203話 思イ出話
ルティーナ達が無事イスガから情報を持ち帰って来ることができたが、新たな問題が発生していた。
それはモルディナ王国とモルデリド王国の戦争が始まっていたのであった。
戦況はモルディナが劣勢のようで、どうやら『マジックシール・ストーン』が大量投入されているのが原因らしい。
いずれにせよ長明の居る八丈島に上陸するためにはモルデリド王国からの船が最短であるため、戦争を止めるべくルティーナ達は動き出すのであった。
――2時間が過ぎ、ルティーナ達が武器を整えて再び合流すると、すぐにサーミャは皆と固まり、ウエンディを目印に転移の詠唱をはじめるのであった。
しかし――。
「……。……。あれ? 5秒は経過してるよな?」
「杖は光ったまま……えっ、まさか! ウエンディ様、また『マジックシール・ストーン』の効果囲内に? 最前線にいらっしゃるってことか?」
「あの馬鹿っ、なんて無茶しやがるっ……」
「落ち着けよ親父、すまねぇが、あたいはあの国はウエンディ様以外の顔を知らねぇんだ」
「誰か知ってるやつの顔を思い浮かべ――」
「サーミャちゃん、さっきの話だが『ヒーリング・ストーン』本当に俺にくれるんだよな?」
「あぁ」
「んじゃ遠慮なく! 時間がねぇ! さっさと全員、俺に捕まれっ! モルディナ王のところに飛ぶぜっ『ディメンジョン・テレポート』っ」
そしてハーレイに連れられ、ルティーナ達はモルディナ王のところへ転移するのであった。
「――おぉ、ハーレイではないかっ!」
「ヘイガル殿だけでなく、『零の運命』の皆まで……」
「……それより……ウエンディが大変なのだ」
「解っております。それを察して、ルティーナ達を連れ馳せ参じ……」
「って、あぁ肩っ苦しいのはめんどくせい、いつも通りにさせてもらうぜモルディナ! 一体、何がどうなってる」
ウエンディがブルディーノの内乱の首謀者とされる捕縛したギレイラを連行した件で、不可侵条約に違反したとモルデリドへ抗議するため要人を向かわせたが、惨殺された上、宣戦布告をしてきたのであった。
そして今、ウエンディは『マジックシール・ストーン』の中で自分なら触れれば魔法発動できると、救護役を買って出て最前線に出向いて行ってしまった。
「くそっ、ウエンディ……」
「モルディナ王、ノスガルドの近衛兵部隊の状況はいかがですか?」
最前線との通信が途絶しているらしく、モルデリドの国境にノモナーガ王国側から突入した以降、状況がわかっていないようで、せっかくの挟み討ちできる地形を利用した戦略がとれてないという。
「俺達も最初は反対側から参戦するつもりだったんたが、ルナリカ達のおかげで王都の守備側に来れたのはついてるじゃねぇかハーレイよ」
「ヘイガル様のいう通りですよ、落ち着いてください。ウエンディ様ならきっと大丈夫ですよ」
「それに魔物討伐とは違って、私達だけの行動でどうにかなる状況じゃないですよ」
「マコトが今、作戦を考えてますから」
「あぁ、すまねぇ……」
「俺としたことが……魔法使いが冷静さを失うと早死するって、親父に散々言われてたのを思い出しちまったぜ、ありがとうルナリカちゃん」
(ハーレイ様、それは言ったらあかんやつ!)
(?)
モルディナ王は、馬琴が作戦を考えている待ち時間、どうしてもサーミャの事が気になってしかたなかった。
「それよりそちらのお嬢さん、初めてよの?」
「あ、はい、紹介が遅れて申し訳御座いません」
「私、さ、サーミャ=キャスティルと申します。ルナリカを頭とする『零の運命』に所属する魔法使いの冒険者でございます」
(ぷっ、私だって)
「それだけかい?」
「あっ、はい……ここにおります魔導師団長ハーレイの娘でございます」
「そうかそうか、やはり……サフィーヌの面影がそのままの綺麗なお嬢さんだのぉ」
「? サフィーヌってお母さんをご存じなんですか?」
「む? ハーレイ、お前まさかサフィーヌの故郷の事も話しておらぬのか?」
「す、すみません。自分の娘と何を話していいのやら……」
「言いわけは良いっ」
苦笑いをしながらもモルディナ王は、心の中では満足しており、サーミャにこの戦いが終わったらゆっくりサフィーヌの事を話すと約束するのであった。
「(そうか、この国はお母さんの故郷だったんだ)」
「(……ここはあたいが逃走していた時に住んでいた森……お母さんに守られてる気がして安心できたのはそのせいだったのか)」
そんな雰囲気の中、作戦を考えている馬琴は、もう少し情報が欲しいとルティーナにモルディナ王へ質問をさせた。
「ところでモルディナ王、モルデリド王とはご兄弟だったのですか?」
「そうだ、もともとグランデ王国だった国が兄弟喧嘩で2国に分断することになってしまったんだがな」
そして、モルディナ王は6年前の出来事を淡々と語り始めた――。
当時、グランデ王国の王であったモルディナは、第二王子であるモルデリドと2人でうまく国をまわしていた。
そんなある日モルデリドは側近あったエラルにたぶらかされ、兵力の半分を味方につけ国内の山脈を境界にするように陣取り、国土の割譲を要求するのであった。
理由もわからないうえ戦うことを嫌うモルディナは、モルデリドを説得したが、1っカ月間、何も解決が進まず、しかたなく国を二分化することでもめ事を収束させるのであった。
モルデリドは国民に愛され、国家の序列制度がなければ、モルディナより国王になればいい国になると信じていた国民は少なくもなかった。
その影響で、2つの国に分かれる違和感よりは、モルデリド派の国民は迷う事なく、そちらの国へ流れていく者も絶えなかった。
「そうだな、俺がこの国で魔導師団に居た時は、よく、サフィーナと一緒の任務を回してくれたり、あいつは世話好きだったのにな」
「何があいつを変えちまったんだろうな」
「そういえばエラルと言えば……先ほど、部下であったアレクサと国境で港に何か荷物を運んでいると目撃されておるが、一体何を企んでいるのだか……」
「アレクサ? ですって!」
ルティーナはシャルレシカに、水晶へアレクサの顔を映し出し、モルディナ王に同一人物かどうか確認させた。
「この男は、先日、私達に必要だった人物を殺害し、魔物を引き連れロザリナを誘拐して逃走中なんです」
「そ、そんな事を……その荷物に? ロザリナを……しかしなぜ港に――」
(やっぱりモルデリド港から船でアジトに渡るつもりなんだ)
(それじゃ、じゃ一刻も早く)
その時、兵士がモルディナ王を訪ね、反対側の国境でノモナーガの近衛兵団も戦闘に参戦し、内側に圧し始めているとの情報が入ってきたと報告する。
「完全に『マジックシール・ストーン』で封鎖されているってわけではなさそうだな。圧しているなら、あっち側はあいつらにまかせておいても大丈夫そうだな」
「ところで、作戦は立てれたか? マコト」
「えぇ、今の情報を踏まえると作戦は――」




