170話 派閥ノ妨害ト疑念
ルティーナはシャルレシカから、レミーナの伝言でブルデーノの国王と姫の護衛という重要案件の相談をうけていることを伝えた。
馬琴は、案件がなぜ自分たちに流れてきたのか疑問を持っていたが、ギルド長のブランデァからノキア王からパーティーの優先序列が『零の運命』が第1位になったことが理由だと聞かされ納得するのであった。
そしてノスガルドの街の外れにあるブルデーノ王国の大使館に出向いたのであった。
ルティーナ達は、大使館の守衛にブルデーノ王の護衛依頼の件で謁見したいと説明したが、見た目がエリアルの剣士以外の面子はどうみても戦闘向きには見えず老婆まで居ることで、お約束のように守衛から門前払いされようとしていた。
いつもならサーミャが、突っかかっていってくれたが不在であっため、困り果てていた。
(私達、パーティー序列1位なのにぃ)
(流石に、まだ知名度が低いか……)
(この人、武闘会も来てないのかしら?)
(守衛はさすがに、遊びにはいけないだろうね……まいったな)
そこへ、ルティーナに声を駆ける剣士が現れた。
「よぉ~っルナリカぁ、まさかギルドからの派遣はおまえらだったか?」
守衛は、その剣士を待っていたかのように、ルティーナ達を押しのけて中へ案内しようとする。
その剣士は近衛師団長のヘイガルであり、彼はノキア王から今回の護衛役を命じられていた。
「――おい、こいつらも案内してやれよ」
「え、しかし――」
ヘイガルは、守衛に『零の運命』の事を説明し、束でかかられると自分でも太刀打ちできるかわからないと語り、信じられない顔をされながらも納得させるのであった。
「た、大変失礼をいたしました」
「いいですよ、慣れてますから~」
「でもヘイガルさんが来てくれて助かりました」
「俺も、お前たちと一緒に仕事できるのは嬉しいぜ」
(白金の剣士か、ミヤが勝ったんだよね?)
(でも、ヘイガルさんは拘束目的だったんだろ? 本気で戦ったら、相当強いんじゃないかな?)
ヘイガルは、本当はハーレイが来る予定であったが、サーミャの件で断った為に自分に白羽がたったという。
ルティーナもヘルセラの紹介をし、今回の任務に役に立つと同伴する許可を得るのであった。
――そして守衛にブルデーノ王一行が待機する部屋へ案内され、ヘイガルから順に中へ入るのであった。
「失礼いたします」
「私共、ノキア王からこの度、増援の命を受け馳せ参じました」
「ノモナーガ王国近衛師団長、白金の剣士ヘイガル=ブレンソンと、ギルドから派遣されました『零の運命』でございます」
(わ~お姫様だよ、本物だよ~綺麗~きゃ~きゃ~っ)
(落ち着けルナ、女の子だねぇ~)
(ふんだっ)
「世はブルデーノ7代目国王、ハウルセン=ブルデーノだ。急な招集に応じてもらい感謝する」
「そして――」
「私、第一王女のセレーナ=ブルデーノと申します」
「――あの、大変失礼かと存じますが……」
さすがのハウルセン王は大人の対応をしたが、セレーナ姫は少女と老婆が凄腕のパーティーと聞かされ、自分の命を預けることに不安を感じ、つい愚痴がこぼれてしまう。
ハーレイは彼女たちは女性で同年代であるということもあり姫の護衛には、これ以上ない存在だと補足し、ギルドのパーティー序列1位だと念をおす。
「そうなのですね? ハーレイ様のおっしゃるとおり接しやすそうです」
「申し訳ありません。自己紹介を止めてしまって」
「うむ続けてくれ、ヘイガル殿」
「では左から『零の運命』の頭――」
「私、銀の職業なしルナリカ=リターナでござ――」
「ちょっと待て!」
『銀の職業なし』という言葉を聞いた瞬間、大人の対応をしていたハウルセン王も顔を歪め、ノスガルドのギルドはふざけているのかと激怒した。
(あはは……、ついに王様からのお約束キター――)
その様子を見かねたヘルセラが、怒鳴り返す。
「え~いっ黙れクソガキがっ! 人の話を最後まで聞けないのは、変わっとらんの!」
(え、あの時に言ってた、悪ガキって……まさか――)
「が、クソガキだと、この老婆っ! 無礼だぞ――」
「――ったく、ワシの顔すら忘れたか? 小僧っ」
ヘルセラは30年程前に、当時は近隣の村で過ごしていたが、事あるごとに当時のブルデーノ国王に呼び出されていた。
その理由は、当時、王子だったハウルセンが、とにかく冒険好きのやんちゃ者であり、しょっちゅう護衛団を引き連れては森で行方不明になる事が多く、捜索役に使われていたのであった。
「えっ、ま、まさか、ヘルセラおばちゃ――」
「んんっ、ヘルセラ様が何故このような所に……お久しゅうございます」
(えっ、なになに? ヘルセラさん……国王をシメちゃったよ)
「し、しかしですな、ヘルセラ……様っ、お言葉ですが……職業なしで銀が頭の冒険者達に命を預けろと言われましても……」
「こやつは只者ではない! 護衛されたら身を持ってわかるわい」
「そ、そうなのですね」
「王でありながら私も自己紹介を中断してしまい、大変申し訳無いことをした、他の者も続けてくれ――」
そして、ロザリナ、エリアル、シャルレシカも自己紹介を終えるのであった。
「しかし、魔法使いはおらぬのか?」
「申し訳ございません、ルナリカの仲間にも5属性使いの魔法使いがおりますが、今回、魔導師団長のハーレイと別の任についており、今回は参加できないことをお詫びいたします」
「それは残念だ、贅沢は言えまい」
「わかった。では2日間護衛をよろしく頼むぞ」
「「「「「はいっ」」」」」
ルティーナは、交渉後の帰国時はどうするのかとハウルセン王に投げかけた。
すると彼は、モルディナとの交渉の結果次第だという。
今回の目的は、モルディナと国交の同盟を結ぶために、王女のセレーナ姫を向こうの第一王子にお見合いを指せることであった。
(誓約結婚てやつかな?)
しかし、それを良しとしない派閥が国内にいるため、この襲撃をしかけてきている件と今朝到着予定の増援が足止めを食っているのは、その一派が原因ではないかと彼は睨んでいた。
「婚姻を破談させるため?」
「おそらくな、モルディナ国王と約束した日に訪問できなくする……あばよくば、世を消そうとしているのかもしれぬな」
「そんなことが……」
ハウルセン王は、過去にも何度か暗殺未遂にあっており、今回も起こってもおかしくないと考えていた。
今回も予想以上の襲撃や魔物の発生に懸念が尽きなかったが、先日の朝早く大使館があるノモナーガ王国に立ち寄り立て直しをしていたのであった。
「そして到着しすぐに、自国とギルドとノキア王の三者に増援依頼を出させてもらった次第だ」
「しかし、自国からの増援は間に合いそうにないと――」
「これ以上、待っていたも仕方がない。申し訳ないが、皆に正式に護衛を依頼する」
「よろしく頼むぞ」




