165話 拠点ト異郷へ報告
ルティーナ達は、今回の件に深く関わってしまった『碧き閃光』の面々に、ノキア王から許可を得ている範疇で出来事のすべてを説明した。
そして、ロザリナ誘拐の時に捕獲した一味のデブラクの男から情報を引き出す。
しかし、長明の闇魔法の干渉によりデブラクは爆散するのであった。
結果、場所が分からない大海の向こうにある孤島に本拠地がある問うことまではわかったが、行く方法は見当がつかなかった。
そのため、次回の王との謁見まで手詰まりとなってしまう。
そんな彼女達は、大騒ぎですっかり忘れていた完成した拠点に向かうことにするのであった。
『碧き閃光』の拠点からルティーナ達が外に出ると、ちょうどサーミャも城から合流しようとしていたのであった。
「よお、話は終わったのか――って何を慌ててるんだよ? 蟹野郎から何か――」
ルティーナはそれどころではないと、サーミャには移動中に事情を説明しながら、大工の棟梁の家に向かうのであった。
そして、無事に完成した拠点の鍵をもらい、新しい家に向かう。
拠点にたどり着くと、5人はここ数日の疲れや眠気は吹き飛び、鼻息をあらくして大興奮していた。
「だれが開ける?」
「そりや頭のルナだろ?」
「リーナが考えてくれたんだから、色んな気遣いがされているんだろうね。楽しみだ」
「僕も毎回のノスガルドに来るたびに馬小屋がある宿にしか泊まれなかったし、これからはウェルも一緒に暮らせる」
「私は、自分の設計がどこまで反映されているか、とても楽しみなんでゆっくり最後に入りますね」
「ルナぁ、早く早くぅ~」
「んじゃ開けよっ」
「「「「「……」」」」」
扉を開けた先に広がる光景は、自分たちが今までカルラの宿で暮らしていた生活を忘れさせるぐらいの、求めていた空間に歓声を上げた。
拠点の1階には共用スペースの他に、簡単な会議室、そして台所やお風呂場などの生活設備が充実しており、2階には8部屋あり、5人それぞれの部屋と客間が作られていた。
「……す、凄いっ! これが私たちの拠点」
「みんなの部屋、扉にちゃんと名前書いてあるねぇ~かわいい」
「とにかくぅ寝室が見たいですぅ~っ、私の部屋~」
「それじゃ、僕は、お風呂場を見てこようかな」
「私は、調理場を~」
「おまえら落ち着けよ」
(みんな自由だな)
それから数分後に会議室に集合することにし、自由に拠点を堪能するのであった。
「さて、みんな気がすんだ?」
「済んだ済んだ! 最高だぜリーナっ」
「ありがとうございます」
「そう言えば、シャルが居なくないですか?」
「えっ! まさか」
シャルレシカはぐっすり自分の部屋で爆睡していた。
「寝てんじゃないかな? そもそも私達も眠たいし」
「「「ありえる……」」」
「ご飯の匂いでもしたら、起きてくるでしょ?」
そしてロザリナは、満面の笑みを浮かべながら台所へ足を運び、お昼ごはんを食べてゆっくり休む事を提案するのであった。
皆それに同意し、待っている間、3人は今後のことを話を始めた。
「そうね当面は、冒険者として仕事をするとして……」
「問題はリーナを狙う勇者の一味が、また狙ってくるか?」
「そうだね、今回の失敗したこともあるし、しばらくはおとなしくしてると思うけど……」
「そう願ういたいわね……リーナは1人で行動させないにこしたことはないか」
「なら、僕が専属騎士になろうかな? お姫様――なんて」
「「あはは(洒落にならないぐらい似合ってる……)」」
突然、ルティーナは調理中のロザリナにも聞こえるように話しかけた。
今回のノキア王が朝時から開放されたことで、命が狙われることがなくなったことを父バルストに伝えに行きたいと言い出す。
サーミャは転移で送ることは構わないが、自分は滞在ができないと釘をさした。
「何かあるの?」
「あたいさ、親父に闇魔法の修行を明日から2週間ほど受けるってことになってんだ」
「そっか、城に残ったのは……修行で闇魔法が使えるようになるの? 凄いじゃないっ」
つまり、自分が帰ると、次に迎えにいくのは最低でも2週間後になることを告げる。
そうなると、ノキア王からいつ声がかかるかわからなかったため、やむなく日帰りとしサーミャに付き合ってもらうことにするのであった。
「ごめんな、ゆっくりさせてやりたかったんだが」
「ありがとね」
「でもね、お父さん達はもう隠れている必要もなくなったから、皆が嫌でなえれば、ここに一緒に住んでもらって管理人みたいな感じで……」
「いいですね、私達が居ない間に部屋の掃除とかご飯とか作ってもらえますね」
「僕はバルスト師匠に修行をしてもらえるし、この界隈では有名人だから、この拠点に客が殺到しそうですね」
「あたいもかまわないぜ、客間が3部屋もあまってるんだ2部屋ぐらい使ったって」
ルティーナは自分勝手な意見であったにもかかわらず、心置きなく提案を受け入れてくれたことに感謝をするのであった。
そしてサーミャはロザリナの作った昼ご飯を食べた後に、仮眠し夕方過ぎ一緒に行くことを約束した。
「それでお願い」
「それじゃ僕は、リーナとシャルで留守番してるよ」
「さぁ、ロザリナスペシャル完成よ! だれかシャルを――」
バタンッ
「「「「(ビクッ!)」」」」
「あはははぁ~うっかりぃ~気持ちよすぎてぇ寝てしまいましたぁ~いい匂いですぅ」
「「「「(ご飯の匂いで、自力で起きてきた……)」」」」
皆んに呆れ顔をされながらも、4人は昼食を楽しく取るのであった。
そこでシャルレシカは、急に自分のやるべき事を予知夢で見たと語るが、その内容は秘密だと言う。
「秘密なら、言わなきゃいいじゃん! 相変わらず面白いなシャルは」
「なのでぇ、私も留守番してますねぇ」
「「「「――って! なんで知ってるのぉ!(怖っ)」」」」
ルティーナは2、3日アジャンレに滞在するつもりだったが日帰りになってしまうため、戻ってから行く予定であった武器やタリスの店に明日の朝に繰り上げた。
せっかく作ってもらった『デストラクション・シューター』や一切の防具や武器をを誘拐された時に捨てられてしまった為、いづぜにせよ防具や武器などは古かった為、新しく買い揃えることを考えていた。
それを聞いたエリアルは、自分も新しい武器がほしいと一緒に連れて行ってほしいといい、なら護衛してもらないと困ると冗談交じりにロザリナも同伴することになった。
「シャルはどうしますか? ミヤもお父さんに合うためにここには居ないそうですが」
「んから、私はきっと用事ができると思うのでぇ~大丈夫ですぅ」
「「「「?」」」」
「で、新しい武器って何よ?」
「それは秘密ですよ」
「なんだよ、エルも秘密かよ」
(みんな、それぞれ考えてるんだな)
皆で今後どうするかの話し合いをしているうちに食事を終え、ルティーナとサーミャは夕方まで仮眠を取り、他の3人は何かから開放されたように各々の部屋でゆっくり眠りにつく。
そして日が暮れ――。
「んじゃ、ミヤ行きましょうか?」
「ってルナ、可愛い服装だな、結構似合ってるじゃねぇか」
「この服は、この日に取っておいたんだ」
「そっか、んじゃこのままバルストさんとこに飛ぶぜ」
「たぶん、今の時間なら大丈夫」
「いくぞっ、『ディメンジョン・テレポート』」




