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☆見知らぬ世界で、少女のお目付け役になりました!  作者: うにかいな
第玖章 ~闇ノ孤島~

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204/250

204話 闇ノ空白

 馬琴(まこと)はこの状況打開すべくルティーナに作戦を伝え、皆に指示を出すのであった。


まずはハーレイのヒーリングストーンを回復師に充電してもらい、完了後にヘイガルと共に最前線付近まで転移、その後ウエンディの支援と出来る限り双方の被害を最小限にし終戦まで時間を稼いで欲しいと伝える。


「わかった! それじゃモルディナ、反対側の連中にもそう通達しといてくれよ」


「わかった。それならハーレイ、最前線にはおまえの同期だった魔法師団の副長のナーガが仕切っている、今は魔法が使える所に撤退しておる様だから、そこに転移するのが一番近い」

「すぐに、ハーレイが行くから攻撃するなと伝えておく」


「助かります」



 そしてハーレイ達が準備を始める間、ルティーナはモルディナ王にモルデリア王の顔を思い出してもらいシャルレシカの水晶に映し出させるのであった。


「しかしルナリカや、モルデリドの顔を知ってどうする?」

「『マジックシール・ストーン』が効いていては転移ができんだろ?」


ルティーナは、その点については問題ないと理由を説明し始める。

前提として、いままでのモルデリド関連の出来事が闇魔法による洗脳が絡んでいる事実を踏まえながら。


「おそらくモルデリド王は操られているか、操られている誰か……おそらくエラルと一緒にいると思います」


「――!」

「だが、洗脳されている事と転移ができる事に関係があるのだ?」


馬琴(まこと)の考えでは、闇魔法も『マジックシール・ストーン』の前では無力、つまり魔法の効力が及ばない所に、モルデリド王が居なければ軍に必要な時に指示が出せないという。

もし、洗脳されてないなら、一番安全な場所、つまり『マジックシール・ストーン』の内側から命令は出せるはずだと。


「なるほどな、あたいたちが転移できれば、洗脳がらみってのが確定すんのか」


「そう、それなら簡単! モルデリア王を洗脳から救えば、戦争を止める事ができる」


「なるほど、それならルナリカの望む最小限の被害で抑えられるってわけだ」



そしてルティーナは転移前に、各々へ行動指示を説明することにした。


転移時に発生する空間は警戒され、いきなり攻撃される可能性があるため、ルティーナは自分が盾になり無防備になるサーミャを守りつつ、転移後は優先的にモルデリド王を拘束するべく動く。

そしてサーミャはそのまま、モルデリド王を守る兵士達を攪乱することに専念させる。


その混乱状態の中、シャルレシカはひたすら索敵魔法が使えなくなる場所を探させ、エリアルにその護衛を担当させるのである。


「さぁ飛ぶぞ! ルナはあたいの正面でいいんだよな?」

「『キュア・ヒール』からのぉ~っ 『ディメンジョン・テレポート』っ!」


 ルティーナ達は、馬琴(まこと)の予想通り転移することができた。

一方、転移先のモルデリド王は――。


「なんだ! これはっ禍々しいっ!」


「落ち着いてください! モルデリド王、これはモルディナからの攻撃に違いありません! 早くこちらへ!」


「わ、わかった! エラル」


「お前たち! これに攻撃をしろ!」


予想通り突然に発生した空間は警戒され、全員が飛び出す前に、守備隊に攻撃態勢で構えられていた。


サーミャの姿が見えた瞬間、魔導士たちが攻撃を開始するも、彼らの前には透明になり硬化したルティーナが飛び出しており、サーミャをかばい攻撃を全て受け止めた。

そしてサーミャは転移が完了と同時に、複数の『ライトニング・ニードル』を展開し魔導士達に反撃を開始する。


その隙に、シャルレシカを守りながらエリアルは、サーミャを背に盾にしながら走り去るのであった。


(あの……マコトさん、私……身動きとれず、転がったままなんですけど?)


(存在を知られない作戦なんだから仕方ないだろ)

(とりあえず【(かたい)】を『停止(ていし)』っと!)


動けるようになったルティーナは姿を消したまま、サーミャ達の魔法の流れ弾に当たらないように注意しつつ、モルデリド王のそばに忍び寄る。


しかし、モルデリド王に近づくと、彼の様子の違和感に馬琴(まこと)が気付く。

彼の横に、こめかみに例の痣がある男が居たのであった。

それだけでなく、彼の手首にも例の痣があったのだ。


(2人共、痣がある……しかし、なぜ場所が違う?)


馬琴(まこと)は今まで、洗脳されていた者で頭付近に痣があった者はスレイナのように最後には爆死させられており、ゲレンガやドグルスのように腕やわき腹に痣があった者はそこまではなかったが、両者とも長明(ながあき)に洗脳されていない状態でも、忠誠を誓うように悪行をしていたことが気になっていた。


(モルデリド王も、ナガアキの考えに共感しているのか? だが、なんだあの怯えようは……)


いくら勇者の黒魔法とは言え、洗脳は1回1人しか操作できない事は朝時(あさとき)が証明しているため馬琴(まこと)には、少なくとも様子を見る限り、今時点では長明(ながあき)は介入しておらず、エラルは独自に行動していると判断した。


(とにかく、ナガアキに気づかれるまえに、シャルが見つけてくれ!)


「何が起こったのだ! 私は何も悪くないぞ! なんでこのような事に」


「落ち着いてください! とにかくここを離……」


ルティーナはエラルの頭に【(ねむる)】を描いた手で触れて眠らせる。

急に倒れこむエラルを見ていたモルディナは腰を抜かすが、すかさずルティーナに【(ねむる)】で眠らせた上で、【(すける)】、【(かるい)】、【(かすか)】を1つづつ描いては『起動(きどう)』を仕掛け繰り返すのであった。


「も、モルデリド王が消えたぞっ! 貴様らっ王をどうし――」


「ハイハイ、そこ黙っててな! 5倍の『ライトニング・スプレッド』を食らいなっ」


「「「「「ギャアアアっ」」」」」


「――さぁて、魔道士は全滅したわよ」

「兵士の皆さんは、鎧のおかげで凌いだみたいね?」

「まだ、やる?」


「「「ひ、ひぃーっ、この女、悪魔だ!」」


 カチーン


「まだまだ、シゴキが足りねぇようだな……、こりゃ、5倍の『フレイム・インボルブ』で鎧ごと塵にしてやろうか?」


「「「ひひぃ~っ、武装を解除しますので許して下さい」」」


「ふんっ、情ねぇな」


「やりすぎよ、ミヤ」


「おっルナ、姿を現したって事は……」


「うん、拘束完了よ!」


「さっさと、エル達を追うわよ!」


「じゃあ、『ディメンジョン・テレポート』大盤振る舞いと行きますか」


そして、エリアル達を追うように二人は転移した。

そこでは、シャルレシカを守りながら奮闘するエリアルがいた。


「「お待たせ!」」


「ルナぁ~、この辺りから索敵魔法が使えませんよぉ~」


「ありがとうシャル!」

「ミヤ、エル、後はよろしくネ」


「おうよっ」

「任された」


そしてルティーナとシャルレシカは2人に守られながら王を連れて、『マジックシール・ストーン』の範囲内に入り、彼に仕掛けていた漢字を全て解除するのであった。


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