19話 一計案ズ
ノスガルドで自分たちの当面の宿を確保することができたが、問題の仕事を探しをするルティーナ達。
シャルレシカは『銀』のランクとはいえど占い師。戦闘向きでないため魔物討伐や護衛の任務を2人の資格だけでは受けられないと悟る。
そんな中、馬琴の提案でアウリッヒ王国へ向かうことになる。
ミリアは屋敷にルティーナ達を案内し、居間でくつろいでいたドリネと再会した所で、今の状況を説明することにした。
――話は2週間前に遡る……。
バルスト夫婦はアジャンレ村に到着したその日の内に孤児院に就職していた。
そして村人達にもだいぶ溶け込み始めていた。
「ルティーナ! 断じてならんっ! 冒険者になるなんて!」
「大丈夫よ、私の『能力』を見たでしょ? お父さん」
「二人は有名人だけど、私の顔は知られていない」
「だから、名前を変えて冒険者になれば、お父さんとの繋がりはバレないと思うの」
「そして冒険者になれば、きっと、お父さんを殺そうとした奴らの情報に近づくことができると思うの――」
「なんで、ルナがそんな危険な事をしなければならないの? お母さんは、今の新しい生活でみんなで平和に暮らせればいいわ――」
「私は絶対っ嫌っっ! なんで私たち家族が、知らない誰かの陰謀で、おとしめられて窮屈な生活をして生きていくなんて、絶対に許せないっ!」
「だから2人はここで、大人しくしてほしいの! シャルと一緒に必ず真相を暴いてやるんだからっ」
その話しを聞いたドリネは、ルティーナに前の案件の報酬の金貨25枚を受け取って生活の足しにしてほしいと願い出た。
しかし、喉から手が出るほどの申し出であったが、そこは踏みとどまり皆で再会した時に直接バルストに渡すようにお願いし返した。
ミリアは健気なルティーナに涙し、何かしてほしいことは無いかと尋ねるのであった。
ルティーナは、冒険証の肩書の都合、依頼が受けられなく困っていることを伝え、ドリネに仕事の依頼を出してもらいその報酬をもらいたいと言うのであった。
「なるほど、私たちに依頼を出してほしいだね? でも依頼の取り合いになってしまうぞ」
馬琴の狙った展開となり、作戦としては単純に依頼を出す時に白々しく仕事はないかと受付に確認する計画を説明した。
「ふふ、そういうことですか……わかりました。よろこんで、お手伝いしますよ」
「しかし、今日は遅いからここに泊まりなさい。そうしてもらえると、ミリアも喜ぶ」
「おばさん、ご飯を作ってくるわね。たくさん、食べてねぇ」
無事に仕事のあてができ、夕食を一緒にいただくことにした。
ルティーナは2人にアジャンレ村での出来事や生活の状況を語りつつ、シャルレシカはあいからわず皆があきれるぐらいいっぱい食べ、食卓は盛り上がるのであった。
そして翌朝、4人はノスガルド付近まで移動し、2手に分かれて1時間後ギルドで合流することにした。
「シャル、私たちはとりあえず、鍛冶屋に寄ってからカルラちゃんの宿に戻るわよ」
「そういえばぁルナってぇ、いつもぉすごく頭が回ってぇ~感心しちゃいますぅ~」
「でもぉ私ぃ、ルナの役に本当に立つんですかぁねぇ~?」
「シャルとの出会いはきっと運命だよ。それに友達でしょ? これからも私を助けてね」
「そう言われるとぉ照れちゃういますぅ~! でも、ルナとぉ一緒に居られるならぁ楽しいからぁ~私はうれしいぃ~っ」
「わ、わかったから~だから抱き着くなぁ――」
(……ルナ、抱き着かれやすい体質なんだね)
そして約束の2時間後、何気ない顔をしてルティーナはギルドの扉を開ける。
すると、ドリネはレミーナに仕事の依頼をしている最中であった。
「依頼内容を確認しますね――。今回の依頼は職業は不問で、お間違いないですか?」
「『ガルゲルの森』は、魔物が出るって聞いた事がないですし、護衛は保険みたいなものですね」
――任務の内容――
[薬師→ギルド]
・解毒薬の基となる薬草を、アウリッヒ王国の北にある、『カルゲルの森』で採取の手伝いおよび護衛。
・薬草は、希少であるため、数日の同行を希望。
・銀の冒険者1名以上の冒険者を希望。
[報酬]
・金貨10枚
「レミーナさ~ん。何か新しい任務はありませんかぁ?」
「あら、ルナリカちゃん……」
「そうだドリネさん、ちょうどいいわ、この子達に初任務をさせてあげてもらえないかしら?」
「もちろん構いませんよ。かわいい冒険者さん達だね、よろしくお願いします」
そして、もくろみどおり任務を受けることができた、早速4人はその日の内にアウリッヒに戻り、翌朝日が昇る前に出発し、『カルゲルの森』に到着する頃、朝陽が差し込むのであった。
シャルレシカには万が一の為、魔物索敵をしてもらいつつ、3人は薬草探しを始めるのであった。
早速ルティーナはミリアから薬草を1枚もらい、両手に【索】の漢字を浮かべ草むらに手をつっこみ適当にまさぐり始めた。
「――ミリアおばさ~ん。これかなぁ?」
「え……。も、もう見つけちゃったのかい? 本当に薬師になってみ――」
「もしかしてルナちゃん、これってあの不思議なチカラを使ったのかい?」
「えへへ……そうなんですよ」
そして、解毒草集めの作業は順調に進んでいった。




