17話 武器作リ
ルティーナとシャルレシカは無事に冒険者証を受け取ることができた。
シャルレシカは『銀の占い師』として登録されたが、ルティーナは馬琴の能力は職業の適正としては鑑定できず、剣技もバルストから習っていたが期間が短かったため職業の照合は得られなかったため、『白の冒険者』という職業が無いという最低ランクな扱いになってしまった。
このままでは冒険者として仕事が得られないと悟る馬琴は――。
ギルドでは冒険者に対して、任務の実績や評価で階級付けがされている。
白の冒険者――実績もない初心者みたいなもの――
銅の冒険者――白の冒険者が、ある程度実績を積むことで、評価され昇格できる――
銀の冒険者――元々の素質の持ち主、または、銅の冒険者より実力があると評価されると昇格できる――
金の冒険者――1人でも実力としては申し分の無い実力、または、銀の冒険者での貢献度により評価されると昇格できる――
王国から金の冒険者は引き抜きされる場合があるが、バルストは逆に出戻りしたのであった。
白金の冒険者――この大陸に七人しかおらず、各国の近衛兵や魔法師団の長として任務に就いている。基本的にはギルドでは活動してしていない。単独でも有害指定の魔物を討伐できると言われる実力の持ち主――
冒険者は一人でも複数人でも活動することができ、依頼の内容は冒険者の階級が何人以上とか、……例えば、魔法使い希望とか記載されているので、条件を満たせば、依頼が受けられる仕組みである。
(……)
「どぉしたんですかぁ? ルナぁ~」
「シャル、シャルはいいわよね……。いきなり、『銀の冒険者』だもんねぇ……」
「私は、白よっ! 真っ白! 『白の冒険者』よっ! しかも『職業:無』っ」
(まぁまぁ、落ち着いて……)
自分の冒険者証に納得がいかないルティーナであったが、そんな中、馬琴から今後、『能力』を有効な攻撃にするために提案があると切り出された。
その前にこの世界には武器屋は無いか問われたルティーナであったが、バルストの武器を作ってもらった店がこの街にあるはずと即答するのであった。
しかし場所がわからずギルドで聴けばよかったと後悔していた矢先、シャルレシカが話しもしていないのに武器屋はあそこではないかと指をさすのであった。
(! え、これって予知なの? シャルってこういうとこ、怖いよね……)
「ん?」
2人は早速、武器屋へ入り店主らしき男に質問した。
「すみません。『しゅりけん』って武器はありますかぁ?」
「お嬢ちゃん、いきなりなんだいその『しゅりけん』ってのは武器なのかい? そんな剣は聞いたこともないぞぉ。(まいったなぁ……)」
「そこのあなた、この子のお姉さんですよね? 何を言っているのかなぁ? ここは遊ぶところじゃないって説明を――」
(あ~それ言っちゃだめぇ~、最近はそれを言われるの一番気にしてるんだから……)
「おじさん。 シャルは私より年下ですし……武器は無いかと聴きましたよね?」
店の主人は硬直した……。
ルティーナは馬琴の言う通りに、手裏剣とクナイの絵を描き、店主に説明したが、見たことも聞いたこともないと言われてしまった。
しかし、鍛冶屋なら作ってくれるかもしれないと、タリスという店を紹介され移動をはじめる。
(で、マコト、あの絵が しゅりけん? くない? っていうの?)
(あれでもれっきとした武器だよ!)
(この前のデフルウとの闘い覚えてる? 牧の破片の板に漢字を描いて戦ってたでしょ?)
(あれと、そのしゅりけんが、何の関係があるのよ……)
(あの武器は、投げる刃物みたいなもんさ、投げれば軽量な殺傷武器になるし、漢字を描いて投げれば木の板より投げやすく飛距離も出るんだよ)
馬琴はルティーナのような小柄な体型で有効に生かせる武器と『能力』の長所との相性はこれが一番と説明するのであった。
「あ、あのぉ~、ルナぁ? さっきからぼーっとぉしてぇ~大丈夫ですかぁ?」
「あ、あはっはは、ごめんごめん。考え事考え事……」
「それはぁ、いいですがぁ……。着きましたよぉ、鍛冶屋さん」
(この子、本当に天然なのか? しっかり者なのか? たまにわからなくなるな……)
ルティーナは鍛冶屋の主人に事情を説明し、二つ返事で試作品を作ってもらえると話が進んだ。
馬琴は手作りならと、ルティーナの使い勝手から手裏剣の大きさを全長10cmぐらいにしてもらい、クナイについては持ち手は手の平に収まるぐらいで刃の部分も10cm程に指定するのであった。
主人は興味深々で引き受けてくれ、試作品なら1時間ほどで出来るとのことだったので、そのまま鍛冶屋の仕事ぶりを眺めることにするのであった。
(この職人さん、すごいな……絵と説明だけで……)
丁度1時間でタリスは試作品を仕上げて見せ、馬琴がほぼ思っていた通りの手裏剣とクナイが完成していた。
タリスは作成したものはいいが、どうやって使うのかをルティーナに問うのであった。
するとルティーナは、武器を試す広場か空き地がないかを尋ね、裏に広場があるとタリスに案内された。
「そこの木株を的にして、試してもいいですか?」
「的? ああ、かまわんよ。(……投げるってことかい?)」
早速、ルティーナは木株を狙って手裏剣を投げてみた。
手裏剣は爽快な音を響かせながら綺麗な回転を見せ、木株に突き刺さる。
続けてクナイも投げ、同様に突き刺してみせた。
「手裏剣は刃物が回りながら飛んでいくから、途中、切り付けながら攻撃できるんです」
「クナイは手裏剣より確実に当てたい時とか、こうやると短剣としても使えるですよ」
「両方とも軽量だから、持ち運びも簡単でしょ?」
ルティーナの説明にタリスは目からうろこが落ちる思いであった。
彼はルティーナに食い付くように手裏剣を商品化して売ることを進める相談を受けた。
どうしたらいいかわからないルティーナであったが、馬琴の入れ知恵で、売れたら1割の利益をもらうということで商談を始めるのであった。
――まさか、数ヶ月後、爆発的な人気商品になるとも知らずに――。