153話 一撃必殺
サーミャ達の予想外の城内への乱入に同様するダブリス達であったが、サーミャが目論んでいた対戦相手のすり替えを城内の伝達ミスを利用し行っていた。
そしてノキア王に報告へ向かう。
そんな中、ロザリナとエリアルは、サーミャの父ハーレイ率いる魔法師団に追いつかれる。
やむなしに事情を説明するエリアルであったが、ハーレイはその言葉に疑問を感じつつも戦闘に入るのであった。
エリアル対ハーレイが戦闘を始める中、サーミャ対ヘイガルは佳境を迎えていた。
サーミャは究極攻撃魔法『フィフス・エクスプロージョン』の呪文を唱えており、彼女の前に怪しくまがまがし魔球が生成されていく。
その様子をみながら、ヘイガルは薄ら笑いをしていた。
「待たせたな、ヘイガルのおっちゃん」
「おいおいおぃ、なんだそのおぞましい魔球は……見たことねぇぞ」
「(……殺気しか感じねぇ……ハーレイのあの技が最強じゃねぇのかよ?)」
「さぁ間に合うわぜ。『許して、サーミャ様っ』って言ったら、やめてやるよ」
「バカ言ってんじゃねぇっ、さぁ~そんな雷系じゃねぇんだから俺の速度なら簡単に交わせ――」
サーミャはそれは想定済みで、自分とヘイガルの両脇を包み込むように『ロック・ウォール』を大量発生させ、横への動きを完全に封じた。
「んじゃぁ~行くぜっ! 『フィフス・エクスプロージョン』っ」
「死んでも文句言うなよっ(つか死なれたら困るけど)」
異様な魔球はすべての属性の片鱗をバラマキながら雷魔法には劣る速度ではあるが、両脇の土壁を破壊しながらヘイガルに向かって飛んでいく。
ヘイガルは後方に逃げても城壁、前からは魔球、両脇の土壁を破壊する間もなく、まして超えて外にもでる時間がないと四面楚歌のギリギリの状態に追い込まれた。
彼は襲ってくる魔球の勢いを殺そうと、躊躇なく盾を投げ込むが、一瞬でぐちゃぐちゃになり魔球に飲み込まれ、威力は衰える気配がなかった。
その様子を見てさすがに危険を感じ、一か八か全力で高速に剣を魔球に向かって全力で突き身を守ろうとしたが剣先は脆くも崩れ直撃を覚悟した。
「俺の剣と盾の強度なんておかまいなしか……まったくハーレイ、お前んとこの娘、バケモンだなっ」
しかし、サーミャは『フィフス・エクスプロージョン』の2発目を1発目を放つ前の無駄話の間に2重詠唱をしていた。
そして、1発目を放ったあと、数秒後に2発目を放っていた。
だが、2発目は死角でヘイガルには見えてなかった。1発目の魔球へヘイガルが反撃したことで速度が弱まり、そこに2発目の魔球が追いつき、魔球はぶつかることでヘイガルの眼の前で相殺爆発が起こるのであった。
その爆発は爆風もともないヘイガルは巻き込まれ遠くにはじき飛ばされたが、強度な鎧により致命傷にはならずに済むのであった。
「ぐはっ……サ、サーミャっ、おめぇ~助けてくれたのか?」
「凄げぇ技だな……親父以上じゃねぇのか?」
「別におっちゃんを殺すなんて一言もいってねぇし」
「で?」
「あぁ負けだっ参った! 俺はな……」
ヘイガルは負けを認めたが、シャルレシカは近衛兵達に拘束されていた。
シャルレシカはそれなりに20人の兵士相手に魔法で押し気味に奮闘していたが、魔力が切れ眠り込んでしまっていたのだ。
「むにゅむにゅ……ミヤ~」
「おっちゃん! 話が――」
「勘違いするなよ、俺は負けを認めるとは言ったが、見逃すとは一言も言ってねぇぜ」
「さぁてサーミャ、どうするね? これは防衛戦なんだぜ」
「殺さないと約束してくれたよな。おっちゃんの騎士道を信じていいのかい?」
