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☆見知らぬ世界で、少女のお目付け役になりました!  作者: うにかいな
第玖章 ~闇ノ孤島~

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189話 闇ノ証人 ~後編~

 ルティーナ達は、バルストに連れられてグラデスの家を訪ねた。

その様子を灯りの消えた窓から、恐る恐る外を伺う男の姿が見えた。


「お父さん、もしかして、あの人?」


「グラデスさんっ、ワシだっ! 安心してくれっ」


「ば、バルストさんっ、申し訳ございません……こんな夜遅くに」


「構わんさ」

「この前、話していた冒険者の娘、ルティ…….ルナリカも一緒だ」

「こいつらならお前の力になってくれると思うから、家に入れて話をしてくれないか?」


「すみません、すぐ扉を開けに降りるから待っていてください」



 そして、家の中に案内されたルティーナ達は、グラデスから長明(ながあき)との関係を聞かされるのであった。


 ――グラデスは、大陸の最北に位置するエウィータ王国に住む炭鉱で作業をする一般人であった。

7年前のある日、働いている炭鉱でデルグーイの群れの襲撃に遭い、数人拘束され連れ去られた。

気が付くと、荒れ果てた大地に野放しにされていた。


その中心には、1人だけ死んだような目をした男が立ち、とんでもない事を言い出す。

『生き残ったやつは1人だけ助けてやる』と言われ、全員は殺し合いを始めさせられる。

彼はもともと潜在魔力が高かったことを知らなかったが、戦いの中で魔法に開花し、一撃で大量の人間を死に追いやった。


そして彼は最後まで生き残った。かつて仲間だった炭鉱員を殺してしまった事を後悔しながら……。


その後、気を失わせされ次に目を覚ますと、長明(ながあき)と名乗る黒い布で覆われ椅子に座っている男に見つめられていた。

その視線に恐怖を感じている中、長明(ながあき)はグラデスに問いかける。


 『お前、仲間を殺したんだって? どんな気分だった?』


その言葉に後悔の念が湧き上がる中、何らかの魔法をかけられてしまうが、心が癒されるかのような気分になり再び気を失う。

そして次に気づいた時には、全く知らない森に放置されていたのであった。


森をさまよっていると、頭の中に声がこだました。


 『お目覚めかな? グラデス』


長明(ながあき)の声に恐怖で冷静さを失い気が狂いそうになったが、言うことさえ聞いていれば死ぬ事はないと告げられる。

それからというもの操り人形の様に、指示の通りに『光魔法』の使い手の情報を得るべく、各国を点々としていた。


そして彼は忠実に情報収集をしつづけ数年が経過したある日のこと。

調査していた森で偶然男女の老人に声をかけられ、そのうち女性の老婆が光魔法を使い、長明(ながあき)にかけた洗脳魔法を解呪したのであった。

そして男性の老爺には頭を触れられ、その森の場所の事実だけを消されアジャンレ村に迷い込んだという。


「――そうだったんですね」

「それでこの前の襲撃事件で、自分が狙われていると……不安に?」


 コクリっ


(本当に狙われたのは私たちだったのにね)


(怪我の功名だな、こんなところで情報が拾えるとはね……)


「ところでグラデスさん、ドグルスって男を知っていますか?」


グラデスは、ドグルスに冒険者以外で光魔法が使えるものの情報を流していたという。

馬琴(まこと)は、その頃からロザリナを探していた事にグラデスの情報に真実味を感じていた。


(シャルが戻ったら、彼の記憶が無い情報を探りたいところだな……)


「ねぇお父さん、グラデスさんを保護するためにノモナーガ王国に連れて行こうと思うんだけど」


「ノキア王に保護を頼むのかい?」


今まさに長明(ながあき)についての情報を集めていることもあり、ルティーナの要望も通りやすいと言う。

それに加えサーミャの魔法で転移すれば組織の目には触れずに安全に移動できると。


「確かに、それが得策だな」

「どうする? グラデス」


「情報協力することで守ってくれるなら、是非お願いしたいが……俺は、殺人を犯しているんだ――」


「それは魔法に覚醒した暴走が原因だろ? 全てはナガアキってっやつに仕組まれた事故さ」


「……」


サーミャは小鳥を介してエリアルに、明日の午後一にノモナーガ城に転移するから、午前中に移動しノキア王に事情を説明しておいてほしいと伝えた。


「ではグラデスさん、明日の昼にノモナーガに移動でもいいですか?」


「かまわないが、さっきから飛ぶとか? 意味がわからないんだが」


「ミヤの転移魔法で、一瞬でノモナーガ城に行けますからご安心を」

「とりあえず必要な荷物だけ準備してください。今晩は、孤児院で一緒に過ごしま――」



その時、エリアルと通話を続けていたサーミャが不報を受けたと騒ぎ出す。


「ルナっ! 今、拠点に親父がやって来て――」


「シャルが戻ってきたの?」


「違う! ブルデーノが大変な事になっているらしいから、早く戻って来てくれと!」


「「!」」





 その頃、シャルレシカは、ウエンディに介護されながらブルデーノ王宮の寝室で死んだように眠っていた。

「シャルレシカちゃん、あれから目を覚ましてくれない……傷は完全に治してるはずなのに……」

「(それより、この国から出られなくなってしまった……)」


「――ウエンディ殿」


「ハウルセン王、あれから何か動きがありましたか?」


「城門前では、硬直状態が続いておる……今晩はしのげそうだが、明日はどうなるか」


「まさか、魔法が使えないなんて……手際がよすぎですね……」


ブルデーノ王国は、今、城の前で暴動が起こっているだけでなく、狙ったかのように魔法使いが全員、無力化されてしまっていた。


「今はフェリクスが近衛兵団を従えて必死に鎮圧に動いておるが――」

「謀反者を取り押さえただけでは、問題は解決しなかった……むしろ、国人に反感を」


「一体誰が……魔法まで封じる大規模な暴動をただの民間人に起こせるわけが」

「そこまで、モルディナとブルディーノの同盟を結ばれると都合が悪いのでしょうか?」


そんな会話の最中、護衛兵から現状の状況報告が舞い込んで来る。

導者らしき指示を取っている男は確認できたが、デモ隊のほぼ9割近くは武装していない民間人であり、彼らに爆弾を持たせ無理やりに王城の門を爆破しようとしていると。


「民間人になんてことを」

「むやみに国民を斬りつけたりしたら、やつらの思うつぼという事ですか……」

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