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☆見知らぬ世界で、少女のお目付け役になりました!  作者: うにかいな
第玖章 ~闇ノ孤島~

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191話 謎ノ増援

 ルティーナ達が長明(ながあき)に近づく情報を得ている中、ブルデーノ王国ではモルディナ王国との同盟に反対するデモが活発になり城が襲撃されていた。

しかし、そのデモ隊の指揮を執っていたのが、元グランデ王国(旧モルディナとモルデリド両国分割前)の近衛師団長ギレイラであった。

それを知ったウエンディはギレイラにデモを止めるように持ちかける。


 ギレイラはウエンディの『モルディナとの不可侵条約に抵触する』との言葉に一瞬躊躇したが、石橋が破壊されたことにより城門側にいた取り残された近衛兵を人質としてデモ隊の先頭に突き出した。


そして、1時間以内に石橋の代わりになる予備の橋を城から城門に立てかけろと要求してくるのであった。――さもないと3人の命はないと。


対応に悩むフェリクス達であったが、結局1時間、何も対策を練ることもできずに、ハウルセン王の指示によりやむなく橋を立てかけるのであった。


橋がかかるやいなや、デモ隊は一気に進行を再開するのだった。


「くそっ! もう橋を渡って……ウエンディ様は逃げてくださいっ!」


「駄目です! 私ならこの状態でも、相手に触れれば雷魔法で気絶させるぐらいでき――」


「触れなきゃ! いいんだろっアマっ」


「!――」


そこには民間人に紛れたギレイラの雇った盗賊が刃物を突き立てながら、ウエンディに襲いかかってきたのだ。


触れなければ攻撃ができないウエンディは、このままでは助からないと覚悟を決めた瞬間、聞き覚えのある声が、城から響きわたる。


『――魔法を撃ってぇ』


それを聞いたウエンディは襲い掛かってくる男に対して、咄嗟に一番速射性の高い『ライトニング・ニードル』を撃ち込み迎撃するのであった。

そして、瞬時にデモ隊の行き先を塞ぐかのように『ロック・ウォール』を展開し岩壁をつくり、人質の近衛兵を包み込む守るように同様に岩壁を展開した。


「つ、使える? 魔法が使えるわ!」


「ウエンディさん~っ、もう暴れても大丈夫ですよぉ」


「シャルレシカちゃんっ、よかった! なんで魔法が?」


「ルナがぁ、ルナがぁ来てくれましたぁ~」


「ルナリカちゃんが? 転移魔法も使えないのに?」


そんな中、上空から飛翔したルティーナがウエンディのもとへ急降下してくるのであった。


「ウエンディ様っご無事ですか? 城の周りの『マジックシール・ストーン』は全部破壊しましたよっ!」


「えええぇ~っ、と、とと、飛んでるぅぅ~」


「ルナぁ~」


「シャルっ! 無事でよかったわ」


ルティーナはウエンディに確認し、近衛兵以外で暴れている民間人を黙らせていいか確認をした。

ウエンディは二つ返事でルティーナに頼み、自分達はフェリクスと共に場内に侵入した民間人を取り押さえに向かった。


(とは言ったものの、こんな乱闘状態の中でどうやって鎮圧するつもり?)


(そうだな飛翔移動を考えて軽武装で来てしまったからな、魔石破壊に手裏剣を使いすぎて後1枚か……だが、この混乱は利用できるな) 


(?)


ルティーナは飛翔しながら自分の胸に手をあて、【(すける)】を体を包みこむ大きさまで描き姿を消して大混乱している中に飛び込んだ。

上空から民間人の頭を狙って手のひらに【(ねむる)】を描いて転写し『起動(きどう)』した。

1回の行為で描く漢字は小さいため乱発ができるが、完全に寝らせてしまう程の効果はなかった。

しかし襲い来る睡魔で戦意を喪失させ、民間人は次々と地面に倒れ込んでいく。


(これだけ騒いでいると近づいても、全然、気づかれないわね)


(よし……こいつで最後っと)

(『起動(きどう)』っ!)


そして民間人と盗賊は完全沈黙し、形成が逆転した近衛兵達に取り押さえられ沈静化したのであった。

ルティーナはその様子を見て地上に舞い降り、透明化を解除した。


数分後、ウエンディとフェリクスとシャルレシカが城門前のルティーナの元へ集まるのであった。


「ルナリカちゃんっ! 助かったわ!」


しかしその制圧したデモ隊の中にギレイラの姿だけなかった。


「くそっ、逃げたか!」


「このままだと今回の事を立証できない……」


ルティーナはギレイラの顔が分かれば、シャルレシカの索敵と合わせて捕まえられるかもしれないと言うと、シャルレシカが急にウエンディに、ギレイラの顔を思い浮かべるように指示した。


ウエンディはシャルレシカに触れられながら言われるままに、ギレイラの顔を思い浮かべた。するとシャルレシカの水晶にギレイラの顔が浮かび始めた。


「この男がギレイラ……? あ、あれ? シャル、こんな術を使えたっけ?」


「ふふふっ! 眠っている間にぃ新しい術を体得しましたぁ~」


「?」


シャルレシカは眠っている最中に鑑定士の力だけでなく、今の占いの力も向上していたのだった。


「この映っている男のぉ、気配を索敵しますぅ」


「シャルレシカちゃん、そんなことまで出来るの?」


シャルレシカは顔がわかれば、2キロ以内であればどこに居るか見つけられる千里眼の力が覚醒していたのだ。


「……あの時計台の方に逃げてますぅ」


「それなら、私が飛翔した方が早いわねっ」


「シャルっ」


「はぁ~い、久しぶりに着いていきますぅ~」


「あと、この城の周りで陣を張って『マジックシール・ストーン』を守ってた奴らも拘束しているんで、粉砕した石と一緒に処置お願いしますね」


そしてルティーナは、サーミャが洗脳をかけている通信用の小鳥をウエンディに預け、シャルレシカをいつものように小さくして時計台に向かって羽ばたいていくのであった。



「どういうことだ? 突然『マジックシール・ストーン』の効果が消えるなんて! まぁいい、俺さえ捕まらなければ――な、なんだあの空から飛んでくるのは……子供?」


「ルナぁ~そのまま真っすぐ向かってくださ――」

「ん、あの男に別の悪意が近づいていますぅ」


「仲間が居るの?」


的確に自分の逃げる場所を追跡され焦り始めるギレイラの元へ、見知らぬ男が接触してきた。

その男は名乗りもせず、自分はモルデリド王からの増援だと手を貸すといい、突然、懐から注射器を取り出しギレイラに突き刺すのであった。


「てめぇ~っ、何しやが――」

「……な、なんだぁ~っ? き、気持ちよくなってきたぞぉ~っ」


ギレイラはその男の行動に高揚しつつ、徐々に体中が羽で覆われ、背中に翼が生えデグルーイの姿になるのであった。


「な、なんだこれ? 最高じゃねえか」

「(これなら俺の正体はバレねぇ。これでウエンディを血祭りにあげてやるぜ)」


「喜んでいただけて光栄です」

「しかし、思ったより早く来ましたね。先にあの小娘を始末してくれますか?」

「だたしその薬、試作品の残り物ですので1時間もしたら効果が切れてしまいますのでお早めに」


「余裕っ」


そして上機嫌になったギレイラは羽ばたき、ルティーナに向かっていくのであった。

突然現れたデルグーイに驚くルティーナであったが、シャルレシカはあれはギレイラだと言う。


(あの薬を? ……まさかナガアキ)

(よりによってデグルーイか『デストラクション・シューター』は持ってきていない)


(シャルも居るし、どうするのマコト)

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