201話 光ノ秘密
ルティーナとエリアルは、竜のリュウガと遭遇し対峙が始まる。
彼には『デストラクション・シューター』での手裏剣攻撃すら通用せず、対応に苦戦する。
そこへ――。
「お待たせっ! あたいも混ぜろよっ」
「「ミヤッ!」」
「長くもたねぇぞ、さっさとやっちまえマコマコっ」
窮地に立たされたルティーナ達の元へ、最大の援軍サーミャが現れ『エクソシズム・ケーン』を使い『クロノ・モラトリス』を赤竜に放ち時間を止めるのであった。
しかし、計算通りであれば10秒の効果があるが、敵が敵だけに保証はない。
残り時間を警戒すると、馬琴は、いくら動きが止まっていようと致命傷を与える武器がない以上、手段は1つしかなかった。
ルティーナは馬琴に言われるがまま、リュウガの開いている口をめがけて、アジャンレで確保した爆弾に数秒で描ける【火】を写し投げ込み、うまく口の中に入った瞬間にリュウガは魔法から解放され、そのまま気づかずに爆弾を飲み込むのであった。
『なっ、何が起こった? むっ! 仲間が1人増えた? 黄金の魔女だと?』
「な、こいつ、喋れるのかよっ! (なんであたいの通り名を?)」
「こいつは意識に介入して会話してくるのよ!」
「意味がわからねぇ! もう一回止めるぞ――」
『(止める? そうか、さっき我は――)』
(いや待て! ミヤ、もう光魔法は使えないだろ!?)
(あ~! そうよ、来るときに使ったんだから、帰りの『ヒーリング・ストーン』使っちゃって! どうすんのよ)
「とにかく、ミヤは最大攻撃魔法の詠唱を始めてっ!」
「エルは防御に徹して!」
「「わかった」」
馬琴はすぐさまリュウガの体内に放り込まれた爆弾に、仕掛けられていた5つの漢字を一度に解除し元の大きさに戻す。
体内からの爆発なら致命傷になるはずと、最後に爆弾にしかけた【火】をともした。
しかし爆発は起きず、リュウガは作戦指示の中核となっているのはルティーナと判断し、真っ先に始末することにした。
(ちょっとぉ! 爆発しないじゃないっ!)
予想外の展開にルティーナとサーミャはエリアルに守られながら、逃げ回るしかなかった。
この状況下でサーミャは、再び時間を止めると言い出すが、馬琴に出来ないことをやりたがる意味がわからなかった。
だがサーミャはルティーナの指示を無視し、5倍の『クロノ・モラトリス』を放ちリュウガの時間を止めるのであった。
「どうして、3回目の光魔法が――」
(つ、杖が光った?)
「後で、説明してやるから、マコマコとっとと殺っちまえ! こいつにも10秒は有効なのはさっき実証したぜ」
【火】では爆弾の起爆に威力が弱かった可能性を考え、もう一度、【爆】を描いた爆弾を同じように口の中に放りこむのであった。
そして数秒後、リュウガが再び動き始めるが、今度は体内から鈍い爆破音が聞こえた。
強固の躰を誇っていたリュウガであったが、体内で発生した爆発に耐えられず、青い血を吐き崩れ落ち地面に横たわるように倒れた。
「トドメだっ! 5倍の『フィフス・エクスプロージョン』を食らいなっ」
サーミャの放った魔法の弾速は遅かったが、動きが鈍っていた赤竜に当てるには十分であった。
そして魔法は胸に命中し、ルティーナ達でも貫通でいなかった皮膚を大きく粉砕した。
そこにエリアルはすかさず大剣を突き刺し『ソード・オブ・プラズマ』を発動させ心臓に電撃を打ち込むのであった。
――そして、リュウガは完全に消沈した。
「――はぁはぁ……ミヤぁ~私を置いていかないでぇくださいぃ~」
「転移で移動したら危ないから仕方ねぇだろ」
ルティーナ達がリュウガと送風していた時、サーミャが書庫で調べ事をしている最中に、興味深い本を見つけ読み入っていた。
部屋の外で人形兵の様子を監視していたシャルレシカが、慌ててサーミャに声をかける。
普段は無索敵でも20m以内しか異変を感じ取れないシャルレシカでも、驚愕するほどの巨大な力に気づき、索敵をしたところルティーナ達と戦っていることを説明した。
サーミャは早速転移でルティーナ達を助けに行くと言い出すが、そんなことをしたら皆が地上に帰れなくなると、シャルレシカは冷静に止めようとしたがサーミャは本を突き出す。
しかしサーミャは現状を冷静に判断し、ルティーナ達が本当に危険な敵と対峙している所へ転移するのではなく、シャルレシカに合流場所までの道筋を聞き、走って現場に向かっていた。
「これがぁ……巨大な力だった魔物ですかぁ? あの時の砂漠で何度か遭遇したのと同じですぅ」
「でも今はぁ、風前の灯ですねぇ」
その時、心臓に致命傷を受けたリュウガは虫の息で死を待つのみであった。
『そうか、ほ、本当に、兄者達は倒されてしまったのか……』
「僕達、竜を倒したのか?」
「あたいらなら黒竜の封印がとけても――」
(ミヤっ!)
『ぶっ、ぶははははぁは~っ!』
「! な、なんだよこいつ? 断末魔か?」
『そうか、兄者は復活するのか!』
『ぶはははっ~そうかっ』
「しまった!」
『しかし残念だったな、おそらく俺が一番弱い! 夢は見られたかな?』
「「「「「!」」」」」
(これで格下だと!? さらに強い竜が……)
『我は倒され……たが、お前らの勝利……は我の油断に……よる……ものだ。兄者……仇を……とって――ぶはっ』
「……」
「おそらく絶命しましたよぉ、ルナぁ」
ルティーナはリュウガに手を触れ、万が一にも蘇生しないように【硬】を全身を包み込むように描き、石造のように固めるのであった。
そして気がづくと、外でさ迷っていた魔物達は、元の人間の姿に戻り、笑顔で朽ち果てていくのであった。
「そうか、こいつが死んだことで息吹の呪いから解放されたんだね」
「よかった。やっと人間として死なせてあげられて」
「あと何匹いるのかわからないけどさ、竜ってルナの武器でも撃ち抜けねぇのかよ?」
「こいつを倒せたのは奇跡よ。ミヤが時間を止められらなかったら勝ち目はなかったから――って、なんで連発できたのよ!」
「この『エクソシズム・ケーン』さえあれば、もう『ヒーリング・ストーン』がなくても大丈夫さ」
「「?」」
「ばぁばがぁ、ミヤにこの杖を託した未来はこのためだったんですねぇ」
サーミャが書庫で見つけた本には『エクソシズム・ケーン』の事が書かれていた。
――この杖は、試作品の自己学習する杖であったのだ。
主な使用者がサーミャが、『自分の魔法なら5倍に威力を上げられる』という効果を利用し乱用していたため、この杖はほとんどの攻撃魔法を学んでいた。
そのため、『知っている攻撃魔法なら、誰でも使える杖』として勘違いされていた。
だが『自分の魔法なら5倍に威力を上げられる』という効果は誰にでも適用するため、シェシカやロザリナに治癒で必要な時に貸していていたため、そういう物だと皆は刷り込まれていったのだった。
そう、この『エクソシズム・ケーン』は、シャルレシカの索敵、アンナやシェシカの回復、ロザリナの再生も学習していたのであった。
「――ということさ」
「そうか、つまり光魔法は回数制約も無く、ミヤの魔力で使えるんだ! それって最強の杖じゃないの!」




