193話 魔ノ爆弾
ルティーナはサーミャの参戦のおかげで、無事にデルグーイ化したギレイラを拘束することができた。
しかし、ギレイラに力を貸した謎の男は、長明の洗脳を受けており死ぬ間際に、再びロザリナを誘拐した事をほのめかすのであった。
ルティーナ達は大急ぎでアジャンレ村に戻るが、ここには変わり果てた光景が広がっていた。
ロザリナは孤児院の子供達を守るも連れ去られたのは事実であった。
――話はルティーナ達に、エリアルからブルディーノ王国の訃報が届いた時に遡る。
「それでシャルが、内紛に巻き込まれてるから戻って来れないのね?」
「なら『サモン・オーバーコール』で呼び寄せようぜ」
早速、サーミャは詠唱をしたが、シャルレシカは戻ってこなかった。
だが『ヒーリング・ストーン』の魔力は残ったままであったため、『マジックシール・ストーン』の効果下に居ると馬琴は焦る。
「ってことは、ウエンディさんも転移出来えねって事か?」
「もしそうなら、ただのデモじゃないわね」
「リーナごめんっ、ここでお父さんたちとグラデスさんの護衛をしていてくれない?」
「いいけど、ミヤはブルディーノ王国の人と面識がないでしょ? 仮にあるとしてもに魔法が妨害されてるなら……」
だが馬琴には作戦があった。
まずは、サーミャにエリアルの居る拠点に一緒に転移し、サーミャとエリアルは拠点で通信役で残ってもらう。
ルティーナは通信用の小鳥を持って1人でブルデーノ王国までの移動なら、休みながら飛翔しても翌朝までにはたどり着けると判断した。
そして、城付近に近づいた時にサーミャと通信ができなくなれば『マジックシール・ストーン』が近くにあることが分かり、効果範囲からすればかなりの大きさの石で、埋めるわけでなくむき出しで使っているはずだから破壊しやすいと。
「わかったわ! ルナ、私はここで待ってるわね」
「……でも万が一の時は、例の作戦でよろしくねルナ」
「縁起でもない事を言わないでよね。それに、あの作戦は前提条件があるんだから、過信しないでよね」
ルティーナ達が転移してから数時間後、村の入口が騒がしくなり始めた。
魔物の襲撃が始まったのだ。
異変に気づいたヘルセラはバルストに伝え、ロザリナと共に外へ飛び出した。
最初は、2人の活躍で大半を撃退したが、子供たちとをグラデスを避難させているアンナに魔物の足が向いていた為、ロザリナはその場をバルストに任せ救援に向かった。
しかし奮闘も虚しく、ロザリナは魔物達に連れ去らわれてしまった。
幸か不幸か。それを機に、魔物達は村の襲撃をやめ撤退した為、被害は最小限に収まっていたのだ。
――そして、話は現在のアジャンレ村に戻る。
「る、ルナ」
「フラザン! 怪我はない? 大丈夫だった?」
「俺は大丈夫だよ、ロザリナお姉ちゃんが助けてくれたんだけど……」
「うんうん、チルから聞いたよ――」
「違うんだよ、ルナ……アレクサがっ、あいつが!」
「アレクサ……?って誰」
シャルレシカは、以前、サーミャの捜索依頼の時に話していたモルデリド王国の亡命者だと説明した。
そして、フラザンは泣きながら起こったことを話し始めた。
フラザンはロザリナに物陰に隠れているように言われて闘いを見守っていたが、魔物に襲われそうになっているアレクサを助けようとしたとき、彼に粉みたいなものを浴びせられて、ロザリナは地面に倒れ込んでしまう。
そして彼は、そのままロザリナはは縛り上げられ魔物たちと一緒に去って言ったと。
(ナガアキの駒がこの村に居たなんて……だから1人になったことを知ったのか……油断した)
(それなら、グラデスさんも……)
「ルナ、アレクサの顔はわかりますからぁ、追跡できますよぉ」
「そうか、今のシャルなら……いや、駄目」
「「?」」
「探っていることを知られると、またナガアキに妨害されるてしまうし……リーナの努力も無駄になっちゃう」
「リーナの努力?」
サーミャは意味がわからなかった。ロザリナが危険にさらされている状態で追跡しない事を。
ルティーナは、ロザリナから自分が再び誘拐されたとしても次の満月までは儀式は出来ずに危険はなく居場所を探せるんじゃないかと提案されていた話をする。
「! リーナのやつ……無茶しやがる」
「だから、次の満月までにナガアキのアジトを強襲するわよ!」
「それまでは、泳がすのが良案なの」
「しかし、それだけでナガアキのアジトが分かるのかよ? 『マジックシール・ストーン』が使われてるんだぞ」
「大丈夫、作戦があるから」
「マコマコの秘策があるなら……満月まで後10日か……」
「アレクサさん……初めて相談を受けた時はぁ国の家族のことを心配されていたぁ、いい人だったのにぃ……」
「おそらく、ナガアキの洗脳魔法を亡命する前に仕掛けられてたのかもね」
「それで、あたい達が訪れた事を知って、ルナを引きはがす為にブルデーノで謀反を起こさせたってか?」
「くそっ」
「それより、今は村の救援が先ね」
サーミャは、現状を踏まえ怪我人の治療と村の復旧に『碧き閃光』の皆を連れてくると提案する。
サーミャが転移後、シャルレシカは謎の物体の件でルティーナをその場所へ連れて行くのであった。
「これですぅ」
「これって、爆弾? イスガにあったものに似てない?」
(あの爆弾の小型化したものなのか?)
(だが爆弾は衝撃を与えるとか、起爆させる要因がなければ、爆発することは……)
(じゃぁ、なぜ放置されてるの? 魔物達も居なくなったし衝撃を与える奴も居ないんじゃ?)
(まさか時限爆弾か? ルナっ、耳を当ててみてくれっ)
(えっ、嫌よっ)
二人がもめている間にシャルレシカは既に爆弾に手を触れ何かを読み取ろうとしていたのであった。
「シャルっ!」
「大丈夫ですぅ、あの時も爆弾が作られた経緯をこうやって探りましたからぁ」
「……」
「……これは、魔物が運んできたみたいですぅ」
「そしてアレクサがこの爆弾の中にぃ、石を入れてますぅ」」
「あとぉ、他にも3個あるみたいですぅ」
「――他に3つも! それに石を入れる?」
ルティーナは爆弾の容姿を見回すと透明な蓋の中に微弱に光る石が数個入っているのが見えた。
「ん? これって……」
(罠師が使ってた『シャイニングボム・ストーン』じゃないか! そうか、朝陽をあてさせて光を吸収し起爆させる気だっ!)
(やばいじゃん、もうすぐ日が昇っちゃう!)




