194話 謎ノ老人
――夜明けまで、のこりわずか。
とりあえずルティーナは、目の前にある爆弾の小窓を開け、中にある『シャインボム・ストーン』を取り出し遠くへ放り投げた。
そしてシャルレシカに他の爆弾の場所を探させようとしたが、彼女は無機物は索敵できないのだ。
以前、ルティーナが薬草を探す方法も検討したが、自分の手が届く範囲しか探れない欠点があった。
しかしシャルレシカが全ての爆弾にアレクサが『シャインボム・ストーン』を入れているなら、他の爆弾にも彼の残留魔力が残っているはずだと、アレクサの気配を索敵し残り3つを探し始めた。
時間はかかったが日が昇るギリギリまでに、全ての爆弾から『シャインボム・ストーン』を抜き取ることができ、朝陽が昇った瞬間、あちらこちらに捨てた『シャインボム・ストーン』の小さな爆発が起こり、無事に村を守ることができたのであった。
(あとは、この爆弾をどう処理するかだな)
(そっか、何かの要因で衝撃が加わると爆発しちゃんだよね? 放置はできないよね)
(あぁ、今は自動的に起爆する要因を取り除いただけだからな)
ルティーナはシャルレシカと手分けして全ての爆弾を一か所に集め、それぞれに【軟】に加え【軽】と【微】2回づつを多重描きし『起動』するのであった。
「これって、柔らかくなった石コロみたいね」
「ルナぁ、これで大丈夫なんですかぁ?」
「う~ん、マコト的には、これ以上の対処がひらめかないって」
「置いておく訳にはいかないし、あまりしたくないんだけど、私が荷物として持ち歩くことにするわ」
「何かの役に立つかもだし」
(ねぇマコト、この爆弾は間違いなくイスガの技術だよね……ナガアキは、どこでこんなものを)
(……)
3人は一旦、孤児院へ戻ることにしたが、その帰り道でシャルレシカが村人の遺体を見つける。
「あれはっ! ぐ、グラデスさんっ!」
(ナガアキが情報漏洩防止に始末したのか……)
(アレクサとは違って、洗脳を解呪されているんだもんね)
「シャル、この人がナガアキと繋がりがあった人なのよ……」
「グラデスさん……そうだったんですねぇ」
「質問誘導はできませんが、死んで時間が経っていないならぁ、なにかしら記憶が読み取れるかも知れません!」
「頼める? シャル」
シャルレシカはグラデスの死体に触れ、彼の記憶を得るのであった。
そして無作為に調べた記憶から、必要最低限の情報を得ることができた。
グラデスが連れて行かれたのは、大陸から離れた海の先にある孤島であり、移動方法はモルデリドの刻印がされて船で移動していたのであった。
そしとナガアキの手下と思われる男には、首に痣がついていた。
さらにはグラデスが洗脳魔法をほどこされた時に首元にも痣が浮かび上がっていたが、老婆から解呪されると痣が消えていたのである。
「ナガアキに洗脳されているかどうかはその痣で解るってことね」
「でもぉ、アレクサにはありませんでしたよぉ」
「う~ん、もしかしたら、ドグルスみたいに見えない場所にあったのかもね」
(痣の位置に何か意味があるのかな?)
(あるかもな、今まで自爆させられた奴らは、首から上に痣がある奴らばかりだった……しかも強敵ばかり)
(解呪してくれた老婆は何か知っているかもしれないな……ナガアキに遭遇するまでに逢っておくべきだね)
(そういえば、ハルトによろしくって言ってたよね? その老人達って勇者?)
(可能性は大きいね)
「シャルっ、グラデスさんの記憶を覗いた時に見た老婆の情報をなんでもいいから得られない?」
「ん~、どこにいるか探せばいいんですかぁ?」
「そうね、それができれば一番いいんだけど……出来るの?」
「老婆の顔は覚えましたからぁ、そこから水晶に思い浮かべて居場所を占えば、おおよその場所ぐらいなら捜索できると思いますぅ」
(会わなかった間に、能力が格段に向上してるわね)
シャルレシカは、数年前の老婆の顔からの検索であったため、かなり捜索に苦戦し、既に1時間近く黙り込んでしまっていた。
それを見守るルティーナの元に、サーミャが『碧き閃光』の全員を連れて現れるのであった。
「ルナっ、待たせたね!」
「って、遺体とシャルレシカは何をしているんだ?」
ルティーナは事情を説明した上で、シェシカは魔法でヘレンは拠点から持ってきた薬草を使って村人達の治療を、そしてアンハルト達、男性陣は壊れた民家の中に人が居ないか捜索に向かってもらった。
「ミヤ、シャルは今、例の老人達の居場所を占っているのが終わったら、私達、すぐに捜索に出かけるわ」
「だから、ミヤはこの場に残って皆に指示を出しておいてくれるかな?」
「何か考えがあるんだな? こっちは任せときな」
「後、通信用の小鳥をもう一回準備してくれない? 用事が済んだら連絡するから、私を『サモン・オーバーコール』で呼び戻して」
サーミャは小鳥をルティーナに渡し、アンハルト達のもとへ去っていく。
そして1時間後、シャルレシカは急に目を覚ましたように語り始めた。
「ルナぁ~、これから案内しますからぁ私をつれて飛んでくださいぃ」
「わ……わかったわ」
ルティーナは、いつものようにシャルレシカを小さくし懐にいれて飛翔し、アジャンレ村を後にするのであった。
アジャンレ村を飛び立ち、休憩をはさみながらシャルレシカの言う方向にひたすら進み、日が落ちそうになった頃に目的の大きな森が見え初めてきた。
(ここはどのあたりなんだろう? ところでルナ、体力は大丈夫かい?)
(流石に、昨日から飛んでばっかりだったから、お腹すいたよ……それに寝むたい)
(それじゃ、シャルじゃない――)
(ん、なんだろう? あの山……まるでピラミッドのような形)
(ぴらみ? あの山、なんだか尖がってるってるね)
(……)
シャルレシカは、山のふもとに洞窟の入口があると伝え、広域索敵を始める。
すると、その奥に今にも消えそうな気配を2つ見つけるのであった。
「道もなにも無いのか……木々だらけだね……魔物は居ないようだけど、どこに着地しようかしら」
(なぁ、あそこにある岩についているの『バリア・ストーン』じゃないのか?)
(あ、そうね……あそこに着陸してみるわ)
ルティーナは『バリア・ストーン』のある場所を目印に着陸すると、そこには洞窟の入口があった。
『バリア・ストーン』は魔力を失いまるで放置されているような様子であったが、彼女たちはとりあえず洞窟へ潜入を始めた。




