで!)
迫ってくるデルーイホに向かって、浮いている【爆】が描かれた手裏剣を次々と爆破させかすり傷ながらもダメージをあたえた。
それでもかまわず突進してくるデルーイホだったが、のこり1枚の【毒】の手裏剣を放ち、再度、毒を浴びせることで傷口から汚染が始まり船の手前で動きが止まり沈んでいくのであった。
「ルナっ、気配が消えましたぁ」
「よっし」
「こっちも片付いたぜ」
ルティーナ達はとりあえず、初戦はなんとか乗り越え航海を再開するのであった。
その後、島にたどり着くまで、サメの魔物――デクーシャ――の群れによる船への特攻攻撃を受けることもあったが、4人は力を合わせてその場をしのぎ切り進んでいった。
次々と襲い掛かる海の洗礼、そして目的地に近づくにつれ魔物の出現率と苦戦の頻度はどんどん向上していく。
「どうやら、この海域の魔物はすべてナガアキに洗脳されているみたいってマコトが言ってる」
「あいうらは敵味方を判断できるのか?」
馬琴は考えた。どうやったら彼の手下だけ無事に島へ行けるのか。
結論は1つ、特定の船だけは攻撃しないのではないかと。その船以外は攻撃するように洗脳しているのだと。
そもそも、魔力次第で魔物は大量に洗脳できるが全て意のままに操れるわけでなく、1匹だけであれば自由に操れたり意識を共有できるが、複数となれば話は別で、共通の指示に従って動いているだけであった。
「なるほどな、伊達に勇者じゃねぇか……頭は切れるんだな」
「ところでミヤ、魔力はまだ大丈夫?」
「あぁ、半分ぐらい使っちまったかな」
「……魔物の数が増える度に、どんどん不利になっちまうぞ」
(こっちも手裏剣やクナイが残り少ない……このままじゃ消耗戦だな)
「僕はミヤが止めてくれてる間に攻撃するだけだから消耗するものはないけど、島を探す前にミヤの魔力が切れてしまうぞ」
「そういえば、そろそろリーナが居る場所をどうやって特定できるか教えろよ」
「実はリーナがどうしてもやってほしいって言われて、杖に細工しておいたのよ」
「杖? アンナさんにもらったやつかい? リーナは持ち歩いてたか?」
「リーナの魔力をこめてもらったまま、小さく見えないようにしてリーナの服に貼り付けておいたのよ」
「だが身に着けてる杖でも、結界内では――」
「リーナはアジトに付いたら、貼り付けている布地の部分を破り捨てる様に伝えてあるの」
「そうか魔法が封じられても、眠らせられない限りそれぐらいは動けるものな」
ロザリナはもともと自己回復魔法で仮に睡眠薬を飲まされても数秒で解除できる為、意識を失うことなないという前提での捨て身の作戦であった。
そしてその杖を元に戻し索敵すれば、居場所付近までたどり着けるのだ。
「で、その杖は範囲外にあるってことか?」
「そういうこと」
「リーナが、うまくやってくれてると願うしかないけど……10km索敵でシャルがその杖を見つけられれば、こっちのものよ」
(あれから7時間か……うまくいけばそろそろ索敵範囲内にはいる頃か)
そしてシャルレシカは『エクソシズム・ケーン』を借り索敵を開始した。