「(しかたねぇ……シャルしばらく寝てろよ)」
「あぁ信じろ、じゃ、ゆっくり尋問を――」
サーミャはシャルレシカの安全を確保できたことに、迷いなく無詠唱でエリアルを目標にした『ディメンジョン・テレポート』を唱え終わる瞬間に、大声で『ダーク・インビジブル』と叫びながら、その場から姿を消すのであった。
「くそっ(闇魔法が使える? ……あいつ、いつから親父と同じ6属性持ちにっ――)」
「おまえら、城内への出入口を全てふさげっ、逃がすなっ姿が見えなくなってるだけだっ!」
「やつが攻撃しようとしたら、必ず魔法のひずみが見えるはずだ! 見逃すなっ」
「(ミヤ~……助けにぃ……戻って来てくださいよぉ~……ムニュムニュ)」
「ヘイガル様っ~、おっぱ……いやシャルレシカが完全に寝てしまい、起きませんっどうしますか?」
「かまわんっ、今はサーミャだっ探せっ探す……いや、逃がすなっ!」
現場は、転移魔法の存在を知らない為、サーミャは単純に姿を消しているだけだと思い込み大混乱となっていた。
――話は数分前に遡る。
エリアルはサーミャと逆の立場でハーレイの攻撃呪文との駆け引きをしていた。
「(ここは、風と水魔法の合成だな)」
「(『フリーズ・ストーム・コンバイン』)」
ハーレイの前に発生する魔球に、エリアルは以前、サーミャが使う『フィフス・エクスプロージョン』を事前に見ていたため、それと同じものだと直感した。
そしてエリアルはサーミャと模擬戦をしていたことを思い出した。
――なぁエル、あたいのこの魔法は5属性を全部混ぜる最強の攻撃魔法だと思ってたけど、お前なら防げるんじゃねぇか?
試してみようぜ――。
――か~っ、やっぱ5属性の剣を順番に使って相殺していけば消えちまうのか。試しておいてよかったぜ。
てっことは、エルにはむしろ3属性や4属性混ぜる攻撃の方がお前には効くのかもな。
存在しない属性を打ち込めば逆効果になるもんな。どの魔法か解らなきゃ無闇に打てねぇだろ? ――
「(彼の技は、ミヤの威力には劣るとはいえ……なんの魔法の合成だろう?)」
「(彼は屋内の最大奥義と言った、少なくとも爆撃系は絶対ありえないっ)」
エリアルはその魔球から発生する冷気と周りを巻き込む風圧から、水と風魔法を想定し勝負にでた。
「いっくぜぇ~っ『ツイン・エクスプ――』」
エリアルは大剣を床に突き刺し、『ソード・オブ・ブリザード』を発動して剣の周りに氷の壁を作り、小剣に『ソード・オブ・ウィンドストーム』を発動させながら前に出るのであった。
「『――ロージョン』っ」
そして、ハーレイの放った魔球に対して風の刃を数発放つ。すると接近する勢いを多少弱めた程度で、風の刃は呑み込まれてしまった。
その様子を見て、剣をおおきく振り回し竜巻をおこさせ魔球を飲み込ませることで速度を落とさせ、その隙に大剣の裏に隠れるのであった。
魔球は竜巻で中心部が相殺され、そのまま氷の壁にぶちあたったり粉砕するのであった。
「威力不足だったて事はねぇ……いや、この技の特性を知ってやがったのか? 相殺する方法を知ってやがったとはな、さすが魔法剣士」
「(雷も混ぜるべきだったか……しゃぁねぇか)」
「参った参ったっ! 魔法勝負、エリアルちゃんの勝ちだ」
「「「ハーレイ様っ」」」
「うるせぇ約束は約束だ! 俺はこいつらを信じて地下に行く! お前らはそこで待機してろっ」
「「(軽っ)」」
だがハーレイがエリアル達と共に進もうとした瞬間、2人の両脇の天井が突然爆発を起こすのであった。




