164話 捕虜ノ情報ト道標
ノキア王から80年前の勇者召喚の話を聞くルティーナであったが、馬琴からすれば腑に落ちない点が多かった。
話自体に嘘はないと思われるが、間違った情報なのであろうと。
過去に召喚された勇者3人は、厄災を封印した後に共倒れしたのか? 当時、急に編成された暗殺部隊に処分隠蔽されたのか?
そうなるとロザリナの母である勇者の孫キャサが生まれた事実に、勇者の最低でも光魔法の女性が生存していなければならなかった。
話が暗礁に乗り上げてしまったため、後日、お互い新たな調査情報を持ち寄り会議をすることとなり解散することなった。
そして、サーミャは――。
無事、王宮での事件を終えたルティーナ達は、『碧き閃光』の拠点へ向かった。
「――お前ら、よく無事に帰ってきたな!」
「皆さん、私が捕まったことやリーナが誘拐された件、大変ご迷惑おかけしました」
「本当にありがとうございます。後日、改めてお礼をさせていただきます」
「気にするな……そういうえば、サーミャは?」
「お父さんに用事があるみたいで…‥」
「(そうか、仲直りしたんだな)」
ルティーナはアンハルト達に、8年前の王都爆破事件の真実、そしてノキア王の体が朝時という男に乗っ取られ8年間国を操り、自分と誘拐に至った経緯までをノキア王から承諾を受けている範囲で、暗殺部隊のことは語らずにうまくまとめて話した。
それを踏まえ、自分とエリアルに勇者の魂が取り憑いていることも説明した。
「話がぶっ飛びすぎて混乱しているのだが、つまり偽の王様が惚れたトモミという勇者がルナリカの中に取り憑いていると勘違いしてたってことか?」
「そうですね、それで最後は私達に追い詰められ失脚した感じです」
「だが、ノキア王がもとに戻って良かった」
「そのタイヘイの入った水晶は、ノモナーガ城で保管してもらうことになりました」
「そうか……ルナリカとエリアルの不思議な力は、その勇者が入っていた水晶のおかげってことなのか?」
「っつうことは、勇者の力の恩恵を受けるものが3人、シャルレシカも大占い師の孫だったんだし、サーミャは魔法師団長の娘……おまえら最強なパーティーだな」
「しかし、数年後に迫る厄災の封印が解き放たれるのは大問題だ。だが、ノキア王の判断なしで噂を流したら大変なことになる」
「ここは、来る時まで指示を待つしかなさそうだな」
そしてルティーナは、ロザリナを誘拐した組織に80年前の勇者が生きて何かを知っていると続ける。
そこで、以前アンハルトが捕獲したデブラクから情報を抜き出すことにした。
「やつなら、そこの籠に入れたままにしているが、4日間、水もやらず放置したままだったから、干上がっているかもしれないな」
(干上がるって……たしかに時間が経っちゃったね、とりあえず、カンジを解除して起こしてみたら?)
(よくよく考えたら……薬の効果が切れてたら元の姿に戻るんじゃ……眠らせていたからか?)
(まぁ、元の姿に戻ってたら手足が無いから即死かもな)
(そういえば、この甲羅にあの痣なんてあったかしら?)
(そこまで見てなかったが、組織の一員だからなついてるだろう)
馬琴は、デブラクに描いている【眠】を『停止』し、彼を目覚めさせる。
そして、シャルレシカはデブラクに触れて、ルティーナがまず確認したかった、ロザリナを連れて海からどこに行こうとしたのかを質問するのであった。
しばらくすると彼の頭に浮かんだものが水晶に写りはじめた。
「な、なんだ? これは」
「やけに暗いわね……海原? 何か見えてきたけど……島なの?」
「不気味な島が見えてきた……あそこにリーナを連れていく気だったのか?」
(そこに、闇魔法の勇者が居るのか?)
「ところで、あの海岸の先にあんな島があったか? グルバス?」
「あの海付近で漁業を生業にしている知り合いは居るが、そもそも、あの先に島や大陸なんて聞いたことねぇぞ」
「しかし、島が映ったってことは、この大陸以外に俺たちのしらない場所があるって事だよな」
そもそもこの大陸の周りは海で囲まれて、その先には何もないと誰もが知る共通認識であった。
海自体、遠くにいけば行くほど厄介な魔物が出るし、人間じゃ戦うには地の利がなさすぎるため誰も調べることをしていなかったのだ。
続けて、勇者の素性について情報を得ることにし、質問を投げ抱える。
すると水晶がどんどん闇で埋め尽くされ、ぼんやり老人らしき姿が写しだされたかと思うと、デブラクは急に体の小刻みに揺らし暴れ始めた。
とっさにシャルレシカは危険を感じ触れている手を離そうとしたが瞬間、デブラクは爆散しシャルレシカは左手を怪我してしまった。
「きゃぁ! シャルっ! 『シャイン・レストレーション』」
(ルナっ、シャルの手に! 【癒】)
「リーナぁ、マコマコぉ、ありがとうぉ~」
「なっ! 何が起こった」
馬琴は、元勇者が操る洗脳魔法は対象者を処分できることを確信した。
そして、これは単純に勇者はもともと召喚された恩恵で身につく、洗脳魔法の上位互換なのではないかと。
「なるほど……ルナリカやエリアルの特殊な力を考えたら、勇者としてそういう力を与えられたと考えた方が自然か」
「そういえばぁ、ドグルスを調べていた時にぃ、シャルの水晶に映ってた一人目の男はノキア王……いぇタイヘイだったってのはわかりますぅ」
「でもぉ二人目の男がぁ元勇者ってことはぁ……なんでぇドグルスは爆散しなかったんですかねぇ」
「そうか、もし元勇者だったら、普通、同じように処分しようとしますよね?」
「ということはぁ~あの時、リーナが居なかったからぁ~私、死んでたじゃないですかぁ」
「確か、あの時って――」
シャルレシカは、ドグルスから情報を引き出す時は、相手が勇者だとも認識しておらず、さらに調べようとした時には偶然に魔力切れを起こし干渉しようとしていなかった事で救われていたのであった。
「やつに操られた人間からでは、情報は探れないってことだな」
「だけど、もっと情報を集めないと……」
「そうですね、でもノキア王の方でもなにかしら情報を集めてくれてますから、そこにまた糸口があるかもしれませんね」
「だといいな」
アンハルト達も力及ばずなのは承知の上で、今後、厄災関係で動きがあれば協力は惜しまないことを約束した。
「とりあえず、この先の王様との情報交換した結果を待ってるよ」
「ところで話は変わるが、お前達の拠点ってどうなったんだ? ロザリナ誘拐以降、お互いバタバタだったからな」
「「「「あっ!」」」」
ルティーナ達は、アンハルトに後日招待すると言い残しその場を去り、建築を依頼した棟梁の元へ駆け足で向かうことにした。
「それじゃ、みんなっ帰るわよ! 私たちの新しい家に!」




