202話 忌ム戦争
ルティーナ達は、イスガ王国で遭遇した竜=リュウガを倒すことができた。
しかし彼は死に際に、自分以外にも竜が存在していることを示唆していたのであった。
今回、勝利できたのはサーミャが書庫で、『エクソシズム・ケーン』の秘密を知り光魔法を自由に使えることが分かった事が大きかったのだ。
これにより、彼女は自身で全属性の魔法を操れるようになった。
ルティーナは自分の必要な情報を得たが、サーミャが書庫の捜索が途中であったためもう一度、城に戻ることにするのであった。
「――で、これが書庫なのかい? 滅茶苦茶じゃないか……」
「あはは、ここで初めて『フィフス・エクスプロージョン』をぶっぱなして、死にそうになった場所だからね」
「こんな中で、よく杖の本を見つけたわね?」
「導かれたのかもな……だが、あたいが一部破った本が見つかんねぇんだ」
「で、シャルに頼もうとした時にあの魔物騒ぎさ」
そして、サーミャはシャルレシカに自分の記憶を読みとらせ本の場所を探してもらうことにした。
すると瓦礫の下からその本は見つかり、偶然、その横に未知の魔法が記載されたページが開いた本が覆いかぶさっていた。
サーミャはこの部屋の本を全部小さくして持って帰りたいとルティーナに提案したが、無闇に自分たちの世界に持って帰ることで流出すると混乱を招くと馬琴が判断し、必要最低限さっきの2冊を持って帰ることにした。
「まぁ、リーナを救出してナガアキを捕まえたら、また来ればいいもんな」
「よし帰るぜ!」
4人はシェシカの元へ転移し、出来事を話すのであった。
「これで私が石の充電で、ロザリナの代わりに連れまわされなくて済むのね?」
「あぁすまなかったな、この杖があれば最強さ」
「それよりエリアル、ルナリカさんもボロボロじゃない」
「もう深夜だし、急いでるのはわかりますが疲れをとった方がいいわよ。今夜はお風呂に入ってここに泊まりなさい」
ルティーナ達はリュウガとの戦闘で時間が経過していていた事と、杖の件で興奮していたため疲れを忘れていた。
結局、アジャンレ村は復興作業中で落ち着かないだろうと、ミレイユの提案を受け入れ孤児院に泊まり疲れを癒すのであった。
そして翌朝、5人はアジャンレ村のアンハルトの元へ転移するのであった。
「おかえりルナリカ。首尾はどうだった?」
「昨日の内に『バリア・ストーン』の設置も完了はしたが、民家の修繕にはまだまだ時間がかかりそうだ」
「ですが朗報もあります。村民にだいぶ笑顔で活気が戻ってきましたよ」
「色々、ありがとうございます」
「ここまできたら最後まで復興に付き合うぜ、力仕事は俺達にまかせと――」
「いやワシもおるぞ、これ以上、若い奴らに世話をかけられないからな」
「お父さんっ! もう怪我は大丈夫なの?」
「え、ば、ば、バルストさん……お亡くなりになられたはず? ルナリカのお父さん?」
「あぁ、しぶとく生きておるよ」
「アンハルトも何年ぶりだ? 元気そうだな」
(あ、そっか言ってなかった……)
ルティーナは、アンナから春斗達は目を覚まし朝食を済ませた事を聞き、部屋へ伺った。
そして、すぐさま竜について確認をする。
しかし、彼らが戦ったのは黒竜だけであり、頭の中に直接に語りかけることは認識が合っていたが、他の竜の存在は知ら居ないという。
それに黒竜は、この世で唯一の最強生物だと自身が語っていたと。
「唯一の最強生物……でもリュウガは兄者って言ってましたよね?」
「マコトいわく、リュウガは結果的にイスガの流砂に閉じ込められたから、死んだと思われてたんじゃないかな?」
「じゃぁマコマコ、他の竜は死んだと? それで残りは自分だけだったと?」
結局、自分たちが苦戦したリュウガより強いと言われる竜が死んだ理由も見つからず、春斗とも遭遇していないことを考えるとリュウガと同じどこかに閉じ込められたとしか考えられなかった。
「っつことは、相手にするのは黒竜だけってことだよな?」
「それなら、勝算が出てきたじゃねぇか」
「うん、あとはナガアキね」
「時間がないから、一旦ノスガルドに戻って武装を整えて、モルデリドに出発するわよ」
そしてルティーナ達はアンハルト達に引き続き村の復興をまかせ、自分たちは手っ取り早くハーレイの元に転移するのであった。
転移した先では、ハーレイがノキア王とヘイガルと難しい顔をしながら会談をしている所だった。
「おっ! ルナリカっ! 良い所に戻って来てくれた」
「ど、どうされたのですかのノキア王? 皆さん、揃って……」
「モルディナ王国とモルデリド王国の間で、昨日、戦争が始まってしまったのだ」
「おそらく先日のブルデーノ王国のデモ鎮圧に関係しているみたいなんだ」
「え、戦争……」
(次から次へと……ここへ来て、俺達の次の目的地モルデリドで)
「そうだ、モルディナと同盟国である我が国も増援の件で対策会議をしていたところなんだ」
先日の夕方、モルディナからの救援依頼が届いた為、ノモナーガ王国からも兵力の1/3を増援に向かわせていた。
しかし、先ほどからモルディナ王国との黒魔法師の動物通信が途絶したという。
つまりモルデリドで大量に発掘されたという『マジックシール・ストーン』が投入されているのではないかと不安視していた。
「俺はこれからこいつを連れて、モルディナ王のところへ馬で移動しようかと思っていたんだが、『マジックシール・ストーン』が使われていたら俺は役にたたないかもと話をしていたところだったんだ……」
「『零の運命』よ、手を貸してくれないか?」
「サーミャがおるなら転移ですぐに応援に向かえる」
「……でも、私達は人殺しはしませんよ」
「その事は重々承知しおる……」
ルティーナは自分たちを戦争事に巻き込めば、実質、勇者2人を投入することに値するのではないかと叱責する。
そもそもノキア王が、自分で口にした『国家間で問題になる』を気にしていたのであった。
しかし彼も言ってしまった手前もあるが、ルティーナ達なら人を殺めずに戦況を好転できると願っていた。
「まぁ丁度、都合がいいじゃねぇか! どうせモルデリドをなんとかしねぇと船を使う最短ルートが取れねぇんだし」
「サクッと終わらせてリーナを助けに行こうぜ」
「そうね、それが懸命ね」
「わかりました。死者を出さないように収束させるなら協力します」
「ありがとう、ルナリカっ! 感謝する」
「ミヤ、アジャンレに戻ってアンハルトさん達に事情を伝えといてね」
「シャルは留守番ね」
「私とエルは一度タリスさんの所で武装を揃えたいので、2時間後にここに戻って来ますから待っててください」
「わかった。頼むぞ」
そして、ルティーナとエリアルは急いでタリスの店に向かうのであった。
「――それより親父、ルナから、だいたいの話は聞いたんだけどさ……」
「?」
「この戦いが終わったら、いい加減、身を固めろよ。あたいは構わないぜ」
「それより、女を待たせるなんて最低だな」
「なっ! いやいや、な・な・な・何の話かな? さ・さ・サーミャちゃん……」
「(ぷっ、ハーレイの奴、目茶苦茶、動揺してやがる)」




